プロローグ
──人生に疲れてしまった。
暗い出だしで申し訳ない。
この男、月曜日の朝から満員電車に押し込まれうつ状態にあるのだ。
休日明けだというのに、死んだ目をした多くのサラリーマンがのる列車は間違えても心地良いとは感じないだろう。
憂鬱な月曜日。
会社、出勤の文字を見ただけで吐き気がする。
はて、子供の頃の夢は何だったか。
宇宙飛行士?新幹線の運転手?消防士か?警察官!
だんだん近づいてきた気がするぞ。そうだ、俺は人を救うような仕事をしたかった!
楽しかったなぁ。あの頃は。
小学校、いつも一緒にやんちゃしてたアイツらは元気だろうか。もしかしてこの電車にいたりしてな!あぁ、楽しくなってきた。
そんな気持ちをかき消すようにアナウンスが入る。
「次は〜〇〇駅〜〇〇駅〜。」
世間で「社畜」と呼ばれる奴らのひとりである男は、スーツを着直し東京の街へと繰り出す。
全ては生活のため。
人を救うような仕事がしたかった。
そう、ヒーローになりたかった。
世界を救う、ヒーローに。
しかし大人である彼は知っていた。本物のヒーローは存在しない。かっこいい仮面とヒーロースーツに身を包み、爽快に笑いながら強きを挫き弱きを助く。そんなものは存在しない。
社会人。サラリーマン。
大人である彼は会社に、自分の部署に足を踏み入れこう言った。
「おはようございます!すみません遅刻しました!」