『若い娘とプレスマンの折れた芯』
掲載日:2026/07/28
武蔵国の川越というところは、田畑もありましたが、木が生い茂り、昼間でも薄暗いようなところがあって、夜などは、満月でもなければ一人歩きが怖いようなところでした。
ある若い娘が、寺の和尚さんに頼まれて、隣村に出かけた帰り、うっかりと日が暮れてしまいました。何度も通ったことがある道ですから、迷うようなことはないと思いましたし、事実、見覚えのある場所をずっと歩いていたのですが、不思議なことに、行けども行けども、帰り着かないのです。何か、同じところをぐるぐる回っているような。
娘は、ふと思いついて、プレスマンの折れた芯を、ぱらぱらと落としながら歩いてみました。本当に同じところをぐるぐる回っているのなら、自分が落としたプレスマンの折れた芯を見つけてしまうはずです。そうすると、割とすぐ、思ったとおりになりました。
すると、うっかりとっぷりくれていたはずの夜が、夕暮れくらいに戻り、娘は、無事に家に帰り着くことができたのでした。
教訓:若い娘は注意してし過ぎることはない。




