ただの物
「な、何を言うんですか?」
ルシアは焦ったように言った。
「だから、雄賀君の剣教えてあげる代わりにパーティに入れてって言ってるの。どう?いいでしょ?」
メイアは何故入りたいんだろうか?まぁいいけど。
「別にいいんじゃないのか?この人は強いんだろう?誰だかの弟子って言ってたろ。俺も剣の使い方教われるなら歓迎するよ。」
「別に悪いとは言わないけど…」
ルシアは何故か少し嫌そうだ。
「じゃあ決まりね?早速行きましょ。」
「どこに行くんだ?」
「パーティ登録に決まってるでしょ!」
俺たちは店を出た。だいたい村や街には集会所があるらしい。規模は変わるけど。集会所に着き入ると、何か問題が起きていた。
「てめぇがやったんだろ!!」
「んだと?やってねぇよ!てか、お前が俺のやったんだろ!」
男2人が喧嘩をしている。周りの客やスタッフが止めに入るが無駄なようだ。すると男達の体が光りだした。どうやら加護で決着をつけるらしい。
「へっ!俺のタックルで謝らせてやる!」
あんな体格の奴にタックルくらったら死ぬな…喧嘩の相手も体格いいけど。
「やってみろボケ!返討ちだ!」
男達がぶつかる寸前俺の隣に居たはずのメイアが姿を消し、男達の前に行き顔と顔の間に鞘を付けたままの剣を出していた。
「やめろ。何があったか知らないが…喧嘩などやめろ!」
口調が変わったメイアは目が深い青から深い赤に変わっていた。男達は喧嘩をやめて集会所から出てった。
「さ!パーティ登録しましょ!」
メイアが明るく言うが集会所の皆んなは固まっている。
「メイア…お前どうし…」
俺がメイアにいろいろ聞こうとしたらルシアに口の前に人差し指を立てられた。
「雄賀。それは聞いちゃダメ。あなた殺されちゃうわよ。」
ルシアは俺にしか聞こえないくらい小さな声で言った。鳥肌が立つくらいびびった。
パーティ登録を済ませ、メイアに連れられ村の外の森に入った。一応パーティメンバーになったので皆んな呼び捨てにすることに。(俺は前から呼び捨てしてたけど…)少し歩くと小さな小屋が見えた。
「あそこが私の家よ。」
メイアはその小屋を指差した。小屋に着くとメイアの元に1匹の小さなモンスターが近づいてきた。何というかちょっと大きなリスだ。尻尾が3つあり耳が少し長い。
「そのモンスターは何だ?」
「この子はヤタっていうの。私の召喚獣なの。」
召喚獣?また新しいな。
「召喚獣。それは人間1人1人が練習すれば必ず習得できる召喚魔法でよびだせるモンスターよ。一体呼び出したら他のは出てこないからパートナーモンスターとも言われるわね。」
ルシアが説明してくれた。パートナーモンスター…欲しい!
「私のヤタは召喚獣の中でレアなメリードロンゴってモンスターなの。」
メイアは自慢げに話した。
「ルシアも使えるのか?てか俺も使える?」
「私は使えるわよ。でも使ったことがないけど。雄賀も練習次第ね。」
練習か〜できればいいな〜
「ま、雄賀はその前に剣の修行だけどね〜」
メイアが背中を叩いてきた。そしてメイアが小屋に入り何かを持って出てきた。
「はい。その剣貸して。」
メイアにそう言われ剣を渡す。そしてメイアは俺に他の剣を差し出した。
「雄賀はこれで修行ね!」
メイアから差し出された剣を持つととても重く一瞬で地面に体を持ってかれた。
「お、重い…無理だろこれ…」
「ハハハー!ランガレルアで一番重いクラック鉱石でできてるからね」
クラック鉱石?重すぎる。そして修行が始まった。
「まずは持てるようにならなきゃね?腕立て1000回10セット!それが終わったらその剣を背中に付けて森を5周!頑張って!」
メイアはそう言うがさすがにきつすぎませんか?
