5
あ、そうだ。
「夜も遅いし、おじさんも一緒に待っててもいいかい?」
「ん、いらない」
えー、と心の中で思いながら頭をかいていると、少女はこちらを見て、
「おじさんいい人そうね」
と言ってきた。
信也は見た目に関しては人畜無害そうに見えるのである。もしかしたらそれとはあまり関係なく、人となりが少女の心を開かせたのだろうか。
ほ、っと胸をなで下ろす。
「この蝶を操っているのは君だよね」
「なんか、勝手に集まってきちゃうの……」
まだ幼いし、魔法をうまく扱えないのだろうと信也は思った。
「ちょっとおじさんの近くに来てもらっていいかい?」
眉根を寄せて嫌そうな顔をされた。
「ほら、この近くに人が来て、こんなに蝶々がいたらおかしいと思われるし。そうだ、コンビニでご飯買ってあげるよ、どお?」
少女は逡巡してから、しょうがないなあと言いながら近づいてきた。
お腹が空いていたのだ。
信也はしゃがんで少女に後ろを向いててと声をかけ、
背中に、
触れる。
公園を埋め尽くしていた蝶たちはひらひらと、どこかに飛び去っていった。
黒い花火がゆっくりと花開くかのように。
わあと感嘆の声を漏らしながら少女はそれらを見ていた。
「おじさん、すごいね! もしかして魔法使い?」
振り向いた少女は、やっと笑顔を見せてくれた。
「はっはっは、これでも大魔法使いなんだよ」
信也は褒められて嬉しそうに笑う。