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決められた答え

 目を細め、月を見上げていた太田のもとに、森山が息を切らして来た。


「愛花!探したぜ。こんなところにいるんだもんな」


 森山が声をかけても、しばらく太田は、月から視線を外さない。


「愛花?」


 首を捻った森山も、上を見上げた。


「何があるって…いうんだ」


 しかし、肉眼では....上空で争う2人を見ることはできない。


「もう下校時間ですよ。速やかに、学校から出て下さい」


 見上げた格好の森山は、後ろから声をかけられ、そのまま首を後ろに倒した。


「あっ!」


 渡り廊下の入り口に立っていたのは、実習生だった。


「時祭先生!」


 森山は首を戻すと反転し、実習生に向かって、愛想笑いを浮かべた。


「あはは…。か、帰りますので、速やかに」


 森山は笑いながら、まだ見上げている太田の腕を取ると、無理矢理移動させた。


「愛花!帰るぞ」


 階段まで、太田を引きずる森山。


 太田は腕を引かれながら、視線を実習生に向けた。


 そして、こくりと頷いた。


 実習生も頷いた。


 そして、もう太田達をもう気にすることなく、上空を見上げた。


「なるほど…彼か」


 にやりと、口元を緩めると、見上げるのを止めた。


 それから、渡り廊下の手摺りにもたれると、


「ロマンティックだね」


クスッと笑った。


ゆっくりと周りを見回し、


「ここから始まったんだね。人とミュータントの確執が」


感慨深く…息を吐いた。


実習生の本名は、時祭ユウヤ。







「小説…って」


 あたしは、短編何作品か読んだ後、


「書けるんじゃないかな」


と呟くように言った。


「でも…こんなに上手くいくもんかね」


 少しため息をついた。


 あまり恋愛に役立ちそうにない。


 こんな恋をしてみたいけど…。


「こりゃあ〜妄想だな」


 サイトを閉じようとした時突然、電話が鳴った。


「わあ!」


 慌てた為、思わず…誰からか確認する前に、繋がってしまった。


「あっ!はい」


 携帯を耳に近付けると、微かに途切れるような声が聞こえてきた。


「睦美…」


 電波が悪いとかではなく、風の音がすごい。


 でも、何とか聞き取れた。


「メグ?」


 声でわかった。


「あたし…」


 か細い声が、メグの心情を現していた。


「どうしたの?」


「フラれちゃった」


「え?」


「あたし…フラれちゃった」


「ちょっと聞こえないよ」


 風の音が凄くって、 あたしにはまったく聞き取れなかった。




 遥か上空にいたメグは、一気に地上に向けて降下した。


 ほんの数秒で、北校舎の屋上に着地したメグは、改めて携帯に向かって話した。


「あたし…高橋君にフラれたの」


「ええ!」


 突然電波がよくなり、メグの声が聞こえたと思ったら、フラれたなんて…。


 ショックを受けていると、さらに追い討ちをかけるような言葉が、続いた。


「高橋君…。睦美のことが、好きなんだって」


「ええ!」


 予想外の言葉に、あたしはベッドからずり落ちた。


「だから…」


 メグはここで、一度言葉を切り…しばらく無言になった。


「メ、メグ?」


 数十秒後、メグはおもむろに話し出した。


「…だから、会って上げてほしいの…高橋君に」


「え?」


「悪いと思ったんだけど…。高橋君に、睦美のメルアド教えたから」


「え?メグ?」


「後で、メールが来ると思うから」


「メグ!どういうことよ」


「あ、あたし…」


 またしばし無言になった後、


「応援するから!睦美と高橋君のこと」


「ち、ちょっと待ってよ」


慌てるあたしを無視して、


「高橋君をよろしくね」


それだけ言うと、メグは一方的に電話を切った。


「メグ!メグ!」


 それから、あたしが電話をかけても、メグがでることはなかった。


「えええ―!」


 あたしは携帯をベッドにほり投げると、頭を抱えてうずくまった。


 メグの本心は知っている。どれだけ、高橋君のことを好きかも。それなのに、いきなり一緒に帰ることになって…フラれてさらに、親友である…あたしのことが好きだと言われた。


