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蓮華  作者: 釜瑪秋摩
島国の戦士

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第130話 再来 ~巧 5~

()()が狙われているようだったのも、様子がおかしかったのも見て取れました。()()が出るというので行かせましたが……」


 高田は修治にチラリと視線を向けてから、巧に向き直った。


「おかげで助かりました。あれほど集中されると私たちだけでは手が回らなかったと思います」


 あらためて頭をさげてから、膝を正した。


「様子がおかしかったことですが、対峙していた敵兵に攻撃が当たらずに焦れていたからのようです」


「確かに避けるのはうまいやつらだったな」


 組んだ指先を見つめながら、修治がつぶやいた。


「それに……どうやら麻乃には、倒した相手が隊員たちに見えていたようです」


「自分の隊員たちを斬ったと思っていた、ってことか?」


 修治の問いかけに巧はうなずく。


「目が覚めたときはかなり脅えていました。私のことも死んだと思い込んでいたようで……」


「敵兵に術でもかけられていたのだろうか?」


「それはないと思います」


 お茶をすすりながら言った高田に、修治はこぶしを握って口もとへ持っていき、一瞬、難しい顔を見せてから、きっぱりと言いきった。


「どうして?」


「前に梁瀬から聞いたんだが、麻乃には術が効きにくいらしい。かけるつもりなら、相応の準備期間が必要だと言っていた」


「ふむ……確かにその類の話しがあるのは聞いたことがある。となると、あの混乱した中で打ち合いながら、術中に嵌めるのは難しいか?」


「そう思います」


「でも、そうしたら麻乃の言っていたことはなんなの? もしかしたら体質の問題とかがあるんじゃないかしら?」


 修治が苛立った様子でため息をついた。


「前に穂高も似たようなことを言っていたが体質云々ってのなら、これまでにも同じようなことがあったはずだ」


「覚醒しかけていて変わったりするんじゃない?」


「それも、より強固になるならわかるが緩くなるとは思えないだろう?」


 そう言われると、確かに修治のいうとおりかも知れない。


「今日はたまたま俺がいた。けれど次に同じことになったときにも出られるとは限らない。戦いの最中、また意識を失われたら終わりだ。だからといって全員があいつを気にして防衛がおろそかになるんじゃ話しにならないだろう? 俺はそれが怖い」


「シュウちゃん……」


「俺は避けられてるしな。表立って手出しもできない」


 自嘲気味に笑った修治の肩に、巧は手をかけた。


「これまでのことを踏まえて考えると、やはり、あれをなんとか覚醒させるしかないのだろうな」


 それまで黙って聞いていた高田は、思い詰めた表情で、手にした湯飲みを見つめている。


「ただ、どうもなにか引っかかるものがあるようで、それを取りのぞいてやらないことには、どうにもならないのです。理由についても一向に話そうとしない」


「麻乃の性格からいって、無理に聞き出そうとしても逃げる一方でしょうね」


 高田が大きくうなずいた。


「大陸で鬼神の偽物があらわれ、今日のようなことがあった以上、あれを不安定なままで大陸へ渡すわけには……聞けばこれに対してだけではなく、あなたがたからも離れようとしているようですね」


「みんな大嫌い、だそうですから」


 中央で、麻乃が勇んで叫んだ言葉を思い出し、苦笑いで返した。


「豊穣まであと二週間ほどです。せめて、あなたがたとの関係が以前のようであれば誰と組んでも添って行動するのでしょうが、反発心を持ってしまったら、あの広い大陸でなにか起きたときの対処が難しくなります」


「例年通りなら、俺と麻乃はヘイトなんだろうが、今のままじゃあ奉納さえうまく済ませることができるかわからない」


 重苦しい雰囲気が部屋をつつむ。


「不安な要素が多いのですが、私は一つがうまくいけば、半分……いえ、もしかするとそのほとんどを、解消できるんじゃないかと思っています」


「ほう、それは一体?」


 巧の言葉に高田が驚いて身を乗り出してきた。


「シュウちゃんもわかってるでしょ。麻乃の胆に触れた原因を、どうにかすればいいのよ」


「どうにか……ったって、あれは横槍を入れたら余計に拗れるだろう? 下手をすればこのあいだの二の舞だ」


「私に少しばかり考えがあります。それにはこちらで、お嬢さんを含め、手を貸していただくことになりますが」


「多香子にも? あんた一体、なにをする気だ?」


 身を乗り出して立ちあがりかけた修治を、高田が制した。


「今は、いいほうへ向かう可能性が少しでもあるなら、それを試してみようじゃあないか」


 その言葉に、巧はお礼を言って深々と頭をさげた。


「どちらかが落ち着いてくれればいいのだが……」


 ぽつりとつぶやいた高田の言葉を巧は聞き逃さなかった。

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