六十三話 レーヴァンテインの戦場
いよいよ大詰め、ラスト直前です!
「でりゃああああ!」
ロランは叫びながらベディウェアで敵に突っ込んだ。ロストシューターで秋水を撃墜する。合計八本あるロストシューターを巧みに使い、敵を貫いては落としていく。ロランが指揮を執る軍も戦いを優勢に進めていた。最新鋭EMA、アルテミスは秋水と互角の力を持っていたため、こちらが劣勢になることはないだろう。
「敵陣を崩せ!レーヴァンテインは直ぐそこだ!」
「分かってるわ!」
渚も叫び、ナイトランスで敵を撃墜して行く。
暗雲立ち込める戦場は死を具現化したかの如く、乱れていた。
敵味方が混じって、混戦を続ける様は見るものを震え上がらせるだろう。
「敵陣は崩れたな。やはり物を言うのは戦術だ。いくら強いEMAがあろうとも、いくら優秀な指揮官が居ようともやはり戦術が無くては意味が無い。その事をヴィルフリートに思い知らせるいい機会だ」
愛斗がふと顔を顰める。
「しかし敵が扇形の陣形を崩さないのは何故だ?まるでレーヴァンテインに誘い込んでいるようだが・・・」
ロイックもその事は気にしているようだが、彼は軍師では無いのでなんとも言えないところだった。
「陛下、ロラン様率いる先鋒がレーヴァンテインに接近しました」
「そうか。続けろ」
愛斗は冷たい目でモニターに移った戦場を見ながら呟いた。
「殿下、敵が接近中です。如何しますか?やはり使いますか?」
フェリクスがヴィルフリートに目配せをする。ヴィルフリートは表情を崩さずに答えた。
「そうだな。敵は十分引き寄せた。撃て」
「はい」
フェリクスが司令室に叫んで、指示を飛ばす。
「アロンダイト、発射準備」
「了解、目標は前方五百メートル。範囲は半径三百メートルに指定。装填用意!」
別のオペレーターが素早くキーボードで打ち込む。
「装填完了。目標を捕捉しました。殿下、ご指示を」
ヴィルフリートが頷き、手元のスイッチを押した。
「前方に高エネルギー反応!」
ベディウェア内で無機質な女性の声が告げた。ロランが首を傾げる。
「高エネルギー?レーダーを確認する・・・確かに前方からミサイルらしき物体が接近中・・・!」
突然、目の前の物体が光り始めた。ロランも刹那の反応で上空に向かう。それと同時に甲高い不協和音が響き、弾頭の周囲三百メートルにいたEMAが砕け散った。
「何!?」
ロランが無線を愛斗に繋げる。
「隊長!敵の攻撃です!」
「分かった。報告しろ」
「見れば分かります!」
ロランの叫び声が聞こえる。愛斗はレーダーに目をやった。
「何だ・・・これは・・・」
レーヴァンテインに接近していた味方はほとんどが消滅していた。レーヴァンテインからは次々と弾頭が発射され、爆発した地点から円形状に味方が消えていく。
「・・・作戦に変更は無い!」
愛斗は叫んだ。しかし、司令室は静まり返っている。圧倒的な戦力差を見せ付けられ、脱力感が皆の心を支配していた。
「陛下、恐らくあれは電磁波を応用した兵器です。指定範囲に特殊な電磁波を起こし、内部からEMAを破壊していくのではないかと」
ロイックの推測は見事に当たっていた。
「そうか。しかし懐に潜り込めば奴も使えまい。全軍に伝えよ。如何なる犠牲を持ってしてもレーヴァンテインに侵入せよ!」
「ユア、ウィル」
ロイックが全軍にそれを伝える。愛斗は戦場の簡略図を見ながらある地点を指差した。
「レーヴァンテイン内にリリーが居る。何としても奪還しろ。後続部隊も全て前線にまわせ」
「はい」
ロイックがモニターを見ながら頷く。
「殿下、敵は捨て身の覚悟での突撃を開始した模様です。如何しますか?」
ヴィルフリートは先ほどから何一つ表情を変えない。
「構わない。扇形の陣形を崩して、レーヴァンテイン周辺に集めろ。ミッション「ストロングホールド・ライド」を発令だ。通信をナーシャに繋げてくれ」
