08
「はい、乾杯」
カチンと生ビールのグラスを合わす。
結局、あの特殊任務という外れクジのプロジェクトの結論は後日という事で解散となった。
帰ってきてからの部長の見え透いた笑顔には、腹が煮えくり返るくらい憎らしかった。
「全部知ってたんでしょ、美紀」
こいつは、社長&部長と合わせて面倒な事を引き起こす要因となった人物。
よくも、あのお見合いパーティーの時に白々しい態度をとってくれた。
彼女の演技は賞でも貰えるんじゃない?
「半分知ってて、半分は知らなかった。
これは本当のことよ」
「あやしー」
もう、こうなると飲むしかないね。
今日は金曜日で、明日の予定は無し(寂しいけど…)
店に入って飲むのも面倒になったので、宅飲み。
「でも、あんたがクジで大当たりしたのは種も仕掛けもありませんよ。
私も立ち会ったけど、けっこう抽選箱に入っていた人数多かったし。
総務の松田さんとか、人事の岡本さんとか。
まぁ、その中からうちの社きっての王子を引いたっていうのが
こう、社長の運の強さというかねー」
実験台は美しいものの方がいいでしょ、と笑いながら美紀はチーズを口に運ぶ。
そりゃ、瀬崎さんは美しいけれども私は、、、
どうなってしまうのよ。。。。
「諦めて、流されなさいよ」
「へ?」
「神様がくれた最初で最後の大きなチャンスでしょ。
例え家にそんなに帰ってこなくても、そこが家なんだし
嫌でも王子と仲良くなれるじゃない」
まさに、他人の意見だわ。
「他人だから言えるのかもね。
思ってる事顔にですぎ」
半分出来上がっている彼女は、ケラケラと笑いながら話続ける。
「でもさ、漫画であったじゃん。
人間がペットとして他人と同居するってやつ。
あれと一緒じゃない、あっ雪はペットの方!
瀬崎さまとは格が違うから、あはは」
何が、あははよ酔った勢いで何でも言っていいと思っていやがるコイツ。
どうして私がペットよ。
「考えてみなさいよ。
すべての生活費を会社がみてくれて、家賃も無料。
この時代、女はお金を貯めてて悪いことないんだから」
私の貯金額っていくらっけ?
そう本気で考えていると、美紀は寝てしまっていた。
いいなー、充実している人は。
彼氏もいて、仕事も出来て羨ましい。
私って、どうなんだろ?
少し追加しました。