ボートを探して
照りつける太陽。白い砂浜。
海底都市アトランティスが存在すると噂されるクリティアス海岸。
ミグダル・エデルから車を北に走らせて、一時間の距離。
「ああ、この暑さはよろしくない」
「あ、熱い……」
屍食鬼のユーシスと、引きこもりニートだった洸にこの日差しはキツイ。
「お兄ちゃんたち、大丈夫?」
「まったく、うちの男どもはなさけないわね」
扇情的なエメラルドグリーンのセパレートな水着のセリカを見て
「セリカさん……魔女ですよね?」
豊満な胸から、洸は頬を赤くして目を逸らした。
「魔女だからって、暗い部屋で妙な薬を調合してばかりじゃないわ」
「そ、そういうものですか」
ミネラルウオーターを飲み干す洸に
「……コウくん、私から血を補給しておいてください」
ユーシスが声を掛ける。
「え、でも……」
「貴方に血を与える程度なら、平気ですよ」
「……いただきます」
ユーシスの腕から、洸は血をもらう。
やっぱり、不味い。だが、暑さは少しはマシになった。
海岸のあちこちには、アトランティスの遺跡の一部と思われる柱や石碑。
夢中になっているアンナとセリカ。
その間に洸とユーシスは、ボートを借りるため「ドルフィン」という店に向った。
「悪いが、ボートは貸せない」
店主のおじさんの話によると、最近事故が多発している。
「……困りましたね」
「アンナちゃん……船に乗るのを楽しみにしてました。俺、他の店にも聞いてみます」
洸の前向きな意見に
「分かりました。二人には、私から事情を話しておきましょう」
ユーシスは頷いた。
♦︎♦︎♦︎
「えーと、ボートを貸してくれそうな店……」
「ナオキ、捕まえてごらんなさい」
褐色の美女と
「待ってくれよー、マリリン」
その後を追いかける細身の男性。
「ウフフ」「アハハ」と、ギャグ漫画を見ているかのように洸は呆然とした。
それに気づいた男の方は
「少年には刺激が……ってお前」
「確か……走れるニート」
互いに見覚えがあった。
ソラリスに捨てられた初日ーー転んだ時、追い越されたのを洸は覚えていた。
それは、どうやら相手も同じだったらしい。
「ニートは訂正してもらおう、オレはここでコテージを経営すると決めた」
命の恩人マリリンのために! と強く意気込む。
「ナオキ、素敵よ」
「どうしていいか分からず、浜辺で彷徨っていたオレをマリリンが拾ってくれたのだ」
オレたちは運がいい、とナオキは洸の肩を掴む。
「あの時は、見捨てて悪かった」
「仕方ないですよ……俺だって、走れたら同じことしました」
「で、何か探してるのか?」
ナオキに聞かれ
「あの、ボートを貸してくれる店を探してます」
洸は答える。
「そうか……よし、うちのコテージ使ってくれたら、ボートはタダで貸してやる」