「はい」
フェリクスが頷き、部下に指示を出す。
「こちらナーシャ」
「ナーシャ、出番だ。聖霊騎士団の意地を見せてみろ」
「分かってるわよ!」
ヴィルフリートが不敵な笑みを浮かべる。
「いい結果を期待しているよ」
「だとさ!海星、ヘマしないでね!」
「承知している」
ナーシャ率いる別働隊五万は聖域の東側、帝国旗艦ドレッドノートの後方に隠れていた。「ストロングホールド・ライド」は後衛の部隊が前線に出たときに旗艦ドレッドノートを直接攻撃する作戦だ。
「海星!あんたのプラズマライフルでドレッドノートを撃ち落して!中には人質の絢が居るわ!」
海星は頷き、ドレッドノートに標準を定めた。
「三・・・二・・・一・・・ゼロ!」
青い閃光が暗い空の下を真っ直ぐに切り裂いた。
目標はもちろんドレッドノート後方の動力部分だ。
「陛下!後方から高エネルギー反応!来ます!」
「プラズマシールドを展開しろ!」
ロイックがキーボードに入力しようとするが、それと同時に大きな衝撃が司令室を襲った。
「うわっ!」
「間に合わなかったか!」
ロイックが床から立ち上がり、モニターを覗き込む。
「陛下、後方から敵軍が接近中!後、三十秒程で来ます!」
愛斗はゆっくりと立ち上がり、中央の大モニターを見つめた。それと同時にロランや渚の声が聞こえた。
「隊長!敵はレーヴァンテインに満遍なく強化型プラズマシールドを展開しています。まったく歯が立ちません!」
「愛くん!レーヴァンテインは難攻不落よ!」
愛斗は落ち着き払った顔で司令室の面々を見回した。皆が愛斗を見ている。
「陛下、如何します?」
愛斗の決断が迫られていた。
「このままだと本艦は洋上に不時着します。しかし陛下は・・・」
「・・・分かった。お前たちは人質を解放しろ。ロイック、通信を全兵士に繋げてくれ」
「分かりました・・・」
ロイックが通信を繋げる。愛斗はマイクに向かって、全兵士に向かってゆっくりと口を開いた。
「全兵士、士官、戦闘員、乗組員に告ぐ。旗艦ドレッドノートはこれより洋上に不時着する」
前線の兵士達は項垂れた。旗艦が落とされたという事は負けを意味していた。
「よって私は君たちをこの戦いから解放する。敵に下るも、敵に寝返るも、離脱するも、戦うも君たちの自由だ。しかし、最後に私の話を聞いて欲しい」
兵士達は無線から聞こえてくる声に耳を傾けた。
「現在、レーヴァンテインは上昇を開始し、成層圏に向かおうとしている。私は皇帝として最後の突撃を掛ける。それに当たって君たちに聞いて欲しい。君たちは今、何のために戦っているのか?国のため?自分のためか?そうではない。人には家族があり、愛する人があり、守るべきものがある。そして今それが滅びの危機に面している。我々一人一人が今こそ剣となり、敵を討たなくてはいけないのだ」
愛斗は一息ついた。そして最後は力を込めて言葉を吐き出した。
「守れ!大切なものを!そして未来を求めろ!」
兵士達は沈黙した。
「私からは以上だ。今まで私につき従ってくれてありがとう」
静寂を破ったのはロランだった。ロランは全兵士に聞こえるように大声で叫んだ。
「戦え!レーヴァンテインは直ぐそこだ!」
ロランがレーヴァンテインを指差す。レーヴァンテインは既に雲の中に隠れようとていた。あまり時間はない。
「ウィア・ハイル・ストライダム!ウィア・ハイル・ヨハン!」
兵士が唱和する。全軍は上昇していくレーヴァンテインにいざ、突撃を掛けんと舞い上がった。
司令室では愛斗がオペレーターの面々に向き合っていた。
「先ほど言った通り、今まで俺と共に戦ってくれてありがとう。君たち全員の忠誠心に心から感謝する」
オペレーター、ロイック、ライナー、司令室にいる全ての乗組員が愛斗に敬礼した。
愛斗は長衣を翻し、司令室から出て行った。ロイックが急いで後を追う。
