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第3話 第四次スーパーアルティメットギガンティック世界大戦 開戦

いよいよ、戦争へ向けた日々がスタートします。

 時間は残酷だった。

 壁にかかった時計はAM5時ちょうどを指していた。

 

「・・・・やっぱり、夢じゃなかったんだな。・・・・結局一睡もしてないや。」

 

 あれから一睡もできずに、ただ夢が終わるのを待ち続けた。

 時計が1秒1秒時を進めていくのが怖くて仕方が無かった。


 しかし、これでもうハッキリしてしまった。

 これは・・・紛れも無い現実。

 夢なんかじゃなかった。


 辛くて泣いてしまいそうなのを必死で耐えた。

 泣いてしまえば、全てが崩れる気がした・・・。


「・・・・。集合は6時だったっけ・・・。いかないと・・。」


 軽く朝食を取り、着替えてから、昨日と同じホールへ向かう。


 周りの景色も、全然頭に入ってこない。

 暑いのか、寒いのかもわからない。

 どこか心ここにあらずといった感じで俺はただホールを目指した。


「おっと、失礼。」

 前方で誰かとぶつかってしまった。


「あ・・・すいません・・・。」

「いや、こちらこそすまなかった。・・・すまないが、失礼する。」


 そのまま、ぶつかった誰かはどこか行ってしまった。

 ・・・・そういえば、顔を見ていなかった。

 誰だったんだろう。声は男だったけど。


「・・・・先を急ぐか。」

 気にしていても仕方ない。

 さっさとホールに行こう。

 重い足を無理やり前へ進めて、ホールへ向かった・・。


 


 20分ほどかけて、ホールに着いた。

 すでに昨日より少し少ないくらいの人数が集まっていた。

 皆表情はそれぞれだが、笑っている人は誰ひとり居なかった。


 ・・・こうして見てみると、それぞれが何らかの能力者であることはすぐにわかった。

 なんていうか、一般人とは雰囲気が全然違う。

 そういえば、ここに居る人は全員、‘戦争’で戦うためにここへ呼ばれたんだよなぁ。

 俺は例外として、ここの人間は何らかの戦争のために使える能力を持っているってことか。


「ふぅ・・・。」

 勝手にため息がでてしまう。

 これから起こることへの恐怖なのか。

 もう、これが夢ではないことを実感しているのに、ため息はでるもんなんだな。


 トントン・・・

「ねぇ・・・。」

「うわぁぁ?!ななな、何?!」


 ・・・なんだかつい最近、こんなリアクションとった気がするな。

 デジャブか?


「時間を・・・教えて欲しい・・・。」

「へ?え、えーと・・・。5時57分だよ。」

「そう・・・ありがとう・・・昨日の人・・・。」

 

 昨日の人?

 ・・・・・そういえば、この顔は・・・。


「もしかして、昨日船で時間を聞いてきた人か?」

「うん・・・。見かけたから、また時間を聞いておいた。」


 昨日の船で会った女の子だ。

 あの時は全然気にしてなかったけど、改めて見てみるとけっこう可愛い。

 ・・・この人も、俺と同じ状況なんだよな・・・。


「あ、あのさ・・・大変なことになっちゃったよね。まさかこんなことになるなんて・・・。戦争なんて、絶対に許されないことなのに。」

「・・・そうだね。でも・・・ううん、なんでもない・・・。」

 何かを言いかけて、口を閉ざす少女。

 俺はそれに気を留めることなく、会話を続ける。


「戦争をしなければ、ここから出られない。・・・こんな状況、君ならどうする?」

「・・・私は・・・・・


 「皆ー!グッモーニーング!昨晩はよく眠れたかい?朝の集会を始めるよ!」

 突然、ステージ上に元帥が現れた。

 少女がまた何か言いかけていたが、聞くことはできなかった。


 「欠席者0!えらいじゃない!オイラは嬉しいよー!」


 そりゃ遅刻したら殺されるからな。怖くて誰も遅刻なんてできやしないだろう。

 しかし元帥も、かなりうれしそうだな。

 やっぱりこの元帥もこういう子供っぽいところもあるんだな・・・。

 


 「いやぁ良かった!昨日のホールのお掃除は大変だったからね!また死体を増やして掃除するのもバカ臭いしね!えー・・・とにかく、話を始めるよ!」

 ・・・どうやら俺の見解は間違っていたらしい。

 ただ死体を片付けるのが面倒だっただけ・・・というのが主な理由。

 思わず拳を握り締めて、怒りを殺す。


 「それでは、手帳を開いて、「軍事規則項目」のページを開いてください。今日はそこについての説明を終わらせて、ようやく世界を取る戦いのスタートを切るんだから!」


 指定されたページを開く。

 おそらく、この項目は戦争に関して書いてあるんだろう。

 まさかとは思うが本当に、戦争をする気なのか・・・?


