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「高橋くん!」


 メールを開くと予想通り、高橋からだった。いきなり、送られても…対応に困る。頭をかきながら、あたしはメールの内容をチェックした。


 これが、勇気からのメールなら、ドキドキするのに。


 そんなことを考えながら、メールを読んでいたけど、


「え」


あたしは、内容に絶句した。


「メグが!」


 どうやら、高橋と別れてから、メグはまだ、家に帰っていないらしいのだ。


 高橋と会うことを知っていたメグの両親が心配して、高橋の家に電話をかけたみたい。


 別れ際…メグが家と反対方向に消えたことを思い出した高橋は、再び現場に戻ってきていた。


 メールの内容は、メグの行きそうなところは、どこかと尋ねる内容だった。


「あの子は!」


 あたしは携帯を閉じると、部屋から飛び出した。


 やはり、さっきの電話はおかしかったのだ。


 あたしは学校に向かいながら、そっちに行くことを、高橋にメールで伝えた。


 あたしからのメールを受信した携帯の画面を見て、メグは笑った。


「これで、役者は揃うわね」


 しばし携帯の画面を見つめた後、あたしに待っていると返事を打ったメグは、携帯を高橋に投げ返した。


「変な邪魔が入る前に、さっさとすますわよ」


 メグは、学校から少し離れた土手の下にいた。


 下を流れる川まで、結構な深さがあるが、夕方までは散歩コースとして利用する人が多い。


 しかし、日が落ちると、街灯が上にしかない為、川沿いは真っ暗になってしまう。


 そんな場所に、メグと高橋はいたのだ。


「あなたの役目は、わかってるわね?」


 メグの言葉に、高橋はああと頷いた。


 しかし、返事をした高橋の様子が少しおかしかった。まるで、催眠術にかかったように、目をトロンとさせている高橋を見て、メグは鼻を鳴らした。


「フン!まあいいわ」


 それから、そばの草むらに向って、にやりと笑った。




 1時間後、制服から着替えもしないで、あたしは高橋にメールで教えて貰った場所に来た。


 あたしの気を察知したメグは、消えていた。


「ごめん」


 土手を下りながら近づくあたしは、場所が真っ暗でありながら、何の迷いもなく、高橋のもとへと駆け寄った。


 何の疑いも持たずに。


 その様子を遥か、上空から伺うメグ。


「睦美…ごめんね」


 メグは、学校で見せる親友の顔になった。


 だけど、彼女はこれから起こることには手を出すことも、誰かに邪魔をさせる気にも、ならなかった。


 メグは口をつむんでから、周囲に気を配った。


 必ず来るはずだから。


「勇気…」


 メグは、勇気を死んでも止めるつもりだった。


「もうすぐ…歴史が変わる」


 両手を握り締め、


「いや!変えてみせる」


全身に力を込めた。






「総統!」


 正門を抜け、駅へと歩いていたユウヤに、実習生の女が叫んだ。


「ミ、ミュータント反応が!」


 声を震わせる女の言葉に、ユウヤは足を止めた。顎に手を当て、しばし考えると、やがてにやりと笑った。


「成る程…そう来たか」


 頷くと、ユウヤはまた普通に歩きだした。


「総統!どうされますか!このままでは!」


 慌てている女の方を向かずに、ユウヤはこたえた。


「捨て置け。どうせ、流れは変わらないよ。どうなろうがね。それに…彼が黙っていない」


「え!」


 女の持つレーダーは、新しいミュータント反応と重なるように点滅する新たな反応を表示した。


 そして、その二つに猛スピードで近づく反応を捉えていた。


「ほらね。歴史は簡単には変わらない」


 ユウヤは笑い、


「だけど、変えることができるのは…彼ではなく、僕だ!」


歩く速度を速めた。


「行くぞ!未来は、我々!人間の為だけにある!」






 人に見つからないように、雲の中を通りながら、空を飛ぶ勇気。


「なぜ…ミュータント反応を感じる!?」


 人間に迫害をされ続けていたミュータントは、互いを感知できる能力があった。


 未来では、その能力も人間に研究され…ミュータントを探し出すのに使われている為に、超能力発動時以外は、人間と変わらないように、能力を抑えていた。


