プロローグ
来年、どこかの出版社に応募しようと思って書き温めていた“過ちのライゼ”ですが、まァ現実的に考えて無理だよな……就職するし。
ということでせっかく書いたんだから小説家になろうへ投稿することにしました。
たくさんの方の目に触れてもらえたら嬉しいです(*´∀`*)
twitterやってます。
ユーザー名はtakanashi_natorです。
更新情報や執筆状況などをつぶやいていきたいと思います。
他にも小ネタや裏話、他諸々をつぶやいていきたいです。
http://twitter.com/takanashi_nator
感想に評価、誤字脱字の報告などお待ちしております。
世界は理不尽で満ちている。それは、どこの誰が言ったのだろうか……
その言葉を聞いた時はそんなことはない、世界は案外悪くないものだと思えた。家はごく一般的な家庭よりもちょっとだけ裕福で、父と母と兄との四人暮らし。それなりの年頃らしく学業に部活、恋に趣味にと、ちょっと満足いかない時はあっても、充足した日々だった。
けど、世界は理不尽で満ちていると言うのはこの世界の真理なのだろう。
不幸は誰にでも突然襲い掛かるものだ。と、テレビで言っていたけど、それが自分の人生に当てはまるとは思わずに生きてきた。
ニュースキャスターが毎朝届ける不幸な出来事を尻目に学園へと登校するように、同じ日本での出来事もどこか遠い世界で起きていることのように感じていた。
身近な人が事故で亡くなるのも家族の手で殺されるのも、それが自分にもいつか訪れるかもしれないと全く思わなかったわけではないけど、それでも、やっぱりそんないつかは訪れずこともなく、私は平々凡々に生きていくのだろうと思っていた。
それが壊れたのはいつだろう……
父が一番の親友だと思っていた人に騙され、全てに絶望し、楽になるためにと自殺した時から? 母が全てに嘆き、得体のしれない宗教を心の拠り所に信奉し始めた時に? それとも兄が全てに憤怒し、世間では許されない行為に走った時? もしかしたら私が―――
……いや、どれも違う。きっと私が生まれる前からこの世界は理不尽で壊れていたのだろう。
それでも私はこの理不尽で壊れた世界から父や母、兄のように逃げたりすることも出来ずに、ただ自分に嘘を吐いて生きていく。
人から見ればそれも逃げていることになるのだろうけど……
くるり、くるり。
過去が回る。
「最悪な目覚めだわ……」
のっそりと体を起こした少女は、枕元に置いてあった携帯電話を開いて日付と時刻を確認する。
四月十五日の月曜日。時間は六時十五分。
いつも起きる時間よりいくらか早い目覚めに少女は目を細める。
「……ああ、そういえば今日であれから一年が経ったのね……通りで夢見が悪いはずだわ」
一年前の四月七日に少女―――真崎空音が信じてもいない神から、要りもしない傍迷惑な能力に目覚めさせられた日。
そして、それは……空音が嘘を吐き始めた日でもある。
「はぁ……」
空音は携帯電話のアラーム機能を消してベッドから起き上がると、着ていた寝巻をベッドに投げ捨て、栗色の髪の毛を靡かせて浴室へと歩いて行った。
窓の外の天気は快晴。
それは空音の心情とは全く逆の空模様だった。