冷たい廊下は静まり返っていた。刻一刻と落ちつつあるドレッドノート周辺ではすでに秀人、エティエンヌが戦っているだろう。
「ロイック、君には感謝している。敵はもう迫ってきている。お前は降伏しろ」
ロイックは愛斗を見つめた。
「やはり使うんですね。僕の作ったシステムを」
「ああ、使わせてもらうぞ。絶対に成功させる」
「光栄です」
二人は並んで、廊下を歩いている。ロイックは最後に紫電の整備を行いたいらしい。艦は激しく揺れ始めた。
「警告、警告。敵EMAが艦内に侵入。総員、脱出せよ。繰り返す、総員、脱出せよ」
無機質な声の警告を聞き、愛斗はロイックと向き合った。
「さらばだ。ロイック」
「ええ、陛下」
二人は微笑み合う。その時、廊下の反対側が爆発し、敵兵士が入ってきた。アサルトライフルが愛斗とロイックを襲う。
「陛下!」
愛斗とロイックは物陰に身を隠し、敵の様子を窺った。
「やはり入ってきましたか・・・陛下、僕が時間を稼ぎます。その間にブリッジへ」
「・・・分かった。死ぬなよ」
「はい!」
ロイックは拳銃を抜き、敵に向かって発砲を始めた。愛斗はその隙にブリッジへと向かうべく、走り出した。
「愛斗の邪魔をする敵は僕が排除する!」
秀人の乗るインフェルノは暗雲立ち込める空を切り裂くように飛んでいた。敵の秋水もインフェルノを発見し、一斉に叫んだ。
「いたぞ!討ち取れ!」
何百機もの秋水が居インフェルノへと向かっていく。インフェルノは両手に構えたプラズマガンを連射し、接近してくる秋水を次々と撃ち落していく。
敵が刀を抜き、接近戦の構えを取り始めた。インフェルノも剣に持ち替え、スラッシュソードを敵に振り下ろし、二つに裂いた。続けざまに突進し、もう一機を真っ二つに裂く。
片手に剣を、もう片方に銃を持ったインフェルノはまさに”地獄”の使者だ。
問答無用に敵を切り裂き、海の藻屑に変えて行く。
「識神秀人!」
叫び声が聞こえた。インフェルノが振り向くと、彼方からやって来る一機のEMA、海星の雷電が見えた。
「海星さんですか」
返事は返って来なかった。代わりに飛んできたのは斬撃刀の一閃だった。それをスラッシュソードでインフェルノは受け止めた。
「愛斗殿は私達が止める!邪魔立ては無用!」
斬撃刀の次の一撃を避け、インフェルノはプラズマガンを立て続けに撃った。
「僕も同じです!愛斗の邪魔をするなら、容赦はしない!」
インフェルノは高出力エアウィングを使った反則的な機動力を使い、一気に雷電との距離を詰めた。そしてスラッシュソードを振り下ろす。それを受け止めた雷電の動きを見越して、ロストシューターが雷電を襲う。
「プラズマシールド展開!」
前方に展開されたプラズマシールドのせいでロストシューターは当たらず、弾き返される。
「秀人殿、貴方は愛斗殿に愛する女性を奪われたはず。なのに何故!?」
秀人は雷電を蹴りつけ、距離をとった。
「僕には救わなくてはいけない人がいる!だから!」
インフェルノは得意の急降下で接近、一気に切り裂いた。雷電は横っ腹に大きな切り傷がついている。
「私の負けだ・・・その力を正義に使っていたのなら・・・」
雷電から脱出ポッドが射出された。それを見届けた秀人は一言呟く。
「いいえ、これが僕の正義です」
愛斗は自分の直属部隊の待つブリッジへと向かった。その他の部隊は既に出撃し、敵と交戦を開始している。現在このブリッジに待機しているのは愛斗の直属部隊とロイヤル・セブンスのみだ。
「陛下、総員出撃準備完了です。ご指示を」
愛斗は全員を見回した。といっても五十人程度だが、腕は確かな者達ばかりだ。
「我々は今からレーヴァンテインに突撃を掛ける。これが最後の作戦だ。これで失敗したら勝機はないと思え」
「ユア、ウィル!」
愛斗は全員がそれぞれのEMAに乗り込んでいくの見つつ、自分のブリッジへと向かった。
