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素早い鬼と神の声

作者: 白龍閣下

※この小説には、多少うんざりする描写がありますので、ご注意ください。

 むかしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。

 かくして、桃太郎は鬼を見事倒したのです。



 ──神は言っている。ここで死ぬ宿命ではないと。




 鬼は、大変悩んでいたのです。

 自分達が桃太郎にやられる度にリセットし、倒され、更にリセットし、常人なら気が狂うほどの無限ループを繰り返してきたのです。

 だがさすがは鬼。次第に自らを研鑽し、対策を練った上で桃太郎に打ち勝とうと考えるようになりました。

 力こそ最大のパワー! 鬼は、更なる力を得ようと山で修行をしました。

 滝を割り、岩を砕き、田畑を荒らしました。

「この力に誓い、俺は必ず桃太郎を倒す!」

 かくして、桃太郎は鬼を見事倒したのです。




 ──神は言っている。ここで死ぬ宿命ではないと。




 鬼は、大変悩んでいたのです。

 自分達が桃太郎にやられる度にリセットし、倒され、更にリセットし、常人なら気が狂うほどの無限ループを繰り返してきたのです。

 だがさすがは鬼。次第に自らを研鑽し、対策を練った上で桃太郎に打ち勝とうと考えるようになりました。

 素早さこそ最大のパワー! 鬼は、更なる素早さを得ようと陸上部で合宿をしました。

 全国大会に出場し、オリンピックで金メダルを取り、ピンポンダッシュを極めました。

「この素早さに誓い、俺は必ず桃太郎を倒す!」

 かくして、桃太郎は鬼を見事倒したのです。




 ──神は言っている。ここで死ぬ宿命ではないと。




 鬼は、大変悩んでいたのです。

 自分達が桃太郎にやられる度にリセットし、倒され、更にリセットし、常人なら気が狂うほどの無限ループを繰り返してきたのです。

 だがさすがは鬼。次第に自らを研鑽し、対策を練った上で桃太郎に打ち勝とうと考えるようになりました。

 頭脳こそ最大のパワー! 鬼は、戦略を考えられる頭脳を得ようと寺子屋で勉強をしました。

 つるかめ算を解き、微分積分を学び、C言語を開発しました。

「この頭脳に誓い、俺は必ず桃太郎を倒す!」

 かくして、桃太郎は鬼を見事倒したのです。




 ──神は言っている。ここで死ぬ宿命ではないと。




 鬼は、大変悩んでいたのです。

 自分達が桃太郎にやられる度にリセットし、倒され、更にリセットし、常人なら気が狂うほどの無限ループを繰り返してきたのです。

 だがさすがは鬼。次第に自らを研鑽し、対策を練った上で桃太郎に打ち勝とうと考えるようになりました。

 中二病こそ最大のパワー! 鬼は、大魔王の封印された右目を得ようと異世界で冒険をしました。

 村を救い、クエストを達成し、はぐれメタルを倒したのです。

「この中二病に誓い、俺は必ず桃太郎を倒す! キリッ!」

 かくして、桃太郎は鬼を見事倒したのです。




 ──神は言っている。ここで死ぬ宿命ではないと。




 鬼は、大変悩んでいたのです。

 自分達が桃太郎にやられる度にリセットし、倒され、更にリセットし、常人なら気が狂うほどの無限ループを繰り返してきたのです。

 だがさすがは鬼。次第に自らを研鑽し、対策を練った上で桃太郎に打ち勝とうと考えるようになりました。

 食欲こそ最大のパワー! 鬼は、更なる胃袋を得ようとピザハットで偏った食事をしました。

 ピザを食べ、体重を増やし、ズボンのボタンは弾けました。

「この腹に誓い、おでは必ず桃太郎を倒す!」

 かくして、桃太郎は鬼を見事倒したのです。




 ──神は言っている。ここで死ぬ宿命ではないと。




 鬼は、大変悩んでいたのです。

 自分達が桃太郎にやられる度にリセットし、倒され、更にリセットし、常人なら気が狂うほどの無限ループを繰り返してきたのです。

 だがさすがは鬼。次第に自らを研鑽し、対策を練った上で桃太郎に打ち勝とうと考えるようになりました。

 尋常でない素早さこそ最大のパワー! 鬼は、更なる尋常でない素早さを得ようと素早さの種を食べました。

 水上を走り、音速を超え、桃太郎の鼓膜を破壊するジェノサイドインパルスを習得しました。

「根性に近い俺は必ずモモタロス!(『この尋常でない素早さに誓い、俺は必ず桃太郎を倒す!』という意味)」

 かくして、桃太郎は鬼を見事倒したのです。




 ──神は言っている。ここで死ぬ宿命ではないと。




 鬼は、大変悩んでいたのです。

 自分達が桃太郎にやられる度にリセットし、倒され、更にリセットし、常人なら気が狂うほどの無限ループを繰り返してきたのです。

 だがさすがは鬼。次第に自らを研鑽し、対策を練った上で桃太郎に打ち勝とうと考えるようになりました。

 文学こそ最大のパワー! 鬼は、芥川賞を得ようと家で執筆をしました。

 新人賞を取り、芥川賞を取り、青酸カリで自殺未遂をしました。

「鬱だ……」

 かくして、桃太郎は鬼を見事倒したのです。




 ──神は言っている。ここで死ぬ宿命ではないと。




 鬼は、大変悩んでいたのです。

 自分達が桃太郎にやられる度にリセットし、倒され、更にリセットし、常人なら気が狂うほどの無限ループを繰り返してきたのです。

 だがさすがは鬼。次第に自らを研鑽し、対策を練った上で桃太郎に打ち勝とうと考えるようになりました。

 エロスこそ最大のパワー! 鬼は、更なるオカズを得ようとネットでエロ画像の発掘をしました。

 回線を繋ぎ、ウイルスを回避し、落雷によるデータ消失も乗り越えました。

「ふひひ、ふひひひひひひ!(『このエロさに誓い俺は必ずふひひひひひ』という意味)」

 かくして、桃太郎は鬼を見事倒したのです。




 ──神は言っている。ここで死ぬ宿命ではないと。




 鬼は、大変悩んでいたのです。

 自分達が桃太郎にやられる度にリセットし、倒され、更にリセットし、常人なら気が狂うほどの無限ループを繰り返してきたのです。

 だがさすがは鬼。次第に自らを研鑽し、対策を練った上で桃太郎に打ち勝とうと考えるようになりました。

 パネェ素早さこそ最大のパワー! 鬼は、更なるパネェ素早さを得ようと進研ゼミを始めました。

 素早く、素早く、素早くなりました。

「パネェ!(『このパネェ素早さに誓い、俺は必ず桃太郎を倒す!』という意味)」

 かくして、鬼は見事桃太郎が来る前に素早く倒されたのです。




 ──神は死んだ。

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