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魔法具選びは難しい

スカーレット家の宝物庫は想像を遥かに超えて広い作りになっている。

用途によって区画を分けられているのだが、その区画自体が膨大だ。

確かに泊まりがけで見るというのは正しい判断かもしれない。

一人で全てを見るとキツいが、エミリーとアルトリアがいるなら単純に3倍の人員があり、アルトリアは勇者としての経験がずば抜けている。

故に数は多いもののちゃんと選べそうだと思った。

「エミリーまずは防護系の魔法具の場所を案内して欲しい」

「分かったわ。着いてきて、こっちだから」

移動中も周囲の魔法具に目が移ってしまう。

ラウル的に商人としての目線で見ると、かなり上等な代物が多い様子だ。

これならば十分実践で使用できるものも期待できそうだと思った。

「着いたわ。この辺がそうよ。気になるものをがあればピックアップしてまとめて確認したらいいと思うわ」

分散すると各々気になるものを選択していく。

ただ案の定というべきかラウルは選定に悩んでいた。

(うーん、難しいな。俺の目利きはあくまでも商売用。効果を見てもどこまで実用的か分からないしな。一旦売れそうなものと持ち運び易そうなものを選んでみるか。ダメならダメでアルトリアが教えてくれるだろうし)

ラウルならではの視点での選出を試みる。

一方のアルトリアは少し見ただけでスムーズに良さそうなもののピックアップは出来ていた。

(流石スカーレット家だね。想像以上に揃っている魔法具のクオリティが高い)

少なくとも東都方面に行くことを考えれば割りとどれを選んでも問題はない物ばかりではある。

しかし、アルトリアの脳裏には今回の裏テーマである謎のキメラ討伐がある。

どれだけの力があるのか分からない以上用心するに越したことはない。

目線で言えばアルトリア水準でも使えそうかで探す。

エミリーも同様にかなり用心した魔法具選びをしている。

(ラウルは結構器用だから何でも使いこなせると思うんだけど、相手の素性が分からない以上難しいわ。て言うか普段使わないから何ならいいのかしら)

当然と言えば当然だが、国家最高戦力であるA級魔法使いのエミリーは日頃魔法具を使うことがないため別ベクトルで頭を抱える。

各々探索すること一時間。

一旦区画の入り口に気になった魔法具を手にして集合した。

「二人ともどうだった?」

「僕の方は結構いいのがあったと思うよ。数個だが僕のパーティーでも使えそうなものもあった」

「お、それは期待できそう。エミリーは?」

「正直普段使わないから難しかったわ。でも専守防衛って考えれば十分使えるはずよ」

「まぁそうだよな。じゃあちょっと見ていくか。まずは俺の見てくれるか?」

近くにあったテーブルまで移動すると魔法具を並べる。

ラウルが持ってきたのは厳選した6つの魔法具。

「取り敢えず装備しやすさを考えると装飾品系が良いかなと思ってそっちを中心に選んだ」

「うん、セオリー通りで良いんじゃないかな。じゃあ細かい効果を確認しようか」

一つ一つ確認をしていく。

防護結界を作るペンダントや、毒や火炎などに対する耐性が作る指輪といった具合に身を守る分には十分ではないかと思うラインナップを選べていた。

その最中アルトリアが大事なことを質問する。

「ちなみに、ラウルの魔力量ってどれくらいか分かるかい?」

「さぁ?計測したこと無いから分かんないけどやっぱり影響するのか?」

「正直モノによるね。本人の魔力ゼロで予め蓄えた魔力で魔法を放出する物もあれば、自身の魔力を糧に魔法を放出する物がある。今ラウルが持ってきたものは何れもゼロから放出するタイプだ。こう言うのは一定の力は発揮するけど、上振れはしない。所謂中堅どころまでは通用するけど、上位には通用しないってイメージかな」