 今、勇気が感じている反応は、目覚めたばかりの赤ん坊に近い。


「ま、まさか!」


 勇気がその理由に気づいた時、メグが目の前にテレポートしてきた。


「メグ!」


「邪魔はさせない!」


 メグのサイコキネッシスを間近で受けて、勇気はふっ飛んだ。


「お前!まさか!」


 勇気は、数メートル後ろに飛ばされたが、何とか空中で踏み留まっていた。


「そうよ!」


 メグの手に剣が握られた…氷の剣だ。空中にある水分を集め、武器にする。戦闘訓練を受けたミュータントが持つ能力だ。


「あたしが、目覚めさせたのよ!彼をね」


 斬りかかるメグ。


「何てことを!」


 勇気も剣を造ると、攻撃を受け止めた。


「この時代!いえ、すべての人間が、ミュータント因子を持っていないなんてあり得ない!何かの理由で、目覚めていないだけよ!」


 メグの剣を受け止めながら、勇気は絶叫した。


「その通りだ!だけど、自然に目覚めた訳ではない!無理矢理、目覚めさせた場合!今まで普通の人間だった肉体が、拒否反応を示すことは知ってるだろうが!」


 勇気の剣が輝くと、メグの持つ剣が砕けた。


「く!」


 メグは離れると、砕けた剣が槍になり、それを勇気に向かって投げた。


「どうして、そんなことを!」


 勇気は槍を、斬り落とした。


「ミュータントが、必要だからよ!」


 すぐに、メグの両手に新しい剣が造られると、槍を斬った為、下に振り切った体勢になっている勇気に斬りかかった。


「どうしてだ!」


 勇気は素早く、剣を下から振り上げると、 メグの二本の剣を受け止めた。


 細かく削れた氷の欠片が、地上に落ちていく。


「あたし達のご先祖様を産ませる為よ!」


 メグの言葉に、勇気は反論した。


「何を言っている!ミュータントは、この時代にいない!彼女が、ミュータントを産んだのは、偶然という奇跡だ!」


 勇気の言葉を聞いた瞬間、メグの瞳から涙が流れた。


「あなたは!あなたは!」


 メグの二本の剣が輝き、勇気の剣を斬った。


「な!」


 二本の剣が、勇気の肉体を斬り裂く前に、何とかテレポートで避けた。


「く!」


 勇気の額に、冷や汗が浮かんだ。咄嗟の判断ができたのは、訓練の賜物だった。


 少しメグから間合いを開けた勇気は、泣きながら自分を睨むメグの様子に絶句した。


「あなたは、何も知らない!知らされていない!あなただけが!知らない!」


 テレポートで、一瞬にして間合いを縮めたメグの攻撃を、勇気は受け止めずに、避けることにした。


「あなたは知らない!なぜなら、あなたが!」


 メグの攻撃は止まらないが、大振りになっている為、何とか回避できた。


 だけど、その必死さが、恐ろしい程の迫力を、勇気に伝えていた。


「恵美…」


 勇気は下唇を噛み締めた。


「あなたは!」


 メグは二本の剣を突き出し、突進してくる。その顔を涙でぐちゃぐちゃにして。


「あなたは、特別だから!!」


 メグの最後の絶叫は、勇気には届かなかった。


 メグの激しさを知った勇気は、避けながら罠を張っていたのだ。


 突然、メグの後ろの空間に穴が開くと、まるでブラックホールのように、その中へ吸い込まれていったのだ。


 これは、テレポート能力を応用した…空間飛ばしという技である。


 メグは、ここから大分離れた場所に飛ばされることになった。


 しかし、ミュータントが使う…テレポートも万能ではない。


 距離が遠い程、力を使うし、自分の能力以上の距離を移動することもできない。


 そして、この技は、自分を移動させることはできない。その代わり、自分ではない人物を遠くに移動させることができた。


 空間と空間を繋ぎ、穴を開ける能力は、場所を特定できないし、体力を急激に消耗する。仲間や子供などを、逃がす為に使う最後の技であった。


 仲間を逃がして、自分が犠牲になる。そんな技を使ったのだ。


「こ、これで…しばらくは、ここには来れない」


 勇気は肩で息をしながら、ゆっくりと地上に向って、下りて行った。


「待ってて…今、行くから」


 勇気は、睦美に向かって真っ直ぐに降下していった。



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