ミグダル・エデル
ソラリス・東部の町ミグダル・エデル
レンガ造りの家が立ち並ぶ。
川沿いには、パブやレストランが並んでいる。
(外国っぽい雰囲気だな……行ったことないけど)
車の中から景色を眺め、洸は思った。
クラウスを貴族街の屋敷まで送り、メルキオール旅行会社へ帰還。
「会社って言っても、知り合いの店を買って改装しただけです」
小さい会社でしょう、とユーシスは苦笑い。
「い、いえ、そんなこと……」
洸は、首を横に振った。
裏の車庫から出て来たセリカは
「お疲れ様でした。すいません、これから恋人と会う約束がありますので」
失礼します、とセリカは踵を返した。
「こ、恋人……」
大人だなぁ、と頬を染めた洸を見て
「彼女より、一個下の可愛い女の子ですよ」
「え?」
「性格は最悪ですが。まあ、セリカちゃんは優しいから」
ユーシスの言葉を聞いて、洸は目を丸くする。
つまり、セリカの恋人は女の子。
「ま、ま、まさか……セリカさんは、オカ……マ」
あの豊満な胸はーーまさかの筋肉。
「ああ、セリカちゃんは女性ですよ」
ユーシスは頬を掻く。
「セリカちゃんの実家は、有名な魔女の血筋ですから。魔女の婚姻に、男は厳禁。もしも関わろうものなら」
男として大事なモノを失います、とユーシスは言った。
「なぜか、予想できました」
それこそ、本当のオカマになりかねない。
「さて、コウくん。これからのことですが、役所で事情を話せば保護をしてもらえると思います」
最低限の生活費も支給されるでしょう、とユーシス。
「それに、気に入った仕事があったら……」
「あ、あの……こ、ここでは、ダメですか」
「うちの会社に? 確かに人手は足りませんけど」
「泉でのユーシスさんの言葉に……感動したんです。その、本当にクラウスさんのこと救ってくれましたし……俺には、ユーシスさんに借りがあります」
だから恩返しがしたい、と洸は言った。
(ああ、今までで一番話したかも……すごい疲れた)
こんなに、誰かの為に役に立ちたいと思ったのは始めてだ。
もし、ダメなら大人しく言われた通り役所に行こう。
ユーシスは薄っすら笑みを浮かべ
「いいですよ。あ、でも最初は見習いということで」
「ほ、本当ですか!?」
こうして、神城洸は見習い社員としてメルキオール旅行会社で働くことになった。