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オレは貴族の女子高生。  作者: Cookie
1/4

公爵令嬢

 剣と魔法の国エルナント王国。


 

 その王国の王都に住む少年フィリップは


母子家庭に生まれ、6歳の時に母が亡くなり


母の親戚たちの家をたらい回しになった。


7歳のときに王都から遠く離れた村の


農業を営む叔父夫婦に預けられる。


叔父夫婦はフィリップを邪険に扱い。


フィリップは奴隷のような生活をしていた。



 フィリップ8歳の時に


近くの統一神教会の神父に


助けを求めて相談した。


神父はフィリップの親戚と話し合いを行い。


結果的にフィリップは村から近い町にある統一神教会の


孤児院に預けらることになった。


今年、14歳になったフィリップは


『14歳に達し、(エルナント王国は14歳で成人。)


成人したものは孤児院を


退院しなければならない。』という孤児院の規則に


則って孤児院を退所しなければならなくなった。



 孤児院はフィリップへの


就職の相談などはしてくれなかった。


途方にくれたフィリップは


退所期限までに自分で


職を探さなければならない。



 街の無料の就職相談所に通い始めたが


孤児のフィリップには条件が悪くてもいいからと


相談員に相談したが雇ってくれる就職先はなかった。


母方の祖父の家は小さな鍛冶屋を営んでおり


そこで雇ってもらえないか頼ろうと考えた。



 フィリップは退所期限を迎えて


わずかな荷物を持って孤児院を出た。


教会から渡された退所祝い金は銀貨1枚だった。


孤児院の前で途方にくれるフィリップの前に


馬車が止まった。


その馬車は『白薔薇』の紋章が


あしらわれた豪奢ごうしゃな造りだった。


白薔薇はハインツエッジ公爵家の家紋である。



 馬車から煌びやかなドレスを着た少女が降りてきた。


その少女は執事を連れてフィリップの前まで


緩やかな足取りで歩み寄ってくる。



 フィリップの前で立ち止まる貴族と思しき少女。


フィリップはわけがわからずに呆然としたが


平民であるフィリップは貴族への礼儀として


とりあえず膝をついた。


少女と執事がフィリップの目の前まで来た。


 

 「フィリップ、御立ちになりなさい。」


透き通るような声で少女はフィリップに言った。



 なぜ、自分の事を貴族が知っているのかが


フィリップには心当たりがなかった。


フィリップは言われた通りに立ち上がる。


目の前の少女は金髪に碧眼で


目鼻立ちが整った美しい少女だった。


フィリップは息をのんで見つめてしまう。



 「なぜ、俺の名をご存じなんですか?」


フィリップは貴族と話す機会など


人生で一度もなく、緊張した様子で


少女に問いかける。



 「そんなことはいいのです。


あの馬車にお乗りなさい。


お話はあの馬車でいたします。」


少女に馬車に乗るように促された。



 執事に荷物を預かると言われ


フィリップは言われるがままに預けた。



 3人が馬車に乗り込むと馬車が動き始めた。



 少女が口を開き話始めた。


「わたくしの名はエリザ・ハインツエッジといいます。」



 「はぁ。あ。俺はフィリップっていいます。」


 

 「それは存じております」


フィリップ、あなたは自分が何者なのかご存知なのですか?」



 「え、俺はただの孤児ですが。」



 「それだけですか?」



 「それだけです。」



 「そう、そうなのですね。」


少女はフィリップの答えに頷くと


馬車の外を見つめる。



 フィリップは少女が涙をこらえているように感じた。



 少女はフィリップに向き直ると


「ご苦労なさったのでしょうね。」


少女の目がなんだか潤んでいた。



 「まぁ・・・孤児なんで仕事が見つからなくて。


これからも大変です。」



 「その心配はいりません。


貴方は貴族としてわたくしと学校へ通って頂きます。」



 「・・・貴族?・・・学校?」


フィリップは少女が何を言っているのか理解に苦しんだ。



 「あなたは今日からわたくしの家の子になるのです。」



 「え?何を言ってらっしゃるんですか。


意味が全然わかりませんよ。詳しく教えてください。」



 「ごめんなさい。


まだ詳しい事情はこの場では御答えできかねます。


説明については我が家の屋敷で


お父様がなさってくださるでしょう。」



 「そうですか。


何か、そちらの勘違いか間違いかもしれませんし


事情をあとで詳しく説明していただけるのでしたら


助かります。」


フィリップは狐につままれたような気分になっていた。


フィリップはふと、頭の中にある疑問が浮かんだ。


「この国の学校って男女別々に通いますよね。


貴族の学校って男女共学なんですか?」



 「いいえ、共学の学校などございません。」



 「そうですよね。では、同じ敷地内に


別々の学校があるような形式なのですね。」



 「それも違います。


貴方はフィリア・ハインツエッジと名乗り


我がセントアルティミア女学院に通って頂くのです。」



 「は~~~!? あ、失礼しました。


俺は男ですよ!


女子校に通えるわけがないじゃないですか。」



 「ウフフ。そんなことはありませんよ。


気にしすぎです。」


 

 「そんなわけありますって!」



 「貴方にはこの国を変えて頂くという使命があります。


その使命の前にそんな事はささいな事にすぎないのです。」



 馬車は王都に向かって進んでいく。


フィリップの運命が大きく動き出そうとしていた。

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