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一週間後、人類は滅亡します。  作者: 風深きこ
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□1日目

小説家になろう初投稿です。わからないことだらけで、変な部分もたくさんあるかもしれませんが、よろしくお願いしますm(__)m

  一週間後に自分がどうなっているのかは誰にもわからない。

  いつも通り働いたり、学校に通ったりしているかもしれない。身体中に癌が広がっていたことがわかって余命宣告されているかもしれない。地震や火事で家がなくなったり、死んだりするかもしれない。通り魔に襲われて殺されるかもしれない。

  どんなに健康な人でも、病人と同じようにいきなり死ぬ可能性はある。

  -一週間後に自分がどうなっているのかは、誰にもわからない。




  □1日目


  10月3日。その日はとても平凡な一日だった。


  いつも通りの時間に起きて、遅刻せずに学校に着いて。数学、古典、日本史、英語表現という辛い午前中をこなし、昼休みをはさんで眠気と闘いながら残りの2時間を過ごした。


 やっと6時間目が終わり、時守深夜は足早に学校を出て家へ向かった。


  来週の火曜日からは中間考査が控えている。深夜が所属する、特別強豪なわけでもないバドミントン部はもちろん休みで、面倒だと思いながらも家に帰ったら何の勉強をしようかと考えていた。


  家までは徒歩20分。最初は人通りの多い通りを行くが、だんだん人が少なくなってゆく。


  今日も通りには同じ高校生がたくさん歩いていて、大人の姿もちらほら見える。いつも通りの光景、のはずなのだけれど。


(何か、違う・・・?)


  漠然と違和感だけが湧いてきた。


  この違和感の正体は何だろう。どこか頭の隅で嫌な予感がする。足は変わらず動かしながら横目で辺りを観察してみる。


  高校生たちはいつも通り何人かで喋りながら歩いている。会話の内容まではわからないけれど、表情は明るくて、暗い話をしているわけではなさそうだ。


  一人で歩く高校生は音楽を聴いていたり、スマホをいじっている人もいる。


  高校生に混じってちらほら歩く大人たちはたいてい何もせず、家路を急いでいる。


  特に何もいつもと変わらない気がするけれど・・・。強いて言うなら少しだけ、いつもより-解放感、があるような。


  (何でだろう・・・)


  いつもとの違いははわかったものの、その原因はわからない。そもそもいつもとの違いが解放感で正しいのかもわからないのだが。


  そうこうしているうちに人通りの少ない道に入ってゆく。ここから出会うのはもう身内と言ってもいいくらいの関係の人々だ。


「あれ、深夜。おはよ」


「あぁ、美波。久しぶりだな」


  水守美波とは生まれたときからの付き合いだ。深夜の方が数ヶ月前に生まれて、どちらも親が働いていたから同じ人に預けられて育った。高校で離れて会うことは減ったけれど、中学校まではずっと同じ学校で、家が近い事もあってよくセットで扱われていた。そこは面倒ではあったけれど、性別は関係なく気の置けない仲である。


「ねえ、今日ちょっとおかしくない? 何でかな、微妙に違和感がして。そんなにいつもとは違わないんだけど、妙に引っかかるんだよ」


  深夜ははっとして美波を見つめた。


「美波もか? 俺もそう思うんだ。朝は気づかなかったけど、帰ってくるときに何か変な感じがした。俺はその違いは、開放感? みたいな感じのものなのかなって思ったんだけど」


「やっぱり深夜も!? よかった、じゃあ気のせいじゃないんだ。でも私はどっちかっていうと、不安を感じたよ。顔いっぱいが不安っていうわけじゃないんだけど、隅っこにちらっと覗く気がした」


「不安と開放感、か・・・。パッと見、関連はない気がするんだけどな」


「そうだよね・・・。何でだろう? お父さんならわかるかな・・・」


「そうかも、しれないな。じゃあお互い帰ったら聞いてみようか」


「そうだね、そうしよう!」


  美波は少しだけ表情を明るくして去っていった。


  それからは誰とも出会うことなく、家に着いた。二階建てのごく普通の一軒家だ。


「ただいま」


「おかえりー」


  母親の暁音がリビングからひょっこり顔を出す。靴を脱ぐのももどかしく、深夜は声を張り上げた。


「母さん、今日外出た? 何かおかしいと思ったことなかった?」


「今日はどこにも出てないのよ〜。特におかしいこともなかったし。どうしたの、そんなに慌てて」


「そうか・・・。実は、帰ってくるときに何となく変な感じがしてさ。さっき美波に会ったんだけど、美波もそう言ってたんだ」


  変なこと、と聞いて、暁音の表情はすぐに引き締まった。厳しい声で尋ねてくる。


「どんなことなの? 具体的には?」


「俺は歩いてる人の中にちょっと解放感がある気がしたんだ。でも美波は不安を感じたって言ってた。でも母さんは何も感じてないのか・・・」


「私が感じてなくても別に不思議じゃないわ。私はもう"時守"は引退したんだから」


  深夜ははっと絶句した。暁音はまっすぐ深夜の目を見つめていた。


「わかっているでしょう。あなたが"時守"を引き継いだ時点で私の力はほとんどなくなっているのよ。そうでなくても今の"時守"はあなたなんだから、あなたたちが解決すべきよ」


