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秀人と愛斗!  作者: ゼロ&インフィニティ
第六章 蘇る悪魔
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四十五話 リリー奪還作戦

目が疲れる・・・でも負けませんよ。

何故なら自己満足を得たいから・・・

 紫電は六枚翼を靡かせて政庁府へと向かっていた。

「リリー、待ってろ!俺が助け出してやる!」

 愛斗の紫電はかなりの速度で進んでいたが政庁府まではまだ遠い。


 政庁府周辺では激戦が巻き起こっていた。ジェラルドはその様子を見て感想を呟いた。

「この戦闘の激しさは首都包囲戦以上だな・・・」

 ジェラルドのヴァジュラの前に一機のEMA、いやEMAと呼ぶには巨大すぎるEMAが飛んでいた。

「あれは?」

「俺はロランだ。久しぶりだな、ジェラルドさん」

「ロランか・・・次に会う時は戦場だと言っていたが本当だったな」

 ジェラルドが突然、電磁ロストシューターを射出した。ヴァジュラは電磁兵器サイバネティック・ウェポンをメインとした兵装を装備している。

「そんな攻撃など!」

 ロランのEMA、ベディウェアは紫電の三倍という大きさで形状も人型では無く、六角形の本体の両脇に四本ずつのアームが付いている。

「それがEMAか?」

「そうだ。新型のEMAは一味違うぞ!」

 電磁ロストシューターは命中したが、ダメージは無いようだ。

「装甲の堅さだけは認めてやるか」

 ヴァジュラはキリンソードを抜き、斬りかかった。ベディウェアは八本のアームからロストシューターを射出し、それを絡め取った。

「機動性で勝負だ!」

 ジェラルドは叫び、それを振りほどき、再び斬りつけた。今度は命中したが何かに弾かれた。

「シールドか?」

「その通り!常にプラズマシールドを展開可能だ!」

 ジェラルドは遠慮なく攻撃を叩き込んでいく。

「数で勝負だ」 

 ヴァジュラの電磁系統の攻撃は次第に強さを増していく。

「少し不利だな・・・」

 ロランは左端のボタンを押した。追加攻撃を叩き込もうとしたヴァジュラの目の前でベディウェアは形を変えていく。そして人型の通常形態になった。

「これがベディウェアの新機能ニューシステム人型戦闘型ヒューマノイドモードだ!」

 機動性を増したベディウェアは両手でスラッシュソードを構え、ヴァジュラを斬りつけた。ヴァジュラもキリンソードで受け止める。

 お互いに火花が散り、再び散る。

「これが可動変形型トランスフォーメーションタイプか!人型の機動力が半端ねぇな!」

 ベディウェアはミサイルを発射した。ヴァジュラに何発かが被弾する。

「うわっ!当たった」

「隙あり!」

 ベディウェアが止めの一撃を繰り出そうとしたが、寸での所で弾かれた。

「くそっ!後、少しだったのに」

 ロランが悪態をつくと、ヴァジュラは構えを変えた。両手を重ねたのだ。

「何だ?」

「これが最終兵器!荷電粒子砲発射!」

 重ねられた両手が光り、閃光が飛んだ。

「おっと!」

 ベディウェアはそれをギリギリ避けた。

「このモードじゃ不利だな」

 再び、先ほどの形態になり始めた。

城塞形態インペリアルモードに可動変形!」

 二発目の荷電粒子砲は受けきった。ベディウェアは再び、大量のミサイルを撃ち込む。ミサイルの弾幕がヴァジュラを襲う。ヴァジュラがミサイルに気を取られている隙に伸びてきた八本のロストシューターがヴァジュラを絡め取った。