 「ここでは、戦争に関する詳しいルールが書かれてあります!破って無様に死ぬよりは、聞いておいて戦場で死ぬほうがかっこいいと思うよ!細かくて、内容も多いから心して聞いておいてね!では、説明いきまーす!」


 「まず1つめ。ここでは、世界を相手にキミたちだけで戦争を行い、勝ち続けてもらいます。一度でも負けたら、全員を処分するよ。」


 処分・・・つまり、殺されるという解釈で間違ってないだろう。

 戦争に出たとしても、死ぬ可能性がある。かといって、弱腰で行っても負ける。

 ・・・これはつまり、勝ったとしても死ぬ可能性があり、負けたら確実に死ぬのか。

 なんて・・・恐ろしいルールだ。


 「2つめ。戦争中は敵や敵国の市民を何体殺してもオーケーだけど、チームキルは例外!故意であろうとなかろうとチームキルをした場合、戦争終了時にそいつに罰を与えます。あまり銃を乱射しすぎて、味方を撃たない様に気をつけてね!」


 チームキル・・・いわゆる同士討ち。味方を殺すことがタブーとされてるんだな。

 これについては納得できる。喧嘩で殺しあってたら話にならないしな。

 これがあるのとないのとでは、かなり違う。

 こんな異常な状況で、狂う奴がいてもおかしくはない。

 そんな奴に殺されて、隊列を乱されたとなると・・・想像しただけも恐ろしい。

 

 「3つめ。戦争中は基本、どんな武器でもオーケーですが、例外があります!例外として、核ミサイルなどの放射線をばら撒く悪魔のようなチート武器は禁止します。あれ1発撃てばすぐ終わっちゃうしね。ほかにも、オイラ達が定めた規定威力を超えるような武器は禁止。製造も使用も禁止します。リストを作ったので、後で見ておいてね!」


 配られたリストを見ても、軍事関連に疎い俺は何が何だか理解が出来ない。

 とにかく、強すぎては決着がすぐについてしまうから、禁止なのだろうか。


 「4つめ。世界を取ることに特に期限はありません。絶対に勝てると判断した場合に出撃するようにしてね!まぁ、取らなけりゃキミたちは一生ここから出られないけどね。・・・でもそれだと逆に飽きるな・・・。ボソ」


 最後の辺りがよく聞こえなかったけど、準備はしっかりさせてもらえるようだ。

 でも逆に、戦争をしなければその分だけ、ここで暮らさざるを得なくなる。

 戦争をすれば、ここから出れる可能性があがるけど、死ぬかもしれないし・・・何より非人道的だ。

 もしも、日本を攻める・・・となった時、俺はどちらを選ぶのだろう。

 関係ない誰かを殺して、自分がここを出るってことになるのか?


 「5つめ。もし200人のうち、誰かが死んでも死んだ分は補充されないので気をつけてくださいね。算数はできると思うけど、一応説明するね。アメリカ戦で50人死にましたー。次のロシア戦は150人で頑張りまーすってことになるんだよ。わかった?」


 ・・・・・・。

 皆が唖然とする。当然、俺もだが。


 最初辺りから薄々感じていたが、このルールはかなり厳しい。

 単純に考えれば、このルールが適用される場合、俺達の勝算はほとんど無い。

 国と戦うのに、こちらの兵力はたったの200。俺以外の全員が、なんらかの能力に長けていたとしてもあまりに数が少ない。

 さらに、兵力の補充も禁止された。

 テロ抗争だって何人も死んでいるのに、国との戦争になれば一体何人の死者が出るのか見当もつかない。

 小さな国ならなんとかなったかもしれない。しかし、相手は世界。

 アメリカやロシアなどの強力な国との戦闘に、死者0なんて奇跡が起きるとは思えない。

 

 「最後の6つめ。これはアビリティ機関規則と同じように、なんらかの不具合がおきるかもしれません。よって柔軟に対応していくためにも、この規則はこれからも追加される可能性がありますから、気をつけてください!というので・・全部終わりかな。」


 最後はあまり関係ない。

 いままでの話を聞く限り、もっとも重要なことを元帥は言っていない。

 この元帥、質問タイムをくれるのかな?


 「ふぃ~疲れた~~。んで、何か質問ある?ジュース飲みながら適当に答えるよ。それじゃ、質問ある奴、挙手!」


「「「はい。」」」


 俺と同じく手を挙げている人がいた。

 一人は身長が俺より小さくて、体型も細身の男。日本人だろうか。

 もう一人が、高身長で、引き締まった体型をしている男。金髪で目が青いのが特徴だな。


 「うぇぇめんどくせぇー!じゃあ見るからに特徴の無いお前。名前はえ~と・・・伊藤直輝だっけ?どうぞー。」

 名簿を開きながらだるそうに答える元帥の態度にイライラしながらも、質問をする。


「はい。戦争時の勝利条件と敗北条件について聞いていなかったので、お答え願います。」

 もっとも重要な点。どうすれば勝つのか、負けるのかをこの元帥は言わなかった。

 普通これ言わなければ始まらないだろうに・・・。


 「おお、いい質問!ま、わざと言ってなかったんだけどね。え~とね、勝利条件は、敵の軍の壊滅、もしくは敵国が降伏した場合だね。アドバイスとしては敵国の国土の大部分を占領すれば相手は降伏するんじゃないかな?敵国が講和を持ちかけてきても、こっちは問答無用で戦争を続けるから‘降伏’させるまで勝利ではないからね。」

 

 わざと言わなかったって・・・何を考えているんだ、この元帥は。

 しかし考えてみれば、200人程度で降伏させるのも少々骨が折れるだろう。

 占領に人員を割いている余裕はないし、武力で行くしかないのか・・?

