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お土産をもらいました

「クラゲが、音楽に合わせて踊るの。それでね、それでね」

嬉しそうに話すアンナに

「喜んでいただけて、私たちも嬉しいです」

「海神様の像の前まで、お客様を案内するのも久しぶりでしたから」

観光案内をしていた女官たちが答える。

「たいしたものではありませんが、こちらをお持ちください」

帰り際に、巫女から宝箱を渡された。

(なんだか、RPGの最後のダンションにありそうな宝箱だな……)

そう思いながら、洸は両手で宝箱を抱えた。


上昇する海底エレベーター。


「……今にも止まりそうな音がしますね」

「降りる時もこんな感じだった。やっぱり、定期的にメンテナンスする業者がいないとアトランティスとの行き来には不安があるわね」

セリカの言葉に

「そうですね、巫女様たちも機械には詳しくないようです」

何かいい方法があれば、と洸は考える。

「わたし、返ったらパパにお願いしてみる」

パパはけっこう顔が広いから何とかしてくれるよ、とアンナが言った。

「マイム商会の社長なら、いい技術者を知っているでしょう」

頷いたユーシス。

アンナは、床に伏せているセーレの頭を撫でる。

「だって、アトランティスに行けないのはもったいないよ」

「アンナちゃん、なんていい子……」

目を潤ませ、感動するセリカ。


「ユーシス社長、小包から何か出てますよ」

洸に指摘され

「いけません、今夜のおやつが」

「おやつって……」

そういえば、人魚を倒した女官たちにお願いしてもらったものだ。


洸は、チラリと覗く。

持って帰りやすいように細かくされた人魚の下半身。

小包から見えていたのは、足の部分だった。

「これはエコってやつです。ほら、もったいないでしょう」

「アンナちゃんの言ったもったいないとは……方向性が違うような気がします」


♦︎♦︎♦︎


浜辺に戻って来た洸たちは、巫女からもらった宝箱を囲む。


「何が入ってるのかな」

「きっと、すごいお宝よ」

目を輝かせるアンナとセリカ。

「わふー」

たいして興味がないのか、セーレは欠伸をしていた。

「とりあえず、開けて見ましょうか」

宝箱に手をかけたユーシスに

「待ってください……これは、玉手箱に似ている気がします」

洸が言った。


アビスに伝わる亀を助けた若者の物語を説明。


「で、開けると中から白い煙が出ておじいさんになるんです」


若者が竜宮城に行ってる間に、地上では時が経っていた。


「ま、まさか私たちがアトランティスに行ってる間に五十年!?」

動揺するセリカに

「わたしたち、おじいさんとおばあさんになるの?」

不安そうなアンナ。

「ま、まさか。コテージの様子も変わってませんし」

落ち着きながらも、ちょっと焦るユーシス。

「……」

そんな人間たちを横目に、セーレは尻尾を器用に使って宝箱を開けた。


しかし、中から煙は出てこなかった。


宝箱に入っていたのは、海の青を宿した石ーーオリハルコン。


『アクセサリーによく使われる石です』

心配ないですよ、とテレパシーでセーレが洸に伝えた。

「これは、アンナちゃんへのお土産だよ」

「いいの?」

戸惑うアンナに

「アンナちゃんが、アトランティスのことを信じていたから俺たちは行けたんだ」

洸が微笑む。

「ええ、それがいいでしょう」

「帰ったら、お父さんに自慢できるわよ」

ユーシスとセリカも頷く。


「ありがとう、大切にするね」

嬉しそうに、アンナが言った。









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