4章⑧
その翌日。
ペトロニーユが夕食を食べに、地下の部屋に訪れていた。
幸せそうにパンを頬張る姿を崇めていると、「あ」と思い出したかのように声を出す。
「そうだ、エステル。
昨日はどうもありがとう」
「昨日?」
「手帳。
絵画の下に置いていってくれただろう? 助かったよ」
あれがなければ大変なことになるところだった。
反省の様もなく笑う。
少し呆れた。
「ああ、あのことね。
気づいてくれたようでよかったわ。
今度から忘れないように気をつけなさいね」
はあい、とペトロニーユは返事をする。
暖炉の奥に薪がひとつ、又一つと投げ入れられた。
「入れすぎないで頂戴ね」
食器を片付けようと席を立つ。
エステルは服の埃を払うようにして、そっとエプロンのポケットに触れた。
普段小物や筆記用具などを入れているが今日は違う。
小さな金属製の部品のようなものが入っていた。
そっと袋の口を開き中を覗き込む。
奥には金色に輝く小さな勲章が入っていた。
しかも、貴族の称号を示すための貴重なものだ。
表面の色硝子部分には、小さな文字で『ラファイエット』と描かれている。
「……全く。
私ったら」
掏摸は止めたはずなのに。
ずっと昔、生きるために覚えた汚い技。
もうとっくにやめたはずなのに。
自身のあまりにも浅ましい行為にため息を吐く。
暗い表情が目に入ったのか、ペトロニーユは顔を覗き込む。
「どうしたんだいエステル」
「……なんでもないわ。
食器、片付けてしまうわね」
エステルは無理矢理に笑顔を作り、シンクへと向かった。




