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秀人と愛斗!  作者: ゼロ&インフィニティ
第五章 過去の胎動
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番外編~World War Ⅲ ①~

番外編は当分続きそうです。

もうしばらくお付き合いください。

「大きな城だな~」

 愛斗が感服の声を上げる。

「江戸城ですよ。昔は天皇の皇居だった場所です」

 澪が説明する。愛斗は日本の皇帝として、江戸城にある日本軍大本営に出頭しなくてはいけない。これからもそうだろう。

「さあ、若。行きましょう。お偉いさんは痺れを切らしていますよ」

「僕が偉いんだから気にする必要は無いんじゃない?」

 愛斗が最もな事を言う。

「いえ、立場上で優位なだけです。若の器量を発揮しなくては信用は生まれませんよ」

「分かったよ」

 愛斗は渋々頷き、城門の前に立った。門の前には白い軍帽を被った海兵隊員がいる。

「皇帝陛下です」

 澪が短く言うと、兵士は道を空けた。

「さあ、参りましょう」

 愛斗と澪は並んで大本営へと足を踏み入れた。


 中央司令部は大きなモニターだらけの部屋だ。愛斗はその中央の椅子に座った。

「で、何をすれば?」

 愛斗が澪に尋ねた。

「これから会議ですので、報告を聞き、冷静な判断を下すのです」

 澪が愛斗の耳元で囁いた。愛斗も頷き、全員に目配せした。

 一人の無精ひげを生やした軍人が書類を読み始めた。

「ではご報告させて頂きます。まず我が軍の兵力はどう集めてもストライダムの十分の一程です」

 愛斗が手元の書類を手に取り、頷いた。

「続いて、戦線についてですが今現在、ストライダムとの交戦は起こっておりません。しかし、敵は着々と日本攻略の準備を進めている状況です」

 一通りの説明が終わり、愛斗が各部隊の配置図を見た。

「敵は多分、ここから来ると思う」

 愛斗が北海道の一角を指差した。

「何故そう言いきれるのですか?」

「警備が薄いし、地形上にも上陸に適しているからね」

 愛斗が澄ました声で言う。

「紹介が遅れました。私、日本陸軍最高司令官の浅代あさしろ富嶽ふがくと申します」

 無精ひげを生やした軍人が遅れて挨拶をした。

「僕がこれから軍の指揮を執る。皆、よろしく頼むよ」

 愛斗が全員を見回して、言った。

 

 屋敷に戻った愛斗は和室に座り込み、寝そべった。そして息を大きく吐き出す。

「疲れるよな。やっぱり・・・」

「仕方ありませんよ、若。若はそれ程期待されているという事です」

 澪が夕飯の支度をしながら愛斗に言った。

「それより、まだ時間がありますし、遊びに出ては如何ですか?」

「そうしようかな・・・」

 愛斗は起き上がって、屋敷から出た。日が沈みかけた森や川の景色はどこか懐かしさを感じさせた。

「公園にでも行こうかな・・・」

 愛斗は近所の公園に向かって走り出した。

 公園といっても、林の中に二つだけ遊具がある小さな公園だが、この時間は子供がよくいるので一緒に遊べるだろう。

 愛斗は公園の前に立っていた少年に声をかけた。

「ねえ、近所の子?」

「ん?ああ、そうだけど」

 二人の会話に気付いたのか、公園の中で遊んでいた六人程の少年がこっちに向かってきた。

「おい、どうした?」

「いや、何か知らない子が・・・」

 ガキ大将的な子供がこっちに向かってきた。

「お前、新入りか?」

「まあ、引越しして来たばかりだけど」

 愛斗がそう言うと、ガキ大将は少し笑みを浮かべた。

「俺は飯塚いいづかりゅう。お前は?」

「僕は澪坂愛斗だよ」

 愛斗が笑顔で返す。

「そうか。丁度いい、俺と勝負だ」

「いいけど何で?」

「俺達の仲間になりたいのなら、俺と互角に戦って見せろ」

 愛斗は笑顔を崩さずに行った。

「いいけど、どういう勝負をするの?」

「男はこれで勝負だ」

 龍はそう言い、木刀を背中から引き抜いた。もう一本を愛斗の前に放り投げる。

「これで?」

「そうだ。何か文句あるか?」

「いや、無いよ。早速始めよう」

 愛斗は木刀を拾い上げ、構えた。

「いい度胸だ」

 龍が一気に愛斗に木刀を振り下ろす。愛斗はそれを軽い身のこなしで避けた。

「次は僕だ!」

 愛斗が龍に木刀を勢い良く振り下ろした。

「まだまだ!」

 龍がそれを受け止め、弾いた。龍が木刀を弾き返したときに空いた愛斗の脇腹へと斬り込む。

 愛斗はそれを左手で受け止めた。右手で龍の頭に振り下ろす。

 それを龍は避けることに成功した。

 二人が少し間合いを取る。

「中々やるじゃねぇか」

「そっちこそ」

 愛斗は笑みを浮かべた。エルネストなんかよりずっと張り合いがある。

「勝負はこれからだよ!」

 愛斗はフェイントを掛け、間合いに飛び込んだ。龍が木刀で愛斗の喉を狙って突いた。

「はっ!」

 愛斗はそれを避け、龍の腹に蹴りを決めた。

「がっ!」

 龍が少しうめいた。愛斗は遠慮せずに木刀で次の一撃を叩き込む。

「くそっ!」

 龍の右手が愛斗の木刀を受け止めた。

 愛斗はまた離れて間合いを取る。

「お前、強いな・・・」

 龍は木刀を投げ捨てた。

「お前の勝ちだぜ」

 愛斗も木刀を同じ様に投げ捨てた。

 二人は歩み寄り、お互いに握手をした。

「強けりゃ、大歓迎だ。今日から仲間だ」

 愛斗も微笑みを返す。

 二人の間に友情が生まれたその時、一人の大人が叫びながらこちらに走ってくるのが見えた。

「父ちゃん!」

 龍が叫んだ。

 龍の父は公園に入ってくるや否や、叫び始めた。手にはラジオが握られている。

「おい、龍!ラジオを聞いたか?」

「聞いてないよ!どうしたんだよ、父ちゃん?」

 龍の父はラジオのスイッチを入れた。

 ラジオから大きな声が響いている。その場にいた愛斗達も耳を傾けた。


「本日、午後五時三十分四十二秒。ストライダム皇国軍が北海道札幌市に上陸、攻撃を開始しました。これに対し、大本営はストライダム皇国に宣戦布告。交戦を開始しました。只今入った情報によると、ストライダム皇国軍は日本本土各地で上陸を開始し、戦闘を始めているとの事です」


 愛斗はその放送を聞き、溜息をついた。

 遂に戦争が始まったのだから。龍が愛斗達に向かって叫んだ。

「おい!聞いたか!遂に戦争だ!」

 歓声が沸いた。

 皆が勝利を信じていた。勇気ある民族としての誇りを胸に掲げて・・・

次回予告

愛斗にとっての最高の出会い。

それはリリーとの出会いだった。

次回、知られざる愛斗とリリーの出会いが明らかになる。

次回番外編「World War Ⅲ ②」お楽しみに

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