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まさか勇者とバレてしまった

まだまだ出したてなのに見てくれる人がいて嬉しいです

時間があれば、もうちょっと細かい描写とか加筆するか、幕間エピ的に出そうとも考えてはいます

光が収まると、目の前には巨大な城が目に入る。

中央都市リゼルハイトの中心である王宮である。

転移門の前には馬車が用意されておりそれに乗るように促される。

ラウルとエミリーは並んで馬車に乗り込む。

リーゼルが馬に跨がり御者をするらしい。

「では向かいますのでしばしお付き合いください」

エミリーはリーゼルに聞こえないようラウルに耳打ちをする。

(ねぇ、ラウル。王が一般人相手にこれだけ手荒な真似を指示するなんて普通じゃない。何か心当たりあるんじゃないの?それこそ、今朝話した気配の事とか知らないって言ったけど本当は何か知ってる?)

(………詳細は王の前で話をする。けど、確かにエミリーの言う通りだ。確信はないが心当たりはある)

正直加護の付与は確信したものの、勇者の加護と言うものはイマイチ良く分からない。

しかし、今朝方感じたあの感覚がそうなのだとすれば納得と言うか理解はできる。

あの超常的な気配は例えようがないからだ。

どのようにして誤魔化すべきか、謝罪するべきか。

少し考え込んでいる間に入り口までやって来ていた。

「お二人とも着きましたので降りてください」

城に通されると、最上階の玉座の間までやってきた。

扉が開かれると紅い絨毯の先に玉座があり、国王が座してこちらを見つめていた。

「陛下、ラウル・ロジャースを連れて参りました」

リーゼルに続いてラウルとエミリーも跪く。

「ラウルよ、久しいな。健在な様で何よりだが、私になにか言うことは無いか?」

「………その前に、一つよろしいですか?」

「何だ?申してみよ」

「何故イチ一般市民である私に特務隊など寄越したのでしょう?」

少し驚いたようすを見せたあとニッと笑い出す。

「フッ、おまえが一番良く分かっておろう。

━━━何故勇者の加護の事を秘匿した?」

「「ッ!?」」

エミリー、リーゼルが驚きの表情を見せた。

何かあるとは思っていたが、まさか勇者の加護だとは想像もしていなかった。

覚悟はしていたがラウルも内心ドキッとしている。

しかしあくまでポーカーフェイスは崩さない。

「報告義務があるのは知っておりましたが、この感覚が勇者の加護のそれであるとは理解が及びませんでした。

それに私は20代半ばの商人です。生き残るための修行はしてきましたが、戦うための修行はしたこともなく、とても勇者の器ではないと思っております」

加護の理解以外は本音である。

さぁ、それを受けて王がどう出るか。

「………ふむ、まぁ一理あるか。して、ラウルよ。お主はどうする?」

「どうする、とは?」

「私個人としては、付き合いは長いし戦いを経験していないお前を戦火に巻き込むのは本意ではない。とは言え、国としては報告義務を怠ったお前に処罰を与えないといけなくなってしまう。だから妥協点を考えようではないか」

「妥協点、ですか?」

「勇者として【東都】に向かうといい。そこでなにかをする必要はない。出たと言う事実だけあればよい」

「そうすることで今回の件は不問にしていただけると?」

「そうだ。もし拒むのであれば投獄をせねばならぬ。どちらがよいか選ぶといい」

「一つ、譲歩いただいている立場で恐縮ですが、要望を聞いていただけますか?」

「良かろう、申してみよ」

「エミリー・スカーレットを同行する許可を頂きたい」

「ラウル?」

「………なるほどの」

「私は先ほども述べた通り戦闘経験がありません。ですので許されるのであれば私と親交も深い彼女と旅に出させて頂きたいです」

「………。スカーレット、お主の意思はどうだ?」

「許可されずとも着いていきます」

「であれば、好きにすればいい。リーゼル、話は終わった。勇者殿を転移門までご案内するのだ」

「ハッ」

リーゼルの誘導のもと玉座の間から退室しようとする。

扉の手前で王より再度声をかけられる。

「ラウル、後日旅の軍資金を寄越す。届いてから1週間を目処に準備を終わらせて連絡せよ」




「ラウル殿、いえ勇者様。サウスパークでの一件大変申し訳ありませんでした」

「いえ、リーゼルさんも仕事ですものね」

「にしても、あれはやりすぎだったと思うわよ」

「エミリー殿の仰る通りです。私自身、もっと疑うこと、考えることを増やさねばならない」

「であれば、俺以外にはあんな真似はしないようにお願いします」


リーゼルからの再度謝罪を受けた上で和解をして別れた。

転移門から直接ラウルの自宅前まで移動をした。

隣を着いてくるエミリーは複雑な表情を見せている。

「何でエミリーがそんな顔をしてるんだ?」

「だって、まさかラウルが勇者になるなんて思わなかったんだもの。勿論私がいれば護れる自信はあるけど、もしもを考えると怖くって」

「大丈夫だ。東都の方なら仕入れで向かうことも多いしエミリーがいれば確実に安心できるからさ」

「だったらラウル。明日うちの屋敷に来てちょうだい。お父様に話しはしておくからうちの宝物庫の武具とか選定したらいいわ」

「え、そんないいのか?」

「ラウルになら二つ返事で了承してくれるわよ。それにこう言ってはアレだけどちゃんとした魔法具も揃ってるし、しばらくうちも使う予定無いから」

「じゃあお言葉に甘えてお願いいたします」

「任せて頂戴」

「それじゃこの後どうする?まだ昼を回ったくらいだけど」

「色々ありすぎて何かもうそういう気分じゃないわね。宝物庫の事も話をするし今日のところは帰るわ。明日迎えに来るから待ってて頂戴」

「分かった。何かすまなかったな、巻き込んで」

「気にしないでいいわよ。………未来の旦那様の大事な話だもの(ボソ)」

「何か言ったか?」

「いいえ何でも。それじゃあまた明日」



エミリーが帰っていくのを見送りラウルは部屋に戻る。

何となく食欲もないためさくっと湯浴みをしてベッドに横たわり天井を見上げる。

(まさかバレるとは。しかし東都に出ればお咎め無しとは寛容だ。ちゃんと王と良好な関係を築いていて良かった)

武具の類いはエミリーにどうにかして貰えるとして、その他の装備品が必要になる。

普段の仕入れのリストを確認するとポーションや薬草といった類いは必要そうだ。

その辺は普段の伝があるしどうにかはなりそうだ。

ただ、問題はどこまで勇者の件を話す必要があるか。

商人同士のネットワークは恐ろしいほど繋がっており、情報の伝達も早い。

不必要に情報を流すことで変な話、命を狙われる可能性も高い。

勇者を殺したと言う称号は裏社会では価値が高いとも聞いている。

大抵の場合は返り討ちにあうそうだが、ラウルの場合は戦闘経験の無い青年であり、普通に正面からかち合えば勝機は無い。

その為のエミリー同行ではあるのだが、出発前を狙われてはどうしようもない。

(まぁ多少高く着くが普通に買いに行くか)

上級のポーションで無ければ一般家庭に置いてあることも珍しくない。

カムフラージュも兼ねてエミリーには申し訳ないがポーションは最低限で何かあればエミリーに泣きつけばいい。恐らくエミリーなら断ることはないだろうし。

一旦この日はいつも通り過ごして明日に備えることにしたのだった。

(頑張れ、明日の俺)

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