「なるほどね。なら俺の魔力量って二人から見てどうなんだ?」

そう言われてしまうと気にもなるというもの。

二人はじっとラウルに注意を向けると見定める。

「………流石に魔法関係の修行をしていないから勇者としてはかなり物足りないかな?一般人と比べれば十分だけど」

「そうね、そこはアルトリアに概ね同意よ。でもそれを補うための魔法具だから気にしないでいいわ。何より私が一緒に行くんだから」

「そうか、ありがとう。まぁそんなもんだよな。じゃあ次はアルトリアのヤツ見せてくれよ」

「僕は武具を兼ねたモノにしてみたよ」

そう言うと魔力を込めた宝石である宝珠が埋め込まれた短剣などを並べる。

「これは短剣?リーチが短いけど大丈夫なのか?」

「確かにリーチが長いのはアドバンテージだけど、一定距離より入られると弱い。特に扱いに長けていなければ余計にね。ラウルは結構教えたことはすぐ出来るタイプだから、どっちでもいいとは思うけど短い得物の方が長物よりは習得しやすいだろうし選んでみたよ。これも予め魔力を入れておくタイプだから発動には困らないはずだ。それにチャージする魔力もそれほど多くなくていいから万が一魔力切れになっても他の魔法具で凌ぐ間にどうにか出来るはずだよ」

「流石現役勇者、視点が違うな」

「無駄に長剣に憧れてそれが仇になり自滅したパーティーをいくつも見てきたからね。勿論持っていて損はないけどケースバイケースで使い分けられなきゃ意味がない。それがどんなに優れた武具だとしてもね」

やはり現役最強の勇者のいうことは説得力とかが違うなとラウルは思わず感心した。

「じゃあメインの武器かは置いておいてこれはあったら良さそうだな。エミリーの方はどうだった?」

するとエミリーは少しバツが悪そうな顔をする。

「ごめんなさい、正直普段使わないから何なら使えるかとか使えそうかとか分からなくて。私基準だと全部物足りないから選べなかったわ」

「あ~、まぁ仕方ないか。アルトリア的には俺とアルトリアで選んだヤツでも十分そうか?」

「そうだね、概ね問題ないかな。一応ざっとエミリーの見てた所は確認だけして次に移ろう。今度はちゃんとどういうものが必要かっていうのを共通認識をもって行うとしよう」

「ごめんねラウル。役立たずで」

「そんなこと無いって。エミリーのお陰で魔法具を貰えるんだから謝ること無いって。むしろ俺が感謝しないといけないってのに」

落ち込むエミリーの頭を優しく撫でてあげると頬を紅潮させる。

イチャつ(?)二人をよそにアルトリアがあるとこに気付く。

「ねえ、エミリー。あそこの結界ってもしかして魔法具を試せたりする?」

指を指した方向には10メートル四方の簡易結界が張られていた。

「ええ、出来るわよ。でもあんまり強い術とかは壊れちゃうから使えないけど」

「なら今選んだ物の中から使い捨てじゃない魔法具を一度試してみるといい」

「なるほどな。確かに興味ある。エミリー、魔法を頼めるか?」

「いいけど、私が使うと下級魔法でも結構威力高いわよ?それでも構わないなら使うけど」

「………A級魔法使いにそう言われると途端に怖いな。それについてはアルトリアはどう思う?」

少し考えたがすぐに結論を出す。

「僕的にはエミリーの下級魔法くらいは凌げないと不安かなって思うし、良いんじゃないな?エミリーの魔力量なら複数の魔物に囲まれたくらいの圧迫感は出ると思うよ。多勢に無勢って思ったより怖いし混乱すると思うから一度知っておくのは大事だ。どうしても不安ならまずは威力が比較的軽減する詠唱破棄でやって貰えば良いさ」

