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俺の超常バトルは毎回夢オチ  作者: みやちゃき
第三章
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第一部 三章 「箱庭のロマンス」

いや、人じゃない。

 彼女らは、エルフだ。


 ヒスイの双眸そうぼう、黄金に輝く肩までの髪、すらりと背が高く、きりりと鼻が高いが、一つひとつの線は丸く我々日本人が愛着を抱きやすい外見をした人外。エルフの女性たちが物珍しそうな表情で影からこちらを見つめていた。


 何も知らなければおどおどと、しずしずと様子を伺っている彼女らを見てもその正体はすぐに判別できないだろう。あくまで人に近い容姿をした彼女らは一見には欧州美女と変わらない。典型的な鋭い耳も衣のフードに隠されてしまっている。


 俺が一発でエルフだとわかったのはもちろん、昨日の映画の内容通りに物語が進んでいるからだ。


 彼女らの登場により改めて自分が見ている夢が「ナンバー戦争」そのものだと確信する。そして主人公の鉄真てつまになれたことへの喜びが込み上げ、先の展開に期待が湧き上がっていく。


 だから、決して。


 エルフら彼女がはだけた格好をしていることなど存外、関心なかったし、膨れ上がった胸元を凝視したりもしなかった。エルフに下着を着用する文化はあるのだろうかと思考を巡らせたりもしなかったし、その肌の感触を想像するなんて事もしなかった。

 強いて言えば、白く伸びる太ももを申し訳程度に隠す薄い布に対し「風よ、吹け」と胸元で指を重ねて願っただけだ。


 そう、心の中で強く念じているとその祈りは届いた。


 強いうなり声が島に轟いたかと思えば、吹き付ける強風により辺りの木々がしなるように揺れる。

 木の葉飛び散る中、パ、パンツは⁉ いやその奥は⁉ と血眼に彼女らの下半身をめ付けるが、その付け根、捲れ上がった布の中はぼんやりとモザイクがかかったようで、何度となく鎧の上から目をこすっても視界はぼやけていく。


 もう一度強く風が吹くとエルフたちはどこかに身を隠してしまい、代わりに空から両翼をはためかせた巨大なドラゴンが目の前に降り立つ。


 お前こんなにデカかったのかというのが率直な感想。

 スクリーンで見るよりも実物の方が大きく洒落た格好をしていた。

 さすが人気アニメのドラゴンさん、実物はなんだかオーラがある。


 大地を揺さぶるような慟哭を上げると、しゅーと息を立てこちらを見つめる。蛇に睨まれたカエルよろしく、その迫力にたじろぐ事しかできなかった。


 いくらこれが夢だとわかっていても。


 そうだ、夢だぞ。心中で再確認するように確かめ、ゴクリ唾を飲み込む。


 確かこの次の展開は、そうだ。本当はこのドラゴンは人間が化けた姿なんだ。

 竜族というドラゴンに変身できる一族で、現実世界と、こちらの異世界を、行き来していて、鉄真の素質に感づいた彼は、その能力を発動させるために、覚醒させるために、わざと大空から突き落としたんだ。


 映画の内容を思い起こしているとぐらり、立ちくらみがしてその場に倒れこんでしまった。

 地面についた自分の手の指の数が三本にも六本にも見える。


 鉄真を、突き落としたドラゴンは、その後のストーリーで彼の師匠になるんだ。血のにじむような数々の鍛錬を乗り越えて彼は、鉄真は、日本中の子供たちを、熱狂させ、夢中にさせる主人公に、なるんだ。


 立ち上がろうと、膝に手をつき呼吸を整えるため深呼吸をひとつ。

 それでも、霞む視界の奥、そびえるドラゴンは二重に見えたまま。


 そうだ、鉄真は、初めから完璧な主人公じゃなかった。

 全ては、全てはこのドラゴンに化けた師匠の一言からだった。


こいつが、こいつが鉄真を主人公に、ヒーローに変える。


 戸惑う鉄真に宣告するんだ。彼の運命を、彼の未来を、彼の才能を、進むべき道を。


 途切れそうな意識。

 真白に近づく視界。


 そんな中、神話や幻想にしかいないドラゴンの口元に白い煙が広がるのが分かった。

 ゆっくりと鋭利な牙が生え揃う口が開いていく。


 始まりは、こいつの一言なんだ。


 そうだ、言ってくれ。

 鉄真に告げたように、俺にも。


 彼と違ってこの俺は、美藤錬真みとうれんまは準備だって出来ている。

 俺ならきっとうまくやってみせる。


 どんなチート級の強敵だって正義の名の下、フルボッコにしてやる。学は無い浅い人間だが哲学書とか聖書とか啓発本とか読み漁って、百年生きているような不老不死にも上から説教かましてやる。


 こんな、こんな最適な人間はいないんだ。


 虚空を見つめて「やれやれ困った」なんて言わない。

 普通の男の子に戻りたいです、なんてデビューしてから言わないから。

 待ち望んでいたんだ、こんな世界を。求めていたんだ、こいねがい焦がれていた。


 だから、だから。


 その一言を、ください。




「……………………ん」


 ゆっくりと、かすかに顎が揺れて目前の巨龍は言葉を紡いでいく。


「……ん………………ちゃん」


 なんだ、早く。もう、意識が、飛びそうだ。


「ちゃん…………お……い……ん」


 ああ、もう。ダメだ。




「お兄ちゃんっっ!」

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