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蓮華  作者: 釜瑪秋摩
島国の戦士
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第72話 不覚 ~修治 3~

「おまえ、当分のあいだ、なるべく一人になるな。可能なかぎり俺のそばにいろ。一緒にいたからといって、なにができるってわけでもないだろうが、おかしいと思ったらすぐに言え。いいな?」


「うん……わかった」


「じゃあ、俺はいったん戻るが、夕方にまた来るからな」


「うちのやつらのこと、よろしく頼むよ」


「ああ。わかっている。おまえも、爺ちゃん先生をこれ以上怒らせないように大人しくしてろ」


 病室を出ると、先に道場へ寄るかそれとも戻るべきか考えて、まずは演習場へ戻ることにした。

 拠点には数人の師範が連絡係で残っている以外は全員、手分けして演習場内を調べに出ていると言う。


 修治は怪我をした隊員たちの班を探しに、森へ入った。

 ほぼ全員が出ている割に人けを感じないのは、師範の方々が隊員たちに不安を与えないよう、配慮して動いてくれているからだろう。


 怪我をしているやつらはきっと、今日はそう大きく動かないと思い、川沿いを中心に探すとすぐに見つかった。

 ひどい怪我には見えないが、一度、拠点に連れ帰り、石川の言ったとおり二人を医療所へ向かわせた。


 残りの班員たちには、このまま待機しているようにと指示を出し、今度は塚本を探しに出る。

 ちょうど演習場の中ほどで、ほかの師範たちと一緒の塚本を見つけ、声をかけた。


「戻ったか。こっちも全員で森じゅうをさらってみたが、ほかにはなにも入り込んでいないようだ。このまま続けても問題なさそうだぞ」


「ありがとうございます。手間を取らせて申し訳ありませんでした。休憩を取る暇もなかったでしょうから、少し休んでください。夜から仕切り直します」


 少しのあいだ、師範たちが引きあげたところで、班同士でも追い合っている以上、それほどの影響は今はない。


「それにしても、おまえたちはこのところ、ついてないなぁ。ろくな目にあってないじゃないか」


 塚本がなにげなく言った言葉に、修治は苦笑いをするしかなかった。

 思い返すと西浜のロマジェリカ戦以来、本当に調子が良くない。


 麻乃がこれまで以上に落ち着かなくなったのも、視線を感じると言っていたのもあれからだ。

 左腕が痛むと言っていたのは、どうなったんだ?


「どうかしたのか?」


 自然と表情が険しくなったのか、塚本が問いかけてきた。


「いえ、ちょっと……塚本先生、戻ってから少し話せますか?」


「ああ。構わないぞ」


 拠点に戻った修治は、先に食事の支度を済ませ、テントに戻った。

 ほどなくして塚本が顔を出した。


「麻乃の怪我はどうだったんだ?」


「背中は大したことはないそうですけど、足が悪くて、今は歩くのも大変なようです」


「思ったよりひどいな。まだ演習も始まったばかりだというのに」


「今日、明日は、様子を見るということですけど、麻乃抜きで続けることも、頭に入れておかないといけないですね」


「そうか。まあ、今回は師範連中も参加してるからな。困ることにはならないだろうさ。今はまず、最終日まで予定通り進めるしかないだろう」


 塚本は眠気を覚ますかのように、両手で顔をこすった。


「市原先生が、麻乃からなにか聞いたらしいって言ってましたけど、どんな話しだか聞いてますか?」


「ああ、なんだかなぁ、誰かに見られてるとか、そばにいる気がするとか、そんなことを言っていたな」


「誰か……」


「おまえもなにか聞いたのか?」


 塚本の問いかけに、修治はうなずく。


「市原は、シタラさまに聞けと言ったらしいんだけどな。麻乃のやつは嫌がったみたいだ」


「あぁ、確かに苦手意識が強いですから……でも、そんな場合でもないだろうに」


 修治が大きくため息をつくと塚本は真顔になり、胡坐をかいた膝を揺らした。


「そうは言っても、あれを無理に神殿へ連れていったところで、なにも言わないだろうし、そもそも素直に行きもしないだろうさ」


「そうでしょうね」


「かと言って、放ってもおけないしな。シタラさまを呼んで、遠目からでも視てもらったらどうだ?」


「……ええ、そうですね」


「なんなら、市原と交代のときにでも、俺が神殿へ寄って頼んできてやるぞ」


 麻乃のことを言いながら、修治自身もシタラのところへ行くのを渋っている様子に気づいたのか、塚本はそう言って修治の肩をたたいた。


「俺がおまえの歳のころには、もっと気楽にやっていたがな。ただの戦士と蓮華の違いもあるんだろうが、あまりことを難しく考えすぎるな。麻乃同様、気負いすぎのところがあるぞ。広くいろいろと見ているのはさすがだが……おまえは変なところが、高田先生にそっくりだよ」


 塚本は苦笑してテントを出ていった。

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