表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

出会う必然、変わる運命

 橋の上ではさらに、車の往来が多くなってきた。もう出勤の時間なのだろう。


 そんな雑音も、あたしの耳には入らない。勇気の声しか。


「俺は、君の運命を変える為に…この時代に来た」


「あたしの運命!?」


「そう」


 勇気は頷いた。


 あたしは息を飲み、勇気の次の言葉を待った。


 勇気は、言っていいものか悩んでいた。本人に気づかれずに、運命を変えるつもりだった。なのに、こんなことになるなんて。ミュータントという言葉も、教える訳にはいかなかったのに。


 なぜならば、勇気は、ミュータントの存在を消す為に来たのだから。


 彼女の運命を変えることができたならば、ミュータントという存在は消えるのだから。


 だけど、ここまでまき込んでしまったら、言わない訳にはいかない。


 言った上で、納得してもらうしかない。


 勇気は、覚悟を決めた。


 あたしの顔を見据え、


「ミュータントが初めて、産まれたのは…今から次の年」


「来年に生まれるの?」


 驚いたあたしを見て、勇気は頷き、


「そう…。だから、俺は…ミュータントを生まれないようにする為に、この世界に来た」


 勇気の言葉には、揺らぎない思いを感じた。


 だからこそ、あたしはきいた。


「あなたは、ミュータントなんでしょ?」


「ああ…」


「だったら、もし…運命が変わったら、あなたは生まれないんじゃ…」


「それでも、構わない!」


 勇気は、あたしを睨むように見て、


「それでも…」


顔をそらした。


「構わない」


「ど、どうして?」


 あたしは声を荒げた。


「ミュータントが生まれてから、五百年にも渡って、人間との戦いは続いている。数えきれない程の人々が、死んだ。ミュータントが生まれなかったら、戦いは起きなかった」


 勇気はあたしを、じっと見つめた。


 勇気の瞳の強さに、あたしは何も言えなくなった。


 それほど、勇気の決意は揺るぎなく、意志は固かった。


「ミュータントのみんなも納得してくれている…はずだったけど…」


 最後の語尾は、少しだけ声が小さくなった。今まで迷いのなかった勇気の言葉が、揺らいでいた。


 あたしは、そんな勇気に気付いて、少し心配になった。


 だからと言って、簡単に言葉をかけられない。


「だけど!」


 勇気は、あたしの肩を掴んだ。


「俺のやることは、変わらない!この二週間、君の出会いを阻止する!」


「え」


 あたしは今、初めて気付いた。


「君はこの二週間で、ある男と出会い…恋をして、子供を産む。それも、双子だ」


 もしかしたらと思っていたけど、今の言葉で、完全に確定した。


(ミュータントを産んだのは…あたし!?)


「その1人が、ミュータントの始祖となる」


(あたしが、来年…双子を産む!?)


 学生であるあたしが…来年はママになる。


 それも、ミュータントの。


 信じられない言葉に、あたしの頭はパニックを飛び越えて、真っ白になった。


「当時のことは、あまり伝わっていないけど…あなたが、産むことは記録として残っている」


 勇気の言葉に、あたしははっとした。


(相手は、誰なの?)


 ときく前に、勇気が言った。


「残念だけど…相手はわからない。だから、俺は!」


 勇気は、掴む肩に力を込めると


「君には悪いけど…俺は、この二週間!君と誰かの出会いを邪魔する。それは、君の幸せを奪うことかもしれない。だけど…」


 顔を逸らし、あたしの肩から手を離した。


「君は、綺麗だから…いずれ、いい人ができて…幸せになるよ」


 勇気は、顔を真っ赤にした。


 慌てて、あたしに背を向け、


「記録によると、ミュータントを産んだ君の人生は、過酷だったらしい…」


勇気は空を見上げ、


「そんな人生を、送らなくてもよくなる」


それから、ゆっくりと視線をあたしに向け、


「勝手な印象で、もっと気の強い女性を思い描いていた」


微笑んだ。


「だけど、あなたは、普通の優しい女の子だった。そんな人が、あんな運命を辿る必要はないんだ。だから…ごめん。君の運命を変える」


(あっ)


 あたしは気付いた。


 勇気は自分で言いながら、気付いていないみたいだけど…。


 もし、あたしが誰かと出会い、恋をして、子供を産むとしたら… 。


 あたしは、じっと勇気を見つめた。


 勇気は、そんなあたしの視線に気付かない。


(あたしはもう…出会い、恋をしている)


 そう…恋をしている。


 あなたに。



「あ、あのお〜」


 それを伝えていいのか…わからなかった。


 鈍感な彼に言ったら、どうなるのだろうか。


彼 は多分…未来に帰る。


 だけど、もし…未来に帰ったら、どうなるのだろうか。


 彼が、あたしの運命の人だとしたら…。





「もう…学校に行かないとね。俺はここから、消えるよ」


 テレポートしょうとする勇気の腕を掴んだ。


「あのお」


 あたしは、勇気を見上げた。


 今、勇気が帰ったら…帰るべき未来はあるのだろうか。


 あたしは、勇気の腕を握りしめた。


 真実を告げてはいけない。


 彼を、未来に帰してはいけない。


 あたしは、彼に生きてほしい。


 だから、あたしは…。


「勇気くん!」


 あたしが、気持ちだけを伝えようとした時、彼に生きてほしいと言おうとした瞬間、真上にある橋の一部に、亀裂が走った。


「危ない!」


 勇気は、あたしを抱えると、橋の下から飛び出した。


 あたし達がいた場所の天井部分だけが、崩れた。


 橋を渡っていた車が落ちることはなかったが、パニックにはなり、すぐに橋は通行止めになった。


「大丈夫?」


 低空飛行だったけど、勇気に抱かれ、川辺を疾走したあたしは、ドキドキしながらも、勇気がミュータントだと改めて思い知った。






「フン!」


 橋のそばにいたメグは、勇気に抱かれて、橋の下から飛び出すあたしを見ていた。


「運命を変える方法が、もう一つあるわ」


 メグは学校に向かって、歩き出した。


 クラクションを鳴らし、騒然となっている橋の上を、悠然と歩いていく。


 前方を睨み、メグは決意した。


「あたしが、イブになればいいのよ。ミュータントのイブに」


 メグは口元を緩め、


「その為には…」


橋を渡り切ると、振り返り…土手の下を見た。


「睦美。あなたが、邪魔よ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