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君の影に。-僕と約束の妹-  作者: メロ
1st.第1話「女の子は、未知で出来ている」
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チャプター4-5

 屋上に青二がやってきた。ヤァ! ヤァ! ヤァ! ……はぁ。

「なぁ、真一。 ちょっといいか?」

「ダメだ」

「なんだよ〜、減るもんじゃねぇし、いいじゃねぇか〜」

「気が磨り減る。 だから、却下だ」

「親友を探し当てたオレに免じて、な?」

「いや、何がだよ」

 そもそも探し当てたのはお前の勝手だろ。別に、探してほしかった訳じゃない。寧ろ、その逆……とまでは言わないが、免じるような事はこれっぽっちもない。

「なぁ、頼むよ?」

 うへぇ……上目遣いなんかするなよ……。

「分かった、分かったから……ちょっと離れろ」

「やったぜ! それでこそ親友っ!!」

「で、何だよ?」

「その絵、誰の為に描いてるんだ?」

 さっきまでのおちゃらけな雰囲気はいずこへ。真剣な顔をした青二が僕の絵を指さして聞いてきた。

「誰かじゃない……僕の為だよ」

「そっか」

 気のせいかもしれないが、僕の返事を聞いた青二はどこか満足げに見えた。



 太陽が真上に来る頃。お腹の虫が泣いたので、一旦作業を中断して、昼食をとる事にした。

「てか、サボるんなら俺も誘えよな〜」

「はぁ……何で分かったんだよ」

「へへっ、それはな」

「待て」

 得意げな顔をする青二を制止。そこは心の底から自重してほしいと思うので言葉を遮らせてもらう。

「お前の聡明な頭脳は世に出すべきじゃない。 お前の為にも……僕の為にもな。 だから、言わなくていい」

「そうか、そりゃ残念だ」

 いや、残念ではないからな。

「それにしても意外だよなぁ」

「それは同感だ」

「ん?」

 青二に合わせ、隣でタコ型に切ったウインナーを頬張る紫へ視線を移すと首を傾げ不思議そうな顔をされた。何故、そんな能天気でいられるのか分からない。お前が屋上の鍵を開けた張本人だというのに。


 ──朝の予鈴が鳴った時、

『真一。 そろそろ時間だよ』

『分かってる』

『教室、行かないの?』

『あぁ。 これを夕方までに仕上げて、見せたい人がいる。 だから、今日はサボる』

『…………』

『悪いけど、担任にはテキトーな理由で休むって言っといてくれ』

『なら、私もサボる』

『私もって。 別に、紫はサボらなくたって』

『屋上前の踊り場で待ってて』

『いや、だから』

『待ってて!』

『わ、分かった。 待ってる。 いや、待たせていただきます!』

 珍しく語調が強い紫に圧倒され、言われた通り待つ事に。

『で、どうするんだ? まさか、ここでコソコソ描くのか?』

『ううん。 ここだと見回りが来てバレる。 だから、こっち』

 さも当たり前のように屋上のドアを開ける紫を前に開いた口が塞がらなかったのは言うまでもない。紫曰く、美術室を利用すると聞いた時点でサボるのを予見し、屋上の鍵を開けておく事を企てていたそうだ。鍵の入手方法の詳細については秘密。ただ一つだけ言えるのは管理が甘く、すり替えるのは簡単だったとの事。だからって自分の家の鍵とすり替えるのはどうかと思う。

 そして、屋上を開け、バレる前に鍵を返せば見事今の状況の完成だ。


「まさか信号無視すらやらなさそうな石見がそんな大胆なコトするとはなぁ」

「僕も驚いたよ」

「子龍一心これ胆なりってか。 かっけぇな」

 青二がそんな事を言うから、つい某人気アクションゲームのようなお洒落中華風の衣服に身を包み、長槍を手にした紫を想像してしまう。紫の顔つきは、やや凛々しいよりだし、風になびくポニテは正に龍の髭……本気でコスプレをしてSNSに写真をあげたらバズりそうだ。まぁ、紫に限ってそんな事する訳ないだろうけど。

