青い地球
ある宇宙飛行士のインタビュー記事を読んでいる。21世紀の今数多くの先人がすでに宇宙飛行をすましていて良くある出来事の一つになってしまっている。じゃ何故彼だけを私個人じゃ無く世間が注目視しているか?それは宇宙に行く前から彼は有名人だからだ。
彼の名前はアランリック、多くの人が知っているがポップスターではない、実業家だ。事業が多岐にわたるため会長社長なのだが、会社名で語れる肩書ではない、ただその中で特に触れておくべき事業がある。宇宙開発事業、そして彼の最終目的は火星移住計画である。
これ金儲けなのか?と言うと半分は違うようだ。環境問題の解決のため完全にコントロールする場所に住めばよいとの事らしい。宇宙ステーションでも実現可能だが、これには大きなな欠点がある。NASAの研究らしいが、宇宙ステーションの最大の欠点として資材を地球から運ぶ運送コストが莫大すぎる点。
そもそも採算度外視でも量運べないのだ。そこで現地の資源を活用しようって研究から月や火星の移住の方が実現可能らしい。月と火星ではどっちが良いのか?なら地球により近い環境としては火星らしい。ただそこに行くのが月と火星では比較できない困難の差があるのだが。
ただまあこれはゴールだ。事業としては政府の援助によって成り立たせるアランの計画をすでに見ている。最初から採算の取れる事業計画ではない。儲かったのか?分からないがコロンブスに投資したスペイン王族のようなものだ。そこで様々な理由でその中間となる事業として宇宙旅行事業を立ち上げた。
富裕層向けの日帰りツアーだ。その宣伝のためまずは自分が宇宙飛行に行ってこようと言う事で世界中でこの21世紀には多くの先人がいる出来事が注目されてるというわけだ。
インタビューア「アランさん、今度の宇宙飛行は、宇宙旅行ツアー事業の前準備と見て良いのですか?」
アラン「はい、自分としては気軽に宇宙旅行体験をしようって目的があるため、じゃ行ってくるよって気持ちが大事だと思ってるんですよ」
「でも大変な訓練を要すると聞いてますが」
「今はテクノロジーの進化でそこまでじゃないです。そういうのも知って欲しいんですよ」
「じゃNASAの宇宙飛行士はもう専門職じゃなくなるのですか?」
「いやそこは是非自分の最終目的である火星移住計画で雇用したいですね。より困難な事があるため、行って帰ってくるだけのただの宇宙旅行の乗組員のハードルが低くなって欲しいわけです」
「宇宙に行ったら何がしたいですか?」
「そうですね、地球が青かったなんて言ってみたいですね」
「ガガーリンの?」
「ええ前人未到人類初、そんな重々しいものじゃなくて良いんですよ。ちょいと宇宙行ってきましたそんな気軽さが私が行く目的ですね。ほら巨大な船に乗ったら、つい恋人同士がタイタニックごっこやっちゃうようなノリで」
この記事を見てて、ちゃらい軽いって感想を持ったが、まさにそれこそが彼の狙いなんだろう。その策略にまんまと乗ってしまったが、そう思わずにはいられない何とも言えないもやもやした気分が残った。この記事が無ければスルーして後からああ行ったのって感じだっただろう。
だがこれによって気になってなんて言うか見てやろうという気になった。ネット配信するからって事で今ではリアルタイム?なのかはわからないが、言ったすぐの映像を見る事が出来た。
気軽にとは言ってるが、最初から富裕層向けなのが気軽な宇宙旅行なん?って思いもあった。ツアーまでは行けるかもしれないが、火星移住はどうなんだろうなとは思う。それにコントロールできる環境ってのも過去に行われた地球での閉鎖環境実験の失敗からどうなの?とは見ていた。
この記事のおかげであれからどう進化したのか?見てみたが、あれ莫大なお金がかかったようであれほどの規模では、次の実験は行われていなかった。政府の計画なら分かるが、民間の事業としては無理があるんじゃないか?と思ったけど、1つ関連会社で面白いのがあった。