狭い廊下を進んで行くと、大きな扉が見えた。ここが格納庫だ。整備はロイックのお陰で完璧だろう。
そんな専用格納庫にもう一つ残っているEMAがあった。撫子の紫電参式だ。愛斗に気付いたらしく、撫子は愛斗に近づいてきた。
「また会ったな。撫子」
愛斗は薄い笑みを浮かべたまま、話し掛けた。
「お前もな。まだここにいたのか?」
「これからが本番だからな。最後の手段を使うためには俺が必要だ」
撫子が表情を険しくする。
「やはり出撃ることにしたのか?」
撫子は黒い悪魔、紫電を横目で見た。そして一言呟く。
「あのシステムを使うのか・・・」
愛斗もそれに応じるように頷く。
「その通りだ。お前には援護を頼みたい」
撫子は頷いた。
「リリーはどうするんだ?下手をすると危険が及ぶかもしれないぞ」
愛斗は笑みを浮かべた。
「俺の目的のためなら仕方がないさ」
撫子はその言葉を聞いて、俯いた。
「なあ、愛斗。私は少し悔やんでいるんだ。お前に与えたブリューナクは結果としてお前とリリーの関係を引き裂いてしまった。だから私は・・・」
愛斗は拍子抜けしたような顔で撫子を見つめた。そして笑い出す。
「お前らしくないじゃないか。反省なんて」
撫子は顔を上げ、真顔で愛斗を見つめる。愛斗も撫子を笑みを浮かべたまま見つめた。
「撫子。お前が居なかったら俺はあの場所で死んでいた。お前は俺の命を救ってくれたんだ。感謝している。ブリューナクが無くとも俺は同じことをしていただろう」
しばしの沈黙。
撫子は愛斗を見つめていたかと思うと、不意に笑い出した。
「感謝されたのか?私は?生まれて初めての経験だな。ありがとう」
「俺からも言わせてくれ。ありがとう・・・」
二人はお互いに歩み寄り、手を伸ばした。
愛斗も最後に撫子を抱き締めようと、手を伸ばしたのだった。しかし、その幸せの一時は突然、邪魔されることになった。
「敵がブリッジに侵入!」
無機質な女の声で告げられる。それと同時に背後の格納庫の扉が破られた。三機のEMAが入ってくる。先頭の桃色のEMAはナーシャのシュヴァリエだ。その背後の二機は秋水だった。
「ナーシャか!」
愛斗は叫んだ。それに反応するようにナーシャも叫ぶ。
「澪坂愛斗!団長の仇、ここで討つ!」
シュヴァリエのソードが愛斗に振り下ろされようとしている。
「ナーシャ!」
紫電参式からプラズマ弾が飛ぶ。シュヴァリエがそれを左手の盾で防ぐ。
「邪魔をするな!」
「悪いが、させてもらうぞ」
紫電参式がナーシャに斬撃刀を振り下ろす。それをシュヴァリエがソードで受け止める。
「撫子!」
愛斗が叫ぶが、撫子はシュヴァリエに対しての攻撃の手を緩めない。
「お前に愛されて私は幸せだったよ。でも別れは必然だ」
愛斗が気付いたように、目を見開く。撫子の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
「ここは私が時間を稼ぐ。お前はレーヴァンテインを止めろ」
「だが!シュヴァリエのスペックで考えればお前に勝ち目は!」
愛斗は尚も叫ぶ。
「愛斗、お前は勝て!自分の運命に、そしてヴィルフリートに!」
愛斗は撫子の決意を受け取った。力強く頷く。
「分かった。必ず勝ってみせよう!」
愛斗は紫電に乗り、出撃した。
「いよいよか・・・」
秀人が呟く。ドレッドノートから次々とアルテミスが出てきている。いよいよ愛斗が出撃するのだ。そう思うと同時に愛斗からの通信が入った。
「秀人、撫子が時間を稼いでくれている。今の内にレーヴァンテインに」
「分かっているよ。さあ行こう」
紫電とインフェルノは暗雲立ち込める空を、その上に向かって進みだした。