「ところでよ、なんで屋上なんだ?」

 確かに、僕も何でわざわざ屋上でサボる事にしたのか気になっていた。別に、少しの間用具を拝借すれば学校にいる必要はなかった。

「空が近いから」

 某クイズ番組の司会者のように間を溜めたりせず、あっさり真相を話す紫。相変わらず紫の言う事は分からない。

「どうしたの?」

「いや、どうしたもこうしたも……いつもの石見クオリティだよなぁ」

「紫、どうして空が近いのが理由になるのか教えてくれ」

 だが、この時ばかりはその理由が気になって仕方なかった。考え込むようにしばらく間をおいた紫は空を見上げて呟く。

「……空の色は変わっていく。 ここに来れば、それがよく分かるから」

 その時の紫は、何かを懐かしんでいるように見えた。それは、まるで遠い故郷を思い浮かべているかのように。

「そうか。 変わるのがよく分かるから、か」

 そして、どういう訳か。それを聞いた僕は今の紫の気持ちが分かるような気がした。

「ほーん。 つまり、絵の役に立つってことか? というか、前にも来たことあるみてぇな口振りだな」

「うん。 あるよ」

「なぁにぃっ!? どうやって!?」

「美術部の顧問に空の絵を描きたいって言ったら許可してくれたよ」

「マジかよっ! 簡単過ぎだろっ!」

 青二は大袈裟に騒いでるが、僕はそこまで驚くような事じゃないと思う。寧ろ、納得がいった。屋上の鍵の保管場所を知っていたのも、空の絵を描いていたのも、そういう事だと。

「なぁ、紫。 それって、二十一日の土曜日か?」

「うん。 そうだよ」

 じゃあ、あの時都ちゃんが見かけたのは紫だったのか……なんとも不思議な巡り合わせを感じるな。本当に。



「……よし、完成だ」

 放課後を告げるチャイムが鳴り響く頃、最後の一塗りを終え、絵は完成した。

「やったな! 真一!」

「お疲れ様」

「二人ともありがとな。 でも、喜んでいる暇はないんだ」

 辺りを見渡すと練習に使った大量の画用紙に画材道具が散らばっている。それに使い終わったパレットも洗わなければいけない。

 本当は今すぐにでも約束の場所へと向かいたいところだが、ここを片付けずに行くのは僕の良心が許さない。授業をサボったり、校則を破っている事には目を瞑る都合のいい良心だが、許さない。許さないったら許さない。

 今の時刻は十五時半過ぎ。恐らく都ちゃんが着くのは十六時頃。ここから、あの場所まで大体二十分程で着く。だから、片付けをしていく余裕はある。

 だが、都ちゃんが僕の予想より早く着くかもしれないし、片付けているところを教員に見つかりサボりを咎められて時間をロス。最悪、待ちぼうけさせてしまうかもしれない。

 とどのつまり、急ぎかつ慎重に行動しなければならない。

「……悩んでも、どうにもならないか。 なら」

「行けよ。 今すぐにな」

「なっ!? 青二、お前何言って」

「ここはオレがなんとかする。 だから、さっさと行け」

「でも、お前一人にやらせる訳には」

「なーに、ここを片付けて鍵を閉めるぐらい朝飯前だ」

「……もう夕方だけどな」

「おいおい、かっこつけてる時にそういうこと言うなよ。 オレだってなー」

「今度、ちゃんと礼をする」

「……へっ、いいってコトよ。 オレにとっても都合がいいしな」

「ん、どういう事だ?」

「これ全部好きに使ってもいいよな」

「あぁ、別にいいけど」

「なら、ありがたく使わせてもらうぜ。 一世一代の大舞台の為にな」

「お前、まさか」

「おうよ! 今は勝者であるオレのターンだ! 盛大にやろうぜ!」

「あとで、ちゃんと結果教えろよな」

「おうとも!」

 青二と拳をぶつけ合わせる。

 いやはや、こういうのは青春もののドラマでしか見た事がなく、熱苦しくて、ちょっとバカにしていたが、実際にやってみると……悪くないと思う。

「あと、石見も一緒に行けよな。 共犯者なんだから」

「うん」

「それとな──」

 青二に片付けを任せ屋上を後にする。

 別れ際、青二は紫に何か言っていた。僕には聞こえないように。

 一体、何を言ったのかは分からないが。紫はとても満足そうだった。

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