日の差す水槽
「先生は、バカバカしくないですか」
強い硬質な陽が、白く満遍なく校庭に降りそそいでいるように見える。朝礼台の足元にしゃがんでいる痩せぎすの男は、少し答えを迷っている風だった。
「そう思うこともあるしい、思わないこともある。けど―」
そこで男は、言い訳がましく聞こえるのを恐れて一瞬言葉を切った。
「けれど、それはたぶんだれにでもあることだ」
校庭では、三十余人の子どもたちが元気にケイドロをして遊んでいた。みな、溌溂として美しい顔をしている。男と並んで支柱に腰かけていた少年は、案外普通のところに落ち着いたな、と思った。あいつらは、もっと変わったことをするかと思ったけど。
「でも、一般的なことなんてないじゃないですか?」
「そのセンテンスは矛盾してるよ。少なくとも論理上は」
「……でも、論理はすでに一般だ」
少年は、手に持っていた何枚かの四ツ葉のクローバーを散らした。長い間握られていたせいで、色あせ、しなびている。
男が薄く青い空を仰ぎ、それにつられて少年も上を見やった。彼らは目を見交わさなかったが、それが彼らのいつもの遣り方だった。
「先生の遣り方は異端でしょ」
と、少年がつぶやいた。
「そうだね」
男はぼんやりしていた。少年もそうだった。
奥の木陰に、誰かが回り込んで隠れた。