そう言うアルトリアの脳裏には必ずラウルを生かさなければならないと言う指名があり生半可なものであれば意味がないと思っているからだ。

そしてそれはエミリーも同様である。

「大丈夫、絶対に死ぬことはないから」

「……じゃあ、頼む。まずは詠唱破棄で、慣れてきたらちょっとずつ威力とか術式を上げてくれ」

覚悟を決めると先ほど選んだ指輪とネックレスを装着して結界内に入り込む。

エミリーも少し距離を取って結界内の高台に登る。

杖を顕現させると、再度ラウルに確認をする。

「ラウル、本当にヤバかったら私とアルトリアの名前を叫ぶのよ。そしたら私も術を止めるしアルトリアが助けに入るから」

「了解。それじゃあ━━死なない程度に頼むぞ」

「ええ、それじゃあ頑張って頂戴」

杖を顕現させるとその先端をラウルに向ける。

「━━━第一術式【ファイアブラスト】」

魔力で生成された炎を圧縮し弾丸が浮き上がる。

直後、ものすごい速度でラウルに迫る。

これは威力ではなく速度を重視する魔法であり、先手を取ったり咄嗟に使用されることが多い。

が、エミリーが使えば威力は魔力量に相乗するため増してはいる。

ラウルはペンダントを握ると魔法具を発動させる。

「━━展開」

2メートル四方程度の半透明の結界がラウルの身体を包み込む。

その直後炎の弾丸が結界に衝突する。

衝撃こそ感じはするが何とか凌げている。

「やるわねラウル。じゃあ次行くわよ」

そう言うと今度は魔力で生成した炎を圧縮せず火の玉のようにして浮かばせる。

「━━━第一術式【ファイアボール】」

速度は先程より劣るが、攻撃範囲は広がっており威力自体もファイアブラストよりも高くなっている。

再度衝撃に備えるがエミリーは的確に先ほどのファイアブラストで生じ始めた結界の綻びを狙っている。

その結果魔法具の結界は崩壊し無防備なラウルの身体が曝されてしまう。

「………ッ!マジかよ!」

すかさず追撃のファイアボールがラウルに差し迫る。

だがラウルも次の対策を講じる。

体勢を立て直すと右手を前に翳す。

赤い指輪に魔力を少し込めると人一人ほどを隠せるくらいの炎の盾が顕現する。

右半身を前にする形でエミリーの攻撃を踏ん張って凌いだ。

(おぉ、次への行動が早い。やっぱりラウルって頭の回転が速いね)

外から見守るアルトリアはラウルの頭の回転に感心をしていた。

追加の数発を撃ち終えるとラウルのために一呼吸置く間を作ってあげる。

「ラウル凄いじゃない。結界を破壊されてすぐに別の魔法具で盾を出して追撃を凌ぐなんて初心者とは思えなかったわよ」

「はぁ……はぁ……褒めてくれるのは……嬉しいけど、結構必死だからな?」

笑顔を滲ませるエミリーに対してあの数秒だけで汗だくになり息が上がっているラウル。

息も絶え絶えだが、結界の外にいるアルトリアに声をかける。

「アルトリア……お前から見て今の、どうだった?」

「そうだね、詠唱破棄の第一術式ではあるけどちゃんと凌げていたと思うよ。ただもうちょっと使い方の工夫とかは必要だけど今使った二つについては採用しても差し支えないんじゃないかな?」

「そうか、ありがとう。じゃあエミリー次行こうか」

「え、もうちょっと休憩して良いわよ?魔法具とはいえ結界とか盾を出して私の攻撃凌いだんから疲れてるでしょ?」

「そうだけど、実戦じゃ待ってくれない。そうだろアルトリア」

「うん、いい心掛けになってきたね。でも、それはそれで一旦休んだ方が良いと思うよ。いきなりガムシャラに頑張るのは良くないから。普段運動しない人がいきなり激しすぎる運動をしたらどうなるか想像がつくだろ?それと似たようなものさ」

「なるほど。じゃあちょっと休ませてくれ」

そう言うとその場にへたり込んでしまう。

勇者の加護が付与されたといえども、所詮は戦いの場に身を置いたことがない商人。

思ったより脚や身体全体にきているようだ。

「はいラウルお水よ」

エミリーが予め持ってきていた水筒にはいった水を差し出しそれを受けとる。

「サンキューエミリー。しかしエミリーって凄いんだな」

「何よ急に改まって。褒めたってラウルの嫁入りくらいしか出来ないわよ」

「それは一旦置いといて。自分の魔力で術を構成して攻撃や防御を展開するのが異次元だって思ったんだよ。素人が魔法具を使用しただけでこうなるんだから、これより遥かに高い強度で命のやり取りをするのが想像つかない」

「まぁそれが普通の感覚だよ。エミリーに限らず僕ら勇者や冒険者達はそう言う世界に身を置いている。だからラウル、本当に無理はしなくても良いと思う。ニコラスさんはあぁは言ったけど君が無理をして命を落とすなんて事はあってはならないから、それだけはちゃんと頭に入れておいてくれ」

「分かった。でも、これだけ色んな人が協力してくれてるしな。出来るだけは頑張ってみるよ」

少しだが確実に意識が変わってきたラウル。

10分ほど休んでから再度立ち上がり魔法具選びを再開するのだった。

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