海上コテージ
「すみません、勝手に……決めてしまって」
頭を下げる洸に
「いえいえ、ボートを借りれたのはコウくんのおかげですよ」
ユーシスは言った。
「そうそう、こうして海を眺めながら食事も出来るしアハハハ」
酔っ払っているセリカを見て
「ま、まさかルームサービスでお酒を……」
セリカさん未成年ですよね、と洸。
「これは、お茶でーす。ひゃはは」
ユーシスは頬を掻きながら
「まあ、雰囲気酔いってやつでしょう」
「あ、あのお兄ちゃん。ボート探してくれてありがとう」
アンナからお礼を言われ
「い、いや……俺は」
「コウくん、こういう時はどういたしましてですよ」
お礼を言われるのも悪くないでしょう、とユーシス。
「そう……ですね」
照れながら、洸は言った。
♦︎♦︎♦︎
「……眠れないの?」
夜の海を眺めているアンナに、洸は声をかける。
「この海の下に、アトランティスがあるってママが言ってたの。あのね、信じてもらえないかもしれないけど……ママは、アトランティスから来たんだって」
海で溺れていたテオを助け、アンナの母は一目惚れしてしまった。
そして、陸で暮らすようになった。
「パパはアトランティスなんて……多分、子供の妄想だと思ってる」
(……鋭い)
最近の子はよく見ているな、と洸は思った。
「お兄ちゃんは、信じてくれる?」
アンナに問われ
「……俺は、アビスから来たんだ」
ソラリスとは別の世界。アンナは驚いたが、静かに耳を傾けてくれていた。
「誰も調べてないだけで……別の世界は、確かに存在している」
ソラリスがあったんだ。
「……アトランティスも、きっとあるよ」
だから明日調べてみよう、と洸はアンナに語った。
「ふふっ、お兄ちゃんて面白いね」
「ええ!?」
その光景をコテージと浜辺を繋ぐ橋から
「……あの小娘、イチャイチャと」
帽子を深く被った小柄な少女。
「お客様、ご注文のミネラルウォーターです」
「そこに置いてください」
マリリンが運んで来たグラスを、少女の横のテーブルに置いた。
「そろそろ戻ろう」
「うん……きゃあああっ」
アンナの右足を、魚の鱗でおおわれたような手が掴む。
そして、そのまま海の中へと引きずり込んだ。
「アンナちゃん!!」
その後を追って飛び込んだ洸を見て
「いけない」
少女も後を追って海へと飛び込んだ。