「いや、無理だろ…」
するとメイアがクスクス笑う。
「誰も加護とかエナジー使っちゃダメなんて言ってないよー」
「加護?エナジー?」
あまり使い慣れない加護やエナジーを使えと言っても無理です。
「あれ?加護とか使い方よくわからないの?雄賀他人間?」
「はい。」
「そかそか。じゃあそこからだね。加護は頭で使いたいって意識して心を集中すれば使えてエナジーは体全体に広がる感じ!」
エナジー適当か!とりあえず精神統一してエナジーの使い方のコツをつかもう。
「んーーー」
難しい。もう2時間は精神統一してる。ルシアは切り株でお茶を飲んでるし、メイアはヤタとどっかいくし…
「ルシアどうすればいいんだ?」
「コツなんてわかんないわよ。適当にやればできたもの。」
ダメだ適当じゃできねぇ。
「どこか体の一部にエナジーを集めてみなさい。」
体の一部。少しずつ少しずつ右手に流す。
「お?!なんか力が右手ある気がする!」
「それを体全体に流すのよ。」
それから3日ほどエナジーの練習が続いた。
「よーし!だいぶ使えるぞ!」
やっとエナジーの使い方がまともになり、重い剣も何とか持てるようになった。でもそれでも重いけど。
「じゃあ1日目に言ったメニューだね。」
俺は固まった。そして約1週間地獄の日々が続いた。いろいろなメニューをこなすうちに筋力やエナジーの量、なんと加護も増えた。いろいろ加護はあるがどうゆうのかは知らない。
「1週間経ったけどどう?そろそろ最後の修行だね。森の奥に大きな木があるからそれに傷をつける。それが最後だ!」
メイアは大きな木を指差した大きくてここからでも見える。
「ルシアと私もついてくからよろしく〜」
「わ、私も?」
ルシアが驚いている。早速出発の準備をして歩き出した。後ろにルシアとメイアが付いてくる。
10分くらい歩いていると何か違和感を感じた。
何か空気が変わったような?
「ルシア〜何か変じゃないか?」
そういい後ろを向くとルシアとメイアが話をした状態で止まっていた。何してるんだ?と、思ったがよく見ると近くの川も流れが止まり風が無く、モンスター達も止まっていた。そして気づくと俺も動けなくなっていた。
(何だ?体が…動かない?)
俺はルシア達を見た状態で固まっていた。何も音がない。すると急に後ろから土を踏む音が近づいてきた。ザクザクと音がする。それは人らしきものだった。俺の横を通り過ぎルシアの前まで行き、まず固まったメイアを横になぎ倒した。装備をつけていて男か女かわからないが、痩せた体型で黒い装備に包まれている。そしてその人物はポケットからドクロのマークが入ったナイフを取り出しルシアの首を斬りつけようとした。
「ヤメロォォオォォォオオオ!!!!」
声が出た。体が自由になった。黒の装備のやつと俺しか動いていない。黒の装備のやつはこちらを向かずに話しかけてきた。
「今動ける奴がいるとわな…面白い。今日は止めとくか。」
そいつはしゃがれた声で言った。多分男だ。
「お前は何者だ!」
俺がそいつに言い、まばたきした瞬間やつは消えた。
「あれ?」
いつの間にか後ろにやつはいた。俺の喉にナイフも突き立てていた。
「何者か?ふははは…」
そいつは笑うと俺の耳元でこう言った。
「魔王」
そしてそいつは消えた。止まっていた全てが動き出し、俺は地面に座り込んだ。
「どうしたの?雄賀大丈夫?あれ?メイアも」
「イテテ…何だよもう。」
ルシアがこちらに向かってくる。
俺は恐怖で動けなくなった。ただ口を開けて息をしているただの物のように。