 人員が補充できないのはチェスと同じ。

 いかに人員を減らさずに、相手の戦力を削っていけるかが大事だな。

 ・・・・ってかさっきからなぜ俺は冷静に分析しているんだ?

 思えばこんな異常な状況でよく分析できたな・・・・。


 「敗北条件は、こっちの大将が死ぬ、もしくは捕らわれた場合。大将は戦争の前に1人だけ決めてもらうんだけどね。あとは、オイラが負けたと判断した時だね。攻めていったにも拘らず、皆で命からがら逃げてきた・・・とか、死者がバカみたいに出たら負けにするよ。そのときは全員をどんな手を使ってでも責任を持って処分するからね。これで質問は終わりかい?」

「はい。質問は以上です。」

 「んじゃ、そっちの細いの。名前は・・・えーと・・・渡辺龍一だっけ?どうぞー。」

 渡辺と呼ばれた男が、元帥に質問する。


「はい。例えばの話ですが、僕達がアメリカと戦い、勝利できたとします。その際アメリカは僕達のものですが、それを次の戦争で活用しても構わないのでしょうか?」

 

 「これもいい質問だね。さっきの規則の通り、アメリカ軍を加入させることはできません。しかし、人以外であれば例外として使用可能です。武器や兵器、領土などは使用可能とします。アメリカに勝てば、アメリカの領土を丸々使って構いませんよ。で、質問は終わり?」


 渡辺・・・ということは同じ日本人だな。

 よくそこに気づいたと思う。この人は、きっと頭がいいんだろうな。

 勝てば領土を活用することが出来る。

 それが許可されたとなれば、少しだけ望みが出てきた。


「はい、ありがとうございました。」

 「んじゃ、最後にそっちの金髪ブルーアイ。名前は・・えーと・・・ヴィクター・クリフォード。」


「質問だが、私たちの軍の武器や兵器について教えていただきたい。生産するとなると、私たちだけでは時間も人手も足りない。資金面も、まだ詳細を聞いていない。戦争に武器は不可欠だ、そこを知らないで戦争に行くことはできない。あとは兵糧もだな・・・。」


 「わかったわかった!話が長くてうざいからカット!質問に答えるよ!資金面は心配要らないよ。どれだけ強力な兵器を製造しようと、食料を用意しようと、要るものは時間だけだよ!武器や兵器の製造については、キミたちの中にもそのエキスパートがいるんだ。必要な人員は、オイラ達がそのエキスパートさんが必要と判断した人数だけ用意するよ!まぁ要するに、人手も資金も気にするなってこと。気にして欲しいのは時間かな?あんまりかかるとオイラも飽きて何かしでかすかもしれないしね。」


 最後の辺りが気になった。

 何かしでかす・・・。何もおきなければいいが。


「・・・・了解した。質問は以上だ。」


 それにしてもあのヴィクターという男、かなり戦争に詳しそうだったな。

 容姿から見るかぎり、どこかの軍隊にでも入ってそうだった。

 彼のように戦争に熟知した人間にまとめてもらえれば、まとまりのある軍になるかもな。



「質問はもうないね?・・・それじゃあいよいよ世界を相手に戦う日々がスタートするわけだけど、スタートするにあたって、この着用を義務付けます。黒服さん!」

「「「「「ハッ!」」」」」


 黒服から配られたのは、何の変哲も無いネームプレート。

 名前が書かれている以外に特に特徴は無い。


 「誰が誰だかわからなくなるから、これを常につけておいてちょうだい。」


 確かに、これがないと誰が誰なのかわからない。

 胸にしっかりとネームプレートを留めた。

 

 「それじゃあ・・・準備はいいね?!始めるよ!第四次スーパーアルティメットギガンティック世界大戦、開戦!!!」

 訳わからない戦争の名前を言いながら、ステージ上から元帥が消えた。


 一体、これからどうなっていくんだろう。

 正直、不安しかない。

 たったの200人で世界を相手に戦争で勝つ、という無謀とも思える条件で戦わなければいけない。

 

 戦争なんかしたくない。でも、しなければ一生ここで暮らすことになる。

 どちらを取るか・・・・・。その問題を投げかけられた時から、ずっと考えていた。

 でも、やっぱり俺にはこれしか選べない。

 その答えが正解とは言わない。その答えが不正解とも言わない。

 この答えはきっと、茨の道になると思う。

 俺の腹は決まった。これが・・・俺の出した答え。


 俺は・・・ここを出るために、世界と戦う。

 戦って・・・勝って・・・・絶対に生きて帰ってやる。

 

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