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蓮華  作者: 釜瑪秋摩
島国の戦士
118/673

第118話 暴挙 ~麻乃 1~

 夕方になってから、麻乃は詰所に戻ってきた。

 走り回ってクタクタのまま、小坂を呼んで隊員全員を会議室に集めた。


「もう話しを聞いてると思うんだけど、おとといの揉めごとが原因で、うちの部隊は当分のあいだ、柳堀を出入り禁止になった」


 誰もなんの反応もしない。


「悪いことをしたとは思ってないけど、軽率だったのは確かだ。本当に迷惑ばかりでごめん。それで、これからのことなんだけど……」


 黙ったままでいる隊員たちを、麻乃はぐるりと見回す。


「正直、あそこを出禁になると、まず飯の問題が出てくるんだよね。トクさんのところに頼んで、ある程度の食材は調達してもらえても、十分な量ってなると難しいと思う」


「自炊は特に負担にはなりませんよ」


「うん、でも、買い出しも生ものは大変だし。だからあんたたち、しばらく中央に戻って……」


「あっちはもう全員、引きあげてきちまいましたよ」


 矢萩が言う。


「あ……そっか。それじゃあ……」


 腕組をしてどうするか考え込むと、新人の島田しまだが問いかけてきた。


「仮に俺たちが中央に戻ったとして、隊長はどうするんですか?」


「あたし一人ぐらい、自分でどうにでもできるよ。山も海も、川だってあるんだし」


 麻乃は真面目に考えてるのに、隊員たちにドッと笑われ、ムッとした。


「なにがおかしいってのさ?」


「まず、大きな問題が三つ、ありますよね?」


 笑いをこらえながら、杉山がそう言って指を三本立てた。


「一つ目は、俺たちはもう、ここが拠点だから動けない。二つ目は、ここを離れちまったらなにかあっても迅速に対応できない、ってことです」


 ほかの隊員たちもうなずいている。


「三つ目。これが最大って言うか、重要な問題ですよ。あんた一人を、野放しにしておくわけにはいかないんです」


「野放しって……なんて言い草だよ。子どもじゃあるまいし、そんなに何度も馬鹿な真似はしないよ!」


 カッとしてつい大声になる。


「そんなら聞きますけど、野菜とか保存食とかはともかくとして、肉でも魚でも、手に入ったらどうするつもりなんです?」


「そりゃあ、ちゃんと調理とかいろいろ……」


「馬鹿言っちゃいけませんよ。隊長に料理なんか、無理に決まってるじゃないですか」


 杉山の後ろで豊浦が呆れ顔をして肩をすくめた。


「変なもん食って当たって寝込まれでもしたら困るんですよ。俺たちが」


「そうそう、あの家を見せられちゃねぇ、どんなもんを作るってのか、容易に想像できますよ」


 新人たちにまで言われ、麻乃は返す言葉もなく顔が赤くなる。


「ここに来る前に言いましたよね? ついて行く気でここに立っている、って。隊長は方向だけ決めて、こうするからついてこいって、そう言えばいいんです」


「俺たちだけをどうにかしようなんて、考える必要はないんですよ」


「絶対に自分だけでどうにかするんだろうって思ってましたよ。隊長の考えそうなことですからね」


 新人の西上にしうえと富井、蓮見はすみもそう言って笑った。


「あーーーっ! もう! だったら一体、どうしろってのさ!」


 机をたたいて叫ぶと、小坂がきっぱりと言いきった。


「俺たち、二手にわかれます。あんたが中心で一組は食材調達、もう一組が調理担当、これで決まりでしょう? 何か問題でも?」


「大ありでしょうが! 五十一人ぶんだよ? どうすんの、そんなに……毎食ぶんも……」


 ざっと計算しただけでも、一日ぶんを調達することを考えると、気が遠くなりそうになる。

 麻乃は軽く目眩がした。


「別に一日三食の必要もないでしょ。買い出しにも行くんだし不足するってことにはならないですよ」


「いいじゃないですか、演習の延長みたいで」


 岡山と高尾がまるで危機感のない様子で、気楽に言っている。


(――まったく、どいつもこいつも、ああ言えばこう言う)


 多勢に無勢でなにを言っても無駄なら仕方ない。

 それに確かに、みんながいうことも最もだと思う部分が多々ある。


「わかった。それならみんな、ここに残ってもらう。食材調達も、あたし一人のつもりでどこで獲るか決めてきたけど、乱獲をしないようにもう一度考え直すから、もうさっさと班を決めちゃってよ」


 椅子にどっかり腰をかけて机に頬づえをつき、麻乃は不貞腐れてみせた。

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