宇宙から電波によって太陽光発電したエネルギーを送るというものだ。今回の旅行は気軽にがコンセプトで本人も常に軽い感じがあるが、意外にこれ意味がある気がしてきた。本来事業化が無理だろうと思うものを事業化するアイデアに溢れていた。
それによって宇宙開発に民間の力を取り入れる足掛かりになる可能性がある。金持ちの道楽って見てたが、意外とこれ本気なのかもしれない。宇宙開発の民間資本による事業化、宇宙旅行って点では何番煎じだが、この視点では間違いなく彼はパイオニア、開拓者だと思う。
もしうまく行けば、アームストロング船長の引用の方が良かったんじゃないか?stepとleap原文では彼はこの英単語を使っていた。一歩ともう1つは人類の発展のように取れると思う。荒唐無稽な宇宙事業、やってる事は一歩と言う小さなものじゃない。
ただ壮大過ぎて金持ちの無駄使いに見られてる面もあった。0に近い、ある意味小さな一歩なんだ。まあ何を言うか?はころっと変えてしまいそうな気もするけど。
ネットと言うのはTVとは違う、意識しないと時事ネタが通り過ぎてしまう。アメリカのそれも有名人だがポップスターではない微妙な注目度の為そういう部分があった、でも気になってしまった僕は彼のこの流れをちまちま見ていた。軽いとは言いつつ訓練などもしていた。
これも彼の戦略の一つだった。宇宙旅行ならテクノロジーの進化によりここまでの訓練で十分ですって軽く見せてるんだ。ただこれ、乗り物の管理は誰がやるんだ?って点が抜けてる。調べてみると、なんだちゃんとNASAの宇宙飛行士いるじゃないか。
専門的なので分からなかったが、大きくカットしてる可能性はあるが昔見た映像に比べると訓練が少ない。だが時間をかける宇宙船の不測の事態の対応訓練などは専門の宇宙飛行士が行うためテクノロジーの進化?に多少疑問もあった。
恣意的な映像の編集も考えたが、いよいよ本番となった。その時間を考えるとこれは本当にテクノロジーの進化があったのかもしれないと考えを変えた。え、もう?それが一番に抱いた感想。
本番の映像を見ていたがまるでジェットコースターに乗ってるかのような臨場感。これが良いのか?と言うと僕には鼻についた。結局僕は彼の人柄があまり好きになれないんだろう。演技的にやってる部分は絶対にある。ただ長くやってるとそういったものはボロが出るものだ。
本当にこういう軽い感じの人なんじゃないか?と思い始めていた。
「どうも皆さんアランリックです。宇宙に来ています。やってみたかった事やってみますね」
「地球は青かった」
このセリフを最後にアランは映像に映らなくなった。映像は続いていて他のクルーなどもワイワイやってるため事故ではないようだ。ただ彼がフェードアウトしたのがなんとなく分かる。彼の最後の言葉の雰囲気がかなり変だった。恍惚の表情と言うか、声も震えていた。
その後、帰ってきた彼がこの事を聞かれて上手く言えないけど、なんかこれ以上何も言いたくなくなってしまったので、周りに上手くやって貰ったと話していた。
なんとなく僕は彼の代弁がしたくなっていた。当然宇宙旅行なんて体験が無いが、これって通過儀礼に似てないか?と思っていた。通過儀礼と神話の研究をしていた人が、あちら側とこちら側って言葉を使っていた。
知識で知っていた地球が青いと言うガガーリンの言葉、それが実体験となった事である種の通過儀礼に似た心象になったのじゃないか?と見ている。それまで知識としては多くの人たちと共有していたこちら側だったアランは、その体験であちら側に行ってしまったんだ。研究者はその経験者をシャーマンと呼んでいた。
これまで素朴な感想だなと思っていたガガーリンの言葉が想像もつかない心情から発せられたのだと感じ取れた。アランを含めて地球が青いを様々な知識映像から21世紀の僕たちは常識とするまで知っている。ある程度は地球について知っていただろうが、前人未到人類初でのこの体験はいかほどの物だったのだろうか。