既にレーヴァンテインは雲海に出ているだろう。あまり時間は無いわけだ。紫電は猛スピードで雲へと突っ込む。雲の中でも敵味方が入り乱れて戦っていた。只でさえ視界が悪いのに、何かを求めるように必死に戦っていた。紫電の後ろには直属部隊、ロイヤル・セブンス、インフェルノがついて来ている。
「渚、ロラン、エティエンヌ、カリーヌ、突撃を掛ける。ついて来い!」
「はい!」
全員が同時に答える。
紫電は更に速度を上げ、レーヴァンテインへと接近していた。
「そろそろだ。秀人、護衛は頼んだ。俺がシステムを起動させる!」
「ああ、任せてくれ!」
愛斗は紫電のコックピット内の端末を起動させた。
愛斗の最終手段、それはレーヴァンテインのシステムを直接、ハッキングしてコントロールを奪うものだった。しかし起動条件は厳しく、レーヴァンテインの防御範囲内に侵入する間の二十秒足らずでレーヴァンテインのセキュリティのロックを解除し、防御範囲内に侵入と同時に起動させなくてはいけない。少しでも遅れるとブロックが掛かって、失敗となるのだ。
でもやるしかない。俺なら出来る。
愛斗は確信していた。
「プログラム起動!」
運命のカウントダウンが始まった。
「殿下、澪坂愛斗率いる部隊が突撃を掛けてきます」
井崎がレーダーも見て、報告した。ヴィルフリートは冷たい笑みを浮かべた。
「そうか。アロンダイトの標準を奴らに変更だ。近づいたところを撃て」
「はい」
フェリクスが指示を出し、オペレーターが入力を開始する。
「装填完了!」
ヴィルフリートが頷き、ボタンを押した。
「陛下!敵の守備隊です!」
エティエンヌが叫ぶ。目の前には色違いの秋水二機と、秋水が無数にいた。色違いで指揮を執っているのはギレーヌだ。そしてクリスもいる。
「レーヴァンテインには手を触れさせん!」
「こちらもです!」
カリーヌが突っ込んでいく。全身からミサイルを発射しながら突っ込み、敵を蹴散らす。
「閣下、私にお任せを!」
「分かった!」
愛斗はカリーヌとその愛機であるハーヴィルスを見送り、入力を開始した。
「聖霊騎士団です!」
次は前方に黒を基調としたEMA、ガヘリスが現れた。カミーユだ。
「ヨハン、私は貴方と戦う。間違っていないと思うわ」
愛斗も頷く。ベディウェアのロストシューターがガヘリスを襲った。
「隊長!ここは俺が!」
「助かる。ありがとう」
二機は戦い始めた。愛斗はそれを見送り、どんどんレーヴァンテインに接近していった。
空は下とは違って、青く澄み渡っている。
「行くぞ!」
今、最後の賭けが始まる。侵入までは残り十秒だ。前方から高エネルギー反応が確認出来る。恐らく巨大なプラズマキャノンだろう。喰らえば終わりだ。
「くそ・・・あともう少し待ってくれ・・・」
しかし待ってはくれなかった。青い閃光が愛斗に向かい、放たれた。愛斗が死を覚悟したその時だった。インフェルノがプラズマシールドを最大出力にしてプラズマキャノンを防いだ。
「愛斗!急げ!長くは持たない!」
愛斗は頷き、キーボードに打ち込み始めた。高速で指が動き、ロックを解除していく。突入三秒前、ロックは無事解除された。
「これで!」
プラズマキャノンを掻い潜り、プラズマシールドの隙間からレーヴァンテインの防御範囲内に侵入した。同時にプログラムを起動させる。画面が青くなり、システムがハッキングされた。
「・・・成功だ!」
急いでプラズマキャノンを止め、シールドの隙間を広げる。愛斗に続く様にして次々に部隊が入ってくる。
「目標はレーヴァンテインを止めることだ!」
これで戦いは終る。最後の舞台が始まった。
次回予告
死闘の末、レーヴァンテインの防御範囲内に侵入した愛斗。
しかし内部にはジェラルドとシルヴェストルが待ち受けていた。死闘を繰り広げるインフェルノ。
青く輝く虚空の彼方でナーシャと秀人が、愛斗とヴィルフリートが対峙する!
そして予想外の結末が戦いの果てに待っていた。
次回最終話「Last Promise」お楽しみに