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旅行会社メルキオール

羽瑠斗(はると)は、本当に優秀ね」

母がよく褒めていた。

「洸、お前は才能がないんだ。兄さんの邪魔はするんじゃない」

兄と正反対の自分に、父がよく言っていた。

それは学校でも同じで

「いいか、貴様は負け犬だ」

嗤う教師に、クラスメート。

洸が最終的にたどり着いた答えはーー黙っていればいい。

引きこもれば、傷つく必要もない。

そんな生活が続いていたある日。

海外へ旅行中だった両親は、金目当ての強盗に襲われた。

あまりにも、あっけない最後だった。

それを聞いた時、洸は悲しむどころかむしろホッとした。



♦︎♦︎♦︎


「ううっ」

洸は、薄っすらと目を開いた。

「あ、起きた」

女の子の声。

「そうだ、鳥……喰われ」

混乱している洸に

「寝ぼけてるの?」

紙コップに入った冷たい水が、頬にあてられた。

自分は、生きている。あの鳥は諦めて去ったのだろうか。

薄汚れた車の天井を見て

「ボロ車……」

洸が言った。

「中古なんだから仕方ないでしょ。水飲んで、スッキリするわよ」

ツインテールの勝気な瞳の少女。

言われた通り、洸は水を一口飲む。

「ねぇ、あんたアビスから来たんでしょう?」

どうやら、ソラリスの人間からは向こうの世界はアビスと呼ばれているらしい。

「……」

状況が状況だ。

もう簡単に信じられない。

警戒する洸を見て

「ごめんね、何か警戒させちゃって。私は、セリカ」

旅行会社メルキオールの従業員です、と名刺を渡す。

(まったく読めない……)

言葉は通じるのに、文字はまったく違う。


「あなた名前は?」

命の恩人なんだからそれくらいはいいでしょ、とセリカ。

「……神城洸」

「カミシロ……コウね。じゃあ、コウくんね」

セリカは頷くと

「今、社長がお客様を観光に連れて行ってる最中だから。もうちょっと、待ってて」

「……観光?」

「うちは、お客様の要望を確実に叶えるのがモットー。吸血狼(ディアベル)って珍しい魔物がこの近くに住んでるみたいなのよ」

金持ちの考えることはわからないわね、と肩を竦める。


「まったく見つからないではないか」

「警戒しているのかもしれません。今日は、ここにテントをはります」


戻ってきたユーシスとクラウスを見て

「あ、戻ってきた」

セリカが手を振った。




















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