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プロローグ

俺は今、文房具店に日記帳を買いに行っている最中である。


俺が買いたい日記帳が販売しているのは、県内にはもう一つしかない。


いままで書いてきた日記帳15冊が全部同じものを使っているので、ここで別の日記帳で日記を書くのは、なんか違う気がする。


なので遠いところに店があるので行くのが少し億劫だが、不思議と苦痛は感じなかった。


そんなこと考えながら、スマホの地図アプリをみると、どうやら公園を突っ切ると目的地へと早く行けるらしい。


公園だなんて久しぶりだなと思いつつ、公園を横切るコースへと変更する。


なかなか自然あふれる大きい公園で、すこし横を見ると、小さい少年と少女、おそらく小学2年生から3年生ぐらいが遊具で遊んでおり、子供たちとは反対側を見ると30代くらいの男性がランニングをしている。


なかなかいいところだなと思いつつ、ふと前の方に視線を戻すと、一つの桜の木が俺の視界を飛び込んできた。

 

別にどうってことないただの桜の木である。


しかも時期的にはもう夏に入るくらいの時期なので桜の花なんかとうに散っていて、青々しい葉が太陽を求めるかのごとく、のびのびとしている。


ただ、この桜を見ているとあいつと約束したあの日あの頃を思い出す。


そして、自分ではどうしようもないくらいの自責の念に駆られてしまう。


4年前の二十歳の時、どうして俺は約束の場所に行かなかったのだろうか。


あの日あの時に約束の場所に行けば彼女が通り魔に殺されることもなかったのだろう。


日をまたぐまで、俺なんかを待っていなければ彼女は今生きていたはずだ。


もしあの時に戻ることができたならば……。


もう過ぎ去ってしまったことは巻き戻すことはできない。


いくら反省したところでしょうがない。


とりあえず、この公園をさっさと通り過ぎてしまおう。




公園を抜け、住宅地の中を通ると、その中の一角に目的地である文房具屋に着いた。


むかしながらの店という感じで、この区域だけ時代から取り残されたのではないかというただ住まいだった。


中に入ると、店主であろうかんじのよいおばあさんがひとりレジのところに座っていた。


「いらっしゃい。見かけない顔だね。今日は何を買いに来たんだい?」


「はい。この種類の日記を探していまして、この日記はここでしか販売されていないそうなんですが、ありますか?」


そういいながら、俺はバックの中から一冊の日記を取り出した。


「随分と古い奴をつかっているね。ちょっと待ってな」


重い腰を上げながら、確かここら辺にあったかなといいながら店内を探し出す。


俺は探してもらっている間、暇なので店内の様子を見る。


店内の入口付近には紙風船やけんだまなどのおもちゃがあり、少し奥に行くと、鉛筆やシャーペン、その横には、ノートを種類別に分類されている木製の棚があり、壁を見ると昭和の初めごろではないかと思われるポスターが貼ってあった。


しばらく店の探索をしていると、


「この種類だろ。お前さんのさがしているものは」


おばあさんがゆっくりとした足取りで近づいてきて、手渡してくれた。


「あんたの日記、随分きれいにあつかっているんだね。そうやって物を大切にしていると、物も喜ぶものなんだよ」


にこにこしながらいうおばあさんに俺はすこし顔をしかめた。


「物が喜ぶですか?おばあさん面白いことを言いますね」


「物ってさ、大切にしていたり、感情をこめて書いていると嬉しがって思わぬ恩返しをしてくれるものさ」


その言葉に思わず苦笑しているとおばあさんが、


「ほれ。お前さんには聞こえないのかい。恩返しをしたいっていう日記の声が」


さずがに何を言っているのか分からなかったが、この人には何か聞こえるのかもしれないと半分冗談で

なにをいっているのかと聞いてみる。


「お前さんの日記がね、「君が後悔したあの時に戻してあげるよ」って言ってるね。ほら日記を開いてごらん」


何を言っているんだと思いながらも、あの約束の日にちのページを開くとまばゆい光が本からあふれ出し、俺を包み込む。


光で周りが見えなくなると同時におばあさんの「どうだい私の言ったとおりだろ」という声だけがその空間に響き、そして何も見えなくなった。










 


小説家になろうではずっと読者でしたが、みなさまの作品を見て自分も書いてみようかなと思い、初めて小説を書きました。完結を目指して頑張りたいと思います。

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