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恋することに理由はない

 あたし達の町の上空で、そんなことが行われてる時、あたしは呑気に、ベッドの上で身をよじっていた。


 べ、別に…呑気って訳ではない。勇気の怪我も心配だし、メグもどうなったか…気にはなっている。


 だけど、何とも言えない感情が、あたしを覆い、行き場のない気持ちが、あたしの心を落ち着かせなかった。


 こんな時は、気分を変える方がいい。


 その為に一番いいことは、誰かと話すことだ。


 あたしは、枕元に転がっている携帯を引っ掴むと、仰向けのままメグの番号にかけた。


 だけど、繋がらない。


「はあ〜」


 ため息とともに、通話を切った。


 そして、天井の灯りに携帯をかざした。


 女の子なのに、飾り一つない…携帯。


 その飾りのない携帯を見つめながら、あたしはため息をついた。


 あたし自身みたいなこの携帯には、彼の番号が入っていない。


 きいたら、よかったけど、そんな暇なく消えたし。


 それに、なんか… 持ってるようには、思えなかった。



「あれは…多分…」


 あたしは腕が疲れてきたから、携帯をベッドの上に転がした。


「超能力って…やつよね」


 そのような力をまったく信じていないあたしが、何度も見た事実を考察的に考えても、あれは、超能力ってやつだと思えた。


「じゃあ…将来の子供は、超能力者になるのかな」


 っと、無意識に呟いた…自分の言葉に、あたしは凍りついた。


(えっ〜と、多分、妄想が飛躍し過ぎだし、その間にあるいろんな…楽しい出来事をふっ飛ばしていきなり、そこを想像する女の子はいないでしょ)


 ああ…自分自身に、突っ込みたい。


 2人で、どこか行くとか…さあ。


 改めて妄想を。


 と、想像しょうとしたけど。


 数秒後、あたしは頭を抱えた。


 そんな経験がない。


 想像するにも、参考になる知識がない。


 あたしはベッドから起き上がり、想像を膨らます為の恋愛漫画とかを探したけど、まったくない。


 しばらく、考えた後…あたしは携帯を手に取り、


「xxxだったかな」


仕方なく、ネット小説で探すことにした。






「恵美…」


 抱きつき、体を密着させるメグの行動に、勇気は何も言えなくなった。


 メグの気持ちは、わかっていた。


 だけど…。


「ごめん…」


 それを肯定してしまえば、今の自分を、ここに来た理由を否定することになる。


 勇気は目を瞑るとテレポートし、メグから離れた。


「勇気…」


 メグはしばらく虚空を抱き締めた後、少し距離をおいて浮かぶ勇気を睨んだ。


「どうして…この時間に来た!」


 勇気は叫んだ。


「時間の流れを逆行することは、どれだけ危険か!そして、過去に居すぎた場合、もう未来には帰れないんだぞ!」


「そんなことはわかっている!」


 メグも叫んだ。


「メグ…」


「そ、そんなことは…」


 メグは、ぎゅっと胸を抱き締めると、


「あたしはもう…一年くらいここにいる!だから、もう未来には戻れない!だけど、だけど…それでも…」


瞳から、涙を流した。


「許せない!」


 メグの手から、超能力の光が放たれた。




「流れ星!」


 地上で月を見上げていた子供が、叫んだ。


「ねえ!流れ星だよ」


 手を繋いでいる母親に、男の子が話しかけた。





「チッ!」


 超能力の矢を避けようと思ったが、一瞬でその威力を見切った勇気は、避けることを止めた。


 このまま地上に直撃したら、民家数棟は消滅する。


 勇気も手から光を放つと、矢を受け止めた。


 まるで、星が爆発したような輝きが一瞬、月の光よりも眩しく、地上を照らした。


「勇気!!」


 メグは絶叫した。


「あたし達…ミュータントが、本気になれば、人間なんて滅ぼせるわ!それなのに、どうしてなのよ!」


 心からのメグの叫びに、光の矢を相殺した勇気がこたえた。


「それは、してもはいけない!」


「どうして!」


「…我々、ミュータントは人間から生まれたから」


 そう言うと、勇気はメグのそばまで、飛んだ。


 空中で対峙する2人。


「わかってくれ…メグ。俺達は、生まれてはいけなかったんだ」


「どうして!」


 メグは涙目で、勇気を睨んだ。


 そんなメグの目を、見つめ返し…勇気は言葉を続けた。


「俺達が、生まれたことで、人類との戦いが始まった。もう五百年近く…俺達ミュータントは、人類と戦っている」


 勇気は月を見上げた。


「最初は、争う気はなかった。だから、我々の先祖は逃げ回り…月にまで移住した。だけど…人類は、月をも攻撃した」


 勇気の脳裏に、今見える月ではなく、半分近くに欠けた月がよみがえった。


 その月は、文字通り欠けていたのだ。


 人間のミサイル攻撃で、未来の月は破壊され…もう満月になることはない。


「逃げ場を失った俺達の先祖達は、人類と戦うことを決めた…だけど!」


 勇気は拳を握りしめた。


「その結果どうなった!地球に戻ったミュータントと人間の争いで、建物は消え、緑はなくなり…あれ程美しかった地球は汚れ、俺達ミュータントの子供達も、毎日戦わなければ、生き残れない世界になってしまった」


「だからと言って!」


 メグが堪らず、口を挟んだ。


「ミュータントが、いなくなったとしても!人間は人間同士で争うわ。この世界も平和に見えて、少し向こうに行ったら、人間は殺し合ってる!」


「そうかもしれない…」


 勇気は悲しげに笑うと、ゆっくりと降下していった。


「それでも…ここ五百年で、死んだ仲間の事を思うと…」


 勇気の目から、涙が流れた。


「ミュータントは、生まれてはいけなかったんだ!」


「勇気!」


「わかっている。俺達の中でも、徹底的に人間と戦うことを主張している者もいる。そして、何よりも…これからやろうとする事で、今…未来を生きるミュータントの存在は消えるんだから」


 勇気はそらした視線を、メグに向けた。


「俺は大罪を犯す!何人もやってはいけない罪…未来を変え、仲間を消す!」


 メグを見つめながら、一気に降下した。


「ごめん…メグ」


 流れ星より速く、地上に落ちていく勇気を、メグはただ…見下ろしていた。


し ばらくすると、体も自由になった。


 メグは、勇気の姿が確認できなくなると、真上の月を見上げた。


「綺麗…」


 月を見つめていると、自然と涙が流れた。


 自分の時代に見ることができる月は、ただ絶望しか感じさせなかったから。


 メグは涙を拭うことなく、嗚咽した。


「ううう…」


 自分の存在が、消えることを恐れてはいなかった。メグがここにいるのは、そんな理由ではなかった。


「あんたの意見に誰も、反論しなかったのは、あんたが特別な存在だから」


 勇気やメグが生まれた未来は、時の果てだった。


 ビックバンから生まれた宇宙は今も広がっているが、果てはある。


 時もまた…果てがあるのだ。


 未来が決まっていない世界。


 勇気達はそこから来た。


「勇気…あなたの行動が、あたし達をつくった。だから…」


 大粒の涙が、地上に向って落ちた時、メグは地上を睨んだ。


「あたしは許せない!あたし達の真実を知った時から…あたしは運命を許せない」



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