 今のメグの気持ちを考えたら、さっきの言葉は本心ではない。


 それなのに、あの子は。


 しばらく、考え込んだ後、


「もお!」


あたしは立ち上がると、携帯を引っ掴んだ。


 今すぐ、メグの家に行こう。


 そう決めて、部屋を出ようとした時、携帯が鳴った。


 メールである。


 それも、登録されていないアドレス。


 あたしは嫌な予感がしながらも、メールを開けた。


「高橋君!?」


 嫌な予感は的中した。






「フン」


 鼻を鳴らすと、切った携帯を閉じたメグは、屋上のフェンスの隙間から、下を見下ろした。


「時祭!」


 苦々しく、渡り廊下の手摺にもたれるユウヤを睨んだ。


「やあ」


 時祭ユウヤは屋上を見上げており、メグに手を振った。


 夜になり、静まり返った学校は、ユウヤの声を屋上に届けることができた。


「こっちに来ないかい?今は、生徒と教師のフリをやめてさ」


「チッ!」


 メグの姿が屋上から消えると、ユウヤの後ろに現れた。


「どうしても、お前がここにいる!」


 メグの手が輝き、ユウヤの背中に向けられた。


「別に、僕の勝手だろ?」


「ふざけるな!」


 メグの手から放たれたサイコキネッシスは、ユウヤを吹き飛ばすはずだった。


「な!」


 放った力は、真っ直ぐにメグに戻ってきた。


 自分のサイコキネッシスを喰らって、メグは手摺を突き破り、渡り廊下からふっ飛んだ。


 普通なら、落下するはずだが、空中で何とか浮かんで、止まった。


「超能力反射鏡を…背中にまでつけてるのか」


 驚くメグに、ユウヤは笑いかけると、


「僕が何の準備もせずに、ここに来たと思ってたのかい?」


「クッ!」


 メグは顔をしかめると、再び渡り廊下に着地しょうとしたが、空中で動けなくなった。


 いつのまにか…真下に、銃を持った実習生達がいたからだ。


 照準は、メグに向いている。


「今回の実習生は、全員…未来から来た者だ」


 両手をズボンのポケットに入れて、ユウヤ左肩を上げてみせた。


「貴様ら!」


 メグはユウヤを睨んだ。


 ユウヤは鼻で笑い、それから愛想笑いを浮かべた。


「二週間は、ちょうどいい。未来から、ここにいるにはね」


 メグは下にいる実習生達を無視して、ユウヤだけを睨み、言葉を投げつけた。


「何が目的だ!今回、あいつがやろうとしていることは、お前達も同意しているはずだ!」


「同意はしているよ。概ねはね」


 ユウヤは頷いた後、


「だけどね」


ゆっくりとポケットから、右手だけを出すと、上に向かって突き上げ、


「もっといいことを、思い付いたのさ」


一気に振り下ろした。


 それが合図になり、実習生達は銃を撃った。


「チッ」


 メグは舌打ちすると、テレポートした。


 メグが消えるとすぐに、実習生の1人が懐中時計に似た…レーダーを取り出した。


「追いますか?この時間には、ミュータントは2人しかいません。簡単に捕捉できるかと」


 女の実習生の言葉に、ユウヤは首を横に振った。


「いいよ。やめておこう」


「しかし、あの女がやろうとしていることは、我々の計画を……!」


 渡り廊下から飛び下りたユウヤは、女の目の前に着地すると、笑いかけた。


「心配しなくていいよ。彼女もまた…予定調和の中にいる」


 二階くらいの高さからコンクリートに着地しても、平気な顔をしているユウヤに、女は言葉を失った。


 ユウヤはただ笑いながら、


「彼女の行動は、彼らを深く結びつける。その時、運命は動く」


女の横をすり抜けた。


 そして、月を見上げると、


「この忌まわしい体の始まりを」


呟くように言った後、睨み付けた。


 だけど…すぐに、視線を前に戻すと、


「帰るぞ」


ゆっくりと歩きだした。正門に向かって。



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