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オレは貴族の女子高生。  作者: Cookie
2/4

黒い少年

 エルナント王国王都アルティミア。


堅牢けんろうな城壁、荘厳そうごんな正門、


幻想的なデザインの巨大な教会、


美しい建築物が多く優麗ゆうれいな街並み、


中央にそびえ立つ白き城塞、


歴史ある文化に彩られた王都アルティミア。


伝説の熾天使してんしの名を冠する都である。



 王の城『ヘブンズライドン城』の近くに


ハインツエッジ公爵の邸宅がある。


広大な敷地の庭園には


白薔薇が多く植えられている。



 馬車が邸宅の前に馬車が止まる。


フィリップが馬車を降りると


地面に赤い絨毯じゅうたんが敷かれていた。


邸宅の玄関まで敷かれており


絨毯の脇には大勢のメイドたち並んで出迎える。



 巨大な邸宅を見てフィリップは目を丸くした。



 「今日から貴方はわたくしの妹として


この屋敷で暮らします。」


エリザは真顔でフィリップに言った。



 「そんなの信じられません。


俺みたいな平民が貴族の真似事なんて無理です。


ましてや、女性の真似事なんてもっと無理です。」



 「心配いりません。


貴族教育はうちの執事であるこのセバスチアンが


貴方にしっかり施してくれます。」



 エリザに付き従っている執事は紳士的な所作で


フィリップの前に立った。


「フィリップ様、貴族の淑女の何たるかを


このセバスチアンが精魂込めて教育いたします。


わたくしの教育を会得なされば


王都の貴公子が


みんな貴方様にこぞって求婚してきましょう。」


セバスチアンはそうフィリップに熱く語ってきた。



 「は、はぁ。俺が女性なら玉の輿に乗りたいですが


男の俺は男には求婚されたくないです。」






 公爵の屋敷に入ったフィリップは


エリザに案内され、当主の部屋に入った。



 部屋の奥に座っている男性がいた。



 その男性はハインツエッジ公爵家当主の


ザッケリン・ハインツエッジだった。


筋肉が引き締まった偉丈夫で


強面で髭も立派に生えている。


フィリップを見た途端、


ザッケリンの表情がパァーっと明るくなった。


「おう! 君がフィリップか! 今日から我が娘よ!」


ザッケリンは椅子から立ち上がった。


そして、フィリップに駆け寄ると


フィリップを抱きしめ両頬にキスした。



 フィリップは頬に髭が当たる感触に不快感を覚えた。


「初めまして。・・・えっと、


あのぅ・・公爵様をどうお呼びしたらいいのか。」



 「水臭いぞ。御父上でよい。」



 「すみません。


貴族の方との心の距離の取り方に疎くて。


平民の俺が貴族様を御父上と呼ぶのが普通なのでしょうか。」



 「知らん。常識に囚われすぎていては大事はなせぬものぞ。」



 エリザがザッケリンに歩み寄り口を開いた。


「お父様、フィリップはまだ何も知らないのです。


ずっと孤児院で暮らしていて世情に詳しくもないのです。


お父様の発言に戸惑っても仕方ありません。」


エリザは自分の事は棚にあげた発言をした。



 「それもそうか。


フィリップ・・・いや、フィリアよ。


お前の本当の父はある高貴なお方だ。


その様子ではお前の母からは


何も聞かされておらぬようだな。」



 「俺が高貴な血筋って。


そんなわけありません。


人違いをなさってるんじゃないでしょうか。」



 ザッケリンは考え込む。


「人違いか。人違いが無いとは言わん。


その可能性は十分ある。


では、証人にお越し願おうではないか。


セバス! あの御方をここへお呼びしろ。」



 部屋の扉近くで控えていたセバスチアンが


「はい。旦那様。」と返事をして部屋を出た。



 「愛しき娘フィリアよ。


今からここへ来る御方はとても怖い御方だ。


くれぐれも粗相のないようにしておくれ。」


ザッケリンは不安な表情を浮かべていた。



 直後、ザッケリンの背後に黒い影が浮かび上がった。


「はぁ? 誰が怖いって? ッざけんなょ。」


部屋に突如、少年のような声が聞こえた。



 ドゴンッ!!! と鈍い音が突然、部屋に響く。



 ザッケリンの頭から顔を伝って血が流れ始めた。



 フィリップの目に七色に輝く木刀が映る。


突然、黒いローブを着た黒髪の少年の姿が現れた。


いや、そこにいた存在を認識したという感じがした。


いつ現れたのか、


この部屋に最初からずっといたのか、わからない。


フィリップは何が起こったのか理解できなかった。



 頭を抱えて床を、のたうち回るザッケリンの真横に


木刀を持った黒ローブに身を包んだ少年が立っていた。

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