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一週間後、人類は滅亡します。  作者: 風深きこ
2/5

□2日目①

昨日は結局何もできずに終わった。

いくら違和感を感じていたとは言え、いきなり人類が滅亡するとか言われても信じられず、呆然とするだけだ。

「これからどうすればいいんだろう・・・」

深夜はぼんやりと呟いた。

「いや、そんなの決まってるよな。みんなと相談しないと」

途方もない困難に、一人ではなかなか立ち向かえないけれど。

仲間と力を合わせれば。きっといい未来が待っている。

「まずは、みんなに連絡するか・・・」

ふっ、と息をついて、スマホを手にとった。

この代の"守人"は、"時守"の深夜、"水守"の美波の他に4人いる。その全員がこの数年のうちに"守人"になったばかりの新米で、その中では一番年長の深夜がこの代のリーダーとなっている。そのため、"守人"全員を召集するのは深夜の役目なのだった。

「もしもし、深夜だけど。昨日ニュース見た? ・・・そうそれ、そのことでみんなで集まりたいんだけど、今日の昼間いける?・・・」

あと一週間で人類が滅亡するなどと言われているのに学校を優先する必要はないだろう。程度の差はあれど、"守人"の使命は全員の心に染みついていて、今日・水曜日の昼間に集合することが決定した。



9時30分。近くの小学校で2時間目開始のチャイムが鳴るのが聞こえる。

ふと窓の外に目をやると、そこには人は誰もいなくて、ただ庭の草木が風に揺れていた。

あの植物たちはこの地球に惑星が衝突するなんていう途方もないことを知っているのだろうか。それとも何も知らずに過ごして、何も分からないうちに死んでしまうのだろうか。どちらにしても彼らにできることはきっと何もないのだろう。残された時間を、ただただいつも通りに過ごすことしかできないのだろう。

「おーい、深夜〜」

「どうしたんだよ、いきなりぼけっとして」

いきなり耳元で発せられた声にビクッとして、思考の中から現実世界に引き戻された。

「悪い、ちょっと考え事してた。じゃ、始めようか」

気を取り直して集まった"守人"たちを見回す。

集まった場所は時守家のリビング。6人の"守人"がテーブルを囲んで座っている。

深夜の右隣には"水守"美波。この二人は18歳の高校3年生で最年長だ。左隣には高校2年の"火守" 煌、その隣に高校1年の"風守"凪沙。さらにその隣、深夜の正面にいるのは中学3年の"地守"陸、そして美波の隣には陸と同学年で最年少の"木守"咲穂が座っている。

「みんなは今日なんで集まったのかわかってるよな?」

深夜が最初に問いかけると、

「・・・昨日発表された、人類滅亡の予報でしょ?」 凪沙が答える。

「あれをなんとかして防止しよう。人類を守るために。・・・なんて、できるわけないじゃない。ほんと、深夜って綺麗ごとばっかりだよね。私たちの能力、全然残ってないんだよ? いくら他の人とは違うことができるとは言っても、惑星の衝突なんて防げないに決まってる」

冷めた目で深夜をまっすぐ見つめて、凪沙はそう吐き捨てた。

深夜は何も反論できなかった。彼自身も、惑星の衝突を自分たちに防ぐことができる気はしなかった。「何言ってんのよ凪沙。そんなこと言ってたら何もできないでしょう? その不可能に見えるようなことをなんとかして解決するのが私たちの役目なんだから」

美波が凪沙を非難するように言った。

「いいよ、そっちでなんとかして。私はこれ以上何も言わないでここに座って聞いてるから」

凪沙は取り合わず、頬杖をついて窓の外へ視線を移した。それを見てふっと煌が口だけで笑い、変わらねえな、と呟く。

そこで、それまでおどおどと状況を見守っていた咲穂がか細い声を発した。

「あ、あの、深夜くん。それで、深夜くんは何か解決するためのアイデアとかはあるんですか?」

「うーん・・・。あるといえばあるんだけど、それが実際にできるかは分からない、っていう感じかな・・・。ごめん、曖昧で」

「あるの?! さすが深夜だね! 言ってみてよ、笑わないから」

美波が興奮した声を出し、何も言わないといった凪沙がちらりと深夜のほうに視線を向ける。

「でもそんなにたいしたアイデアじゃないんだよ。・・・小さい頃、ちょっと聞いた記憶があるんだけど。俺たちの祖先って、大陸の真ん中らへんで能力があることに気づいたって言われてるよね。その場所が、ある泉の前だったんだって。それから能力を練習するときはよくその泉に行ってたって。だから、その泉に何か俺たちの力を補助するものがあるんじゃないかと思うんだ。それを使えば俺たちでも衝突を防ぐ力が得られる、かもしれない」

「へぇー・・・」

「あ、それオレも聞いたことある! 父さんが言ってたよ、かなり力が上がるんだって」

陸が言った。

「でもそれで衝突を防ぐほどの力は得られるのか? いくら力が上がるとは言っても」

「それでも今の俺にはそれだけしか思いつかない。煌は他に何かあるか?」

「いや、思いつかないな。とりあえず深夜の案を採用するしかないんじゃないか?」

煌は、なんで俺が、と言いたげに面倒臭そうに答えた。

「他のみんなは? 何かあるか?」

何も反論の声はない。

「じゃ、そうと決まったら早く行こう。今日のうちに各自その場所について調べて、出発の準備もしておく。明日の早いうちには日本を発てるように」

深夜は5人の顔をぐるりと見回して告げた。

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