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蓮華  作者: 釜瑪秋摩
島国の戦士
119/673

第119話 暴挙 ~麻乃 2~

(あたしは……なんでここに座っているんだろう……)


 今回の会議は絶対にサボるつもりでいた。

 前回、気まずい空気を作ったままだったからだ。


 徳丸は西詰所で一緒になっても変わらずいつもどおりに接してくれた。

 柳堀で揉めごとを起こしたときも、叱られはしたけれど変に問い詰めてはこなかった。

 だから麻乃もそれを受け止めたうえで、意思を伝えたつもりだ。


 ただ、柳堀のことがあってからずっと、高田の呼び出しからも修治の家族からも、おクマや松恵からさえも顔を合わせないように逃げ続けている。

 修治の耳にもすべてが伝わっているだろう。


 放っておいてくれるといいのだけれど、また詰め寄られたらカッとしてしまうかもしれない。

 憤りがどうにも抑えきれず気づいたら刀に手をかけていることもしばしばだ。

 だから麻乃は余計に人に会いたくなかった。


 徳丸もそんな思いを察してくれているのか、無理に連れ出そうとはしないで、ちゃんと来るんだぞ、と一言だけ残して先に中央へ戻っていったのに。


「隊長、明日なんですけど、俺たち食材や日用品の買い出しに行きたいんですよね」


「車二台、用意できたんで、中央までつき合ってもらってもいいですか?」


 矢萩と里子にそう言われ、仕方なくうなずいた。

 そして今日、買い出しにつき合ってそのまま帰るつもりが、まず軍部で降ろされた。


「じゃ、買い出しを済ませて、会議が終わったころに迎えに来ますから」


 と、置いてきぼりを喰らってしまった。

 呆然と立ち尽くしているところを梁瀬と穂高に見つかって捕まり、会議室へ連れられてきた。


(報告することなんか、なにもありやしないのに……)


 どの浜も報告がないのは同じだったけれど、収穫祭まで残り一月を切っていて、そのあとの豊穣の儀を含めた準備についてが話し合われた。


 シタラからはまだ知らせはない。

 組み合わせも行先も、これまでほとんど変わることがなかったのを考えると、例年通り麻乃は修治と一緒にヘイトだろう。


 再度、大陸へ渡った諜報の連絡も届くのはまだ先の話しだ。

 麻乃は一分でも一秒でも早く、西区に戻りたかった。

 視線を感じてもうつむいて誰とも顔を合わせないようにしていた。


 椅子がガタガタと動く音が響き、ハッと我にかえると、上層部が立ちあがり出ていくところだ。

 麻乃は荷物を引っつかむとあわてて上着を羽織り、誰よりも早く会議室を出た。


 廊下へ出た麻乃は不意に腕を取られ、バランスを崩して誰かの体にぶつかった。

 ほんのわずかな痛みが一瞬で苛立ちに変わり、相手の姿も確認しないまま、みぞおちあたりを殴りつけた。


 麻乃の足もとに跪いたのが鴇汰で驚く。

 むせ返っている姿に謝らなきゃ、と思った矢先に怒鳴られた。


「いきなり……かよ! なにすんだよ!」


「それはこっちのセリフだよ! 鴇汰がいきなり腕をつかむから、そういうことになる」


 つい言い返し、つかまれたままの腕を力任せに振りほどいた。

 会議室のドアからほかのみんなが顔を出している。


「俺はただ、医療所で言ったことを謝ろうと思っただけなんだぜ? 言い過ぎて悪かったって、ずっと思ってたから……」


「言い過ぎたと思っても間違ったことを言ったとは思ってないんでしょ。そんなの謝られても困る。だいいち見たくないって言うから顔を合わせないようにしてるんだ。それでいいじゃないか!」


「いいわけがないだろ! ほかにも話しがあるんだよ、とにかく聞けよ!」


 もう一度触れようと伸ばしてきた鴇汰の手を、麻乃は思い切り払いのけた。


「そんな必要はないね。あたしは話しなんかなにもない」


 鴇汰の顔が険しくなったのを見て、麻乃は自分の手が鬼灯の柄を握っていることに気づいた。


「なにやってんだよ! 二人とも本当にいい加減にしろって! 麻乃も柄を離すんだ」


 穂高もそれに気づいたのか、あわてた様子で割って入り、鴇汰の体を押さえた。

 麻乃の中で弾けた感情が抑え切れず、低くつぶやく。


「――また触れようとしたら、次は斬る」


「じょ……上等じゃねーか! だったら今抜けよ!」


 穂高の手を振りほどこうとした鴇汰を、岱胡も押さえにかかった。


「もう、あたしに構わないでよ! 放っておいて! あんたたちみんな大っ嫌い!」


 麻乃は窓枠に飛び乗ると、そこからそのまま飛び降りた。

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