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俺の超常バトルは毎回夢オチ  作者: みやちゃき
第四章
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第一部 四章 「ダイヤモンドは似合わない」

 四章


 臀部でんぶに違和感を感じる。


 膨らんだ肉を何かがチクチク刺すような。

 激痛が走るわけではないが出来ることなら感じたくはない。


 少し昔話を。

 俺が小学生でまだはじめが幼稚園児だった頃。

 母に買い物を頼まれ子供の足で十分ほどの場所にあるスーパーマーケットまでお出かけをしたんだ。

 二人にとってはじめてのおつかいだった。


 蝶々を追いかけていたら迷ってしまったなんて下手なことはせず、まぁ道草はいくつか食ったものの無事に目的地まで着き、レジのおばちゃんに「偉いねー」なんて褒められながら会計を済ませ、杖をつくおばあちゃんに「二人だけで来たの?」なんて驚かれながらビニール袋に商品を仕舞う。


 どちらも俺が「そうだよ! すごいでしょ」と話しているうちに初が財布から小銭を出したり、よいしょよいしょと袋に詰め込んでくれた。


「家に帰るまでがお使いだからな」と妹に忠告しながら出口へ向かい自動扉が二人を感知して開く。

 そこに広がる光景、大粒の雨が強風に吹かれ横殴りに降り注いでいた。

 しなる街路樹、タクシーに駆け込むサラリーマン。

 それは来た時に比べるとまるで別世界のように姿を変えていた。


「おにぃちゃん……」ロリはーちゃんがどうしましょ、と揺れる瞳でぎゅっと袖を引く。

「はじめ……」ショタまーくんは、そっと妹の小さな頭に手を置き、爽やかな口ぶりで同じセリフを吐く「家に帰るまでがお使いだぞ」その目の色は対する幼女とは真逆に嬉々としていた。「へ、うしょでしょ?」と戸惑う妹の手を引いて少年は大雨の中に歩を進めたんだ。


 健全な男子諸君なら分かってくれるだろう。雨って、なんかテンション上がんね? 皆もあるだろ? 傘持ってるのにあえて差さない俺カッケーみたいな。

 周りは忌み嫌う雨を逆に受け入れちゃう俺まじアウトサイダーみたいな。

 大慌てなのに動じない俺まじクルセイダーみたいな。


 しかも大雨だぜ? 当時の錬真少年の胸は、はち切れんばかりに高揚していた。

 中二病患者はつくづく意味が分からない生き物なのだ。


「すげーーーこれが『十二神の水遊び』と書いて『エンドレスアクアライズ』と読むアレか!」

「おにいちゃんはやく!」


 暴風雨を総身で浴びながら、俺は高笑いをして帰路を大股で闊歩していた。

 そんな俺に見兼ねた初はえーんと泣き出してしまった。

 流れる涙は雨と混ざって区別がつかないのだが、その表情を見て少年にも多少、後悔の念が込み上げて来た。

 俺は妹の元まで行き「はじめ、クツぬごっか」とにこやかに提案した。

 身を屈み、コーナーで差をつけられるカラフルな靴と靴下を手に持ち裸足になる。


 それを見て初も、もうどうにでもなれという気持ちで兄にならう。

「じゃあお家まで競争しよっか」と二人、走り出したんだ。


びしょびしょに濡れたものを脱ぎ捨てた開放感。

 「おにーちゃんこれ気持ちーね!」と水溜りを踏みしめる妹の顔にもう涙はなかった。

 「だろー?」と誇らしくげに答えて。家までついて玄関を開けたところで母にみっちり怒られたのだけれど。

まぁ買って来た食材もびしょ濡れだったしね。


 はいおしまい。


 何が言いたかったかというと、その時に小さな足裏で感じたアスファルトの感触と、只今お尻で感じるものが似ているなということ。


 まぁ要するに座り心地が悪いのだ。

 って。なんで、どこに座っているんだ俺は。


 暗闇だった視界に色が戻る。自分が瞼を閉じていたということさえ忘れていた。

 まずその地面に視線を落とす。納得した。そこは剥き出しの地面。

 小さな小石とか尖った砂の粒にちくりと違和感を覚えたんだ。


 それにしてもどうしてこんな地べたに。

 見上げると正面にそびえ立つ灰色の建造物。


 どこだここ、と胡乱うろんげに眺めてしまうのも無理はない。

 だって今日入学式があったばかりなのだ、それを母校だと気づくのに時間を要してしまって当然だろう。

 あと三年も月日が流れればすぐ分かるようになるはず。


 とすると、今自分が座り込んでいるこの地面は学校の校庭、グラウンドということになる。


「おそいっ!」


 後頭部に衝撃が走った。勢いでそのまま地面に倒れ込み、両手でとっさに受け身を取りながら、殴られたのだと遅れて分かる。上から降って来た声には聞き覚えが。その主は聖本麗ひじりもとうらら

 そうだ、さっきまで俺は彼女と一緒に居たんだ。


「何すんだよ! ひじり––––」


 ガバリと体を起こして、彼女の名前を呼ぼうとした。

 彼女の苗字を、「聖」と書いて「ひじり」と読むと教えてもらった彼女の苗字を。


 だが続く言葉は、その出で立ちにかき消される。

 俺と数歩距離を置いて側に立つ少女、彼女の前で横になるのは今日で二回目だ。

 そう、一回目は四階の一番角の教室。


 親切心から彼女を起こそうと肩に伸ばした手を払われそのまま床に倒れたんだ。

 現在の状況と全く同じである。少年を見下ろす少女。


 本当は自分より少し低い身長。

 けれど作り物のように小さな顔とスラリ整ったスタイルのせいで自分より背が高く錯覚する。

 制服のスカートから白く伸びる脚は細くもなく太くもなく健康的。

 かかと落としは……暴力的な彼女のことだ、きっと得意に違いない。


 整った顔立ち。


 切れ長の目、高い鼻。凍てつくような眼差し。

 冷たい眼光を向ける彼女が柔らかな笑顔を隠し持っていることを既に俺は知っている。

 形のいい鼻、桜色の唇。体型といい外国人の血が混ざっているのだろうか。


 あとで聞いてみよう、そうだ分からないことがあれば彼女に尋ねればいいのだ。

 それくらいの距離には近づけた気がした。


 美しい容姿だ、改めて見てもそう思う。

 綺麗とも可愛いとも違う、何か彼女だけの言葉があるような気がした。俺はまだそれを見つけられていない。


 そう、そこにいたのは初めて見た時とほとんど変わらない、聖本麗がいたんだ。


 けれど俺は彼女の苗字を呼ぶのをやめてしまった。それは目前に立つ少女が聖本か分から口を閉じたんじゃない。

 恥ずかしながら見惚れてしまったんだ。


 先ほどまでツヤのある黒髪だったはずの彼女の長髪は、色を銀色に変えていた。

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