「しまった!」

 そのまま引き寄せられ、固定された。

「これで終わりだな」

 ジェラルドが覚悟を決め、目を閉じた。その時だった。

「どけ!」

 後ろから大剣の一閃を受けたベディウェアは回避行動に移った。

「何だよ・・・」

 現れたのは・・・。

「団長!」

 団長のライヒアルトのヴァンガードだった。ヴァンガードはベディウェアと睨みあった。

「誰だか知らないけど邪魔するなよ」

 ロランが嫌味たらしく文句を言うが、敵の反応は冷ややかだった。

「私は聖霊騎士団団長、ライヒアルト・イェブラムだ。若僧よ」

「俺はロラン・ギヌメールだ。覚えとけよ」

 ベディウェアは不意にロストシューターを六本射出した。ヴァンガードは大剣、コルタナでそれを受け止める。

「予想通りだ」

 ベディウェアは残りのロストシューターを射出、脚を絡め取った。

「それがどうした?」

 ヴァンガードはコルタナを振るい、全てをなぎ払った。

「へぇ~、中々」

「次はこちらからだ!」

 ヴァンガードの鋭い動きで後ろに回りこまれた。ベディウェアはコルタナの一撃で吹っ飛ぶ。ベディウェアはくるくると球体のように回転しながら態勢を立て直した。

可動変形トランスフォーム!」

 ベディウェアは再び変形し、人型になった。

「ロラン、聞こえているか?」

 愛斗の声が無線から聞こえた。

「何ですか、隊長!」

「お前たちは政庁府に近づく敵を妨害しろ。俺は政庁府に侵入する」

「分かりました」

 ベディウェアはヴァンガードに向き直る。

「団長さん、残念ながら急用だ。また今度」

「待て!逃げられると思ったか!」

 ベディウェアは再び姿を変え始めた。

「これは・・・戦闘機?」

「そうだ。これがベディウェアの第参形態、超飛行形態メサイアモードだ」

 戦闘機形態になったベディウェアは超高速で飛び去っていった。

「逃げられたか・・・」

 