  深夜は何も口に出せなかった。暁音の言うことは正しくて、何も反論する事はできなかった。何より暁音は深夜のことを思ってそう言っていることは明らかだった。


「・・・わかったよ」


  ただそれだけ呟いて、深夜は自分の部屋へと向かった。


  * * *


  何百万年も前、現在の人類の祖先はアフリカに誕生した。彼らは数が増えるにつれて次第に大陸の外側へと分散し、それぞれ独自の生活を送り、独自の文化を持った。このため、もともと一つの集団だった人類の中に外見や思想にさまざまな違いが出てきた。ある一族は北欧に行き、寒冷な気候から色素が薄くなっていった。またある一族はアジアを生活の地とし、独自の宗教を生み出した。


  その中に、どこにも住みつかずに世界中を転々として生きる一族がいた。彼らは決して一つの場所に留まらず、ある時は他の一族のところに宿を借りたが、たいていは厳しい野宿の生活だった。


  そんな生活をしているうちに、彼らは自分たちには他が持たないある能力があるということに気づいた。


  雨を降らせる。植物を育てる。地面を平らにして歩きやすいようにする。


  最初はそういう単純な力だった。しかし、鍛練を重ねるうちに、彼らの能力のバリエーションはだんだん増えていき、応用も効くようになっていった。


  上空の気温を操れば、氷を降らせたり、雷を落とすこともできる。植物を素早く育てて自在に操ることができる。地面を隆起させて敵に攻撃することができる-。


  力の幅が広がるにつれて、その内容は攻撃性を増していった。


  力を手に入れた者はそれだけでは満足できない。彼らもその例にもれず、能力を駆使して他の族に戦いを挑むようになった。結果はもちろん、百戦全勝。もともと定住地を持たなかった彼らは、どんどん支配する地域を増やしていく。勝てば勝つほど欲望は膨れ上がり、能力もそれを裏切らず、彼らはついに世界最大の大陸の半分を制覇するまでになった。


  どこまでも続く大陸に飽きた彼らは大陸の外、海に浮かぶ島国に目をつけた。それは小さな国だったが、豊かな金・銀と高度な技術があり、とても繁栄していた。しかし武力はさほど評判になっておらず、彼らはその国くらいはすぐに落ちると踏んでいた。


  そして。


  その国の力を軽く見ていた彼らは足元をすくわれた。


  その国はとても団結力があり、国中でまとまって彼らに対抗してきた。油断していた彼らは反撃できず、老人から赤子まで、一族のおよそ半分が亡くなった。


 その国の人達はとても心が広かった。戦いに破れたことで住む場所を奪われた生き残った者たちに、その国にとどまって暮らすよう勧めた。生き残った者たちはそれに感謝し、その国の隅に家を建てた。その周辺に暮らしていた人々は彼らを受け入れた。


  彼らは戦いでの敗北を教訓にし、その力を皆のために使うようになった。寒いときには火を灯して暖をとった。日照りが続いたら雨を降らせた。台風が来たら暴風雨を抑えた。


  助け合いの生活が続き、数十年も経つと、周囲の人々は彼らの出身のことを忘れていった。しかし彼らは決して戦いのことを忘れず、子孫にもずっと伝えていった。


  その後、彼らはその能力から、人々に"守人"と呼ばれるようになった。一族はいくつかの家に分かれ、火を扱う者は火守、水を扱う者は水守などと、能力の種類にちなんだ名字を持った。家の中で最も力の強い者がその代の"守人"となり、たいていは子どもが16歳から18歳の間にその役目が引き継がれた。


  時代が進むにつれて、"守人"の一族も他の人々との混血が進んでいった。血が薄まるたびに能力も少しずつ失われていき、現在の"守人"の力はかなり制限されている。


  * * *


  「はあ〜・・・・・・!」


  自分の部屋に戻った深夜は思いっきりベッドにダイブした。


「どうしよう・・・。これはきっと、大変な問題なのに。今代だけで解決しないといけないなんて」


  つぶやいて、起き上がった。


「電話・・・、」


  とりあえず美波に電話しようと思って、スマホを手にとった。と、


 ルルルルル〜♪


  タイミングよく美波から電話がきた。


「もしもし、美波? どうだった、お父さん」


『何にも言ってくれなかった。もう自分は"水守"じゃないんだからって。深夜は?』


  やっぱり、とため息をつく。


「こっちも。そんな、これは今代だけで解決できる問題じゃない気がするんだけどなぁ・・・」


『ほんとだよ。ルールにこだわってる場合じゃない気がする。直

感だけど・・・』


  美波は声を曇らせた。


  と、そのときだった。


「深夜! ちょっと降りてニュース見て! 早く!」 暁音の焦った声が聞こえた。


「ごめん、母さんが呼んでる。一旦切るよ」


『わかった。じゃ、またね』


  通話を切る。暁音があれほど慌てた声を出すのは珍しい。何があったのだろうか。


  急いで階段を降りると、暁音がテレビに釘付けになっていた。


『-繰り返しお伝えします。気象庁によると、今日を含めて一週間後の10月9日月曜日、地球にこれまで知られていなかった惑星が衝突し、このまま地球にいれば人類は滅亡するだろうとのことです』

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