 政庁府の司令室によろよろと這って来たのはリリーだった。

「ヴィルフリート様、御免なさい・・・失敗しました・・・」

 ヴィルフリートは冷たい目でリリーを見下ろした。

「役立たずが・・・」

 リリーは耳を疑った。

「え?」

「折角、チャンスをやったのに・・・目も見えない、体の不自由なお前を使ってやったと言うのに・・・」

「御免なさい!」

 リリーは必死に謝った。ヴィルフリートはリリーを起こすと、椅子に座らせた。

「まあいい、お前にはもう一仕事してもらう。いいな?」

「はい。挽回してみせます」

 ヴィルフリートは司令室の全員を退室させた。残ったのはリリーとヴィルフリート、フェリクスだけだ。

「お前はそこの椅子に座れ」

 ヴィルフリートはフェリクスに命じて、リリーを奥の司令官席に座らせた。

「次は何をすれば?」

「待てばいい。そこに座っていろ」

 ヴィルフリートはそう言うと、フェリクスと共に司令室を出て行った。蛻の殻の司令室にはリリーのみが取り残された。


 司令室を出た二人は脱出艇へと向かった。フェリクスが後ろを振り返る。

「殿下も人が悪い。要するに囮、ですよね?」

「そうだ。澪坂愛斗を誘き出してもらう。奴は必ずここに来るだろう。来たところを・・・」

 ヴィルフリートはスイッチを取り出した。

「この政庁府ごと葬る、ですか・・・」

「そうだ。相変わらず勘がいい」

「ありがとうございます」

 二人は脱出艇に乗り込み、地下道に向かった。


 愛斗の紫電は漸く政庁府へと到着した。

「愛くん!私達が敵を押さえるわ。その内にリリーちゃんを!」

「分かっている!」

 紫電は政庁府の壁に加粒子砲を撃ち込み、大穴を開けた。そこから入り込む。

「待っていろ!リリー!」

 愛斗は紫電から飛び降り、リリーの下へと向かった。


「邪魔だぜ!」

 ロランのベディウェア飛行形態はミサイルと素早い動きで敵機をどんどん撃墜していく。

 戦況は圧倒的に愛斗側が有利だった。


「殿下!リリーは?」

 脱出艇に通信が入った。

「秀人卿、リリー殿は司令室にいる。彼女には囮になってもらうのだ」

「何?そんな事はさせません!」

 秀人はスピッツオブヴァーニングの出力を上げ、政庁府へと向かった。


 リリーは司令室の席に座り、静かに待っていた。囮にされているとも知らずに・・・。

 ふと、扉が開く音が聞こえた。

「ヴィルフリート様?」

「俺が誰だか分からないのか?」

 リリーはその声に聞き覚えがあった。優しい声、暖かい手。

「愛斗さんですか?」

「そうだ。さあ、俺と一緒に来るんだ」

 リリーは服の裾をぎゅっと握った。

「残念ですけどご一緒出来ません」

「何故だ?」

 リリーは決心したように大きな声で言った。

「私は愛斗さんが居なくても大丈夫です!」

 愛斗は立ち止まった。

「私は・・・愛斗さんのやり方は間違っていると思うのです。愛斗さんが貫こうとしている意志は素晴らしいかもしれません。目指している事も凄いと思います。でも・・・」

 リリーは叫んだ。

「その為に・・・人を・・・誰かの大切な人を奪い、自分の意見だけを押し通す!力で全てを捻じ伏せる!それは間違っています!」

 愛斗の顔が曇った。

「しかし、お前は苦しんできた。学校にも行けずに・・・だから俺はお前の為に・・・」

「嬉しくありません!私一人の為に多くの血が、涙が流れました。それは愛斗さんの罪でもあり、私の罪でもあります」

 愛斗は下を向き、項垂れた。

「(リリーの意思は固い・・・説得するのは無理か・・・それなら無理やりにでも)」

 しかし、愛斗はその考えを頭から叩き出した。駄目だ、リリーを無理やり連れて行くのはリリーの意思に反する。それでは意味が無い。しかし・・・。愛斗は決意を決めた。

「リリー、俺と一緒に来い。これは命令だ」

 愛斗は更にリリーに近づいた。

「来ないで下さい!」

 リリーは懐から拳銃を取り出し、愛斗に銃口を向けた。しかし、愛斗は止まらない。

「お前に俺を討てるのか?」

 愛斗も拳銃を取り出した。

「来ないで!」

 リリーは引き金を引いた。弾丸は愛斗の頬を掠めた。愛斗は予想外の出来事に尻餅をついた。愛斗は混乱していた。

「お前が・・・俺を撃った?」

「はい、これは脅しではありません」

 愛斗は舌打ちをした。どうする?

 リリーの拳銃を撃ち落すか?いや、リリーに向けて銃を撃つなど出来る筈が無い。

 その時、無線が入った。

「愛くん!秀人君がそっちに・・・」

 渚の言葉が終わらない内にスピッツオブヴァーニングが壁を壊して入ってきた。愛斗は立ち上がり、リリーに向かって走り出した。

「リリー!俺と一緒に来い!」

「リリー、助けに来たぞ!」

 秀人との声が重なる。リリーも叫んだ。

「秀人さん!助けて!」

「なっ!」

 愛斗は転んだ。その隙にスピッツオブヴァーニングがリリーの脇に降り立った。そしてハッチが開く。中から秀人が出て来た。

「リリー、こっちだ」

 秀人はリリーを抱え、ハッチに飛び乗った。同時にスピッツオブヴァーニングが浮かび上がった。

「待て・・・リリー・・・」

 愛斗は呆然とその様子を見ていた。スピッツオブヴァーニングが完全に見えなくなった時、愛斗は漸く我に返った。

「リリー!待っていろ!俺が必ずお前を連れ戻す!」

 その時、通信が入った。

「愛くん!政庁府が自爆するわ!急いで逃げて!」

「分かった・・・」

 愛斗は夢遊病者のような足取りで紫電へと向かった。

 

次回予告

リリーを囮にしたヴィルフリートに疑心を抱く秀人。

そして諦めようとはしない愛斗。

ヴィルフリートの目的は何なのか?

次回四十六話「秀人とリリー」お楽しみに

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