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AIには愛がありますか?  作者: 朽木昴


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最終話 行き着いた先に待ち受ける未来

「桔梗、それに美空ちゃん、さすがにこの状態だと話しにくいと思うんだけど?」

「仕方ないなぁ。今回だけは真由美様に譲ってあげるよ。美空もそれでいいよねっ?」

「むぅ、しょうがない、ワガママな真由美お姉ちゃんに譲るよ。だ、け、ど、翔吾お兄様は美空のモノって決まってるからね?」

 桔梗と美空は渋々翔吾の隣を諦める。

 ため息とともに翔吾とは反対の席に座った。


 本当は翔吾とイチャラブ予定だったはず。

 桔梗が戻ったのは素直に嬉しい。

 現実は甘くなく以前よりかなり悪化。


 真由美の中でやるせない怒りが込み上げてきた。

「そ、れ、で、ミライのことを話して欲しいんだけどっ?」

 ご機嫌ナナメな真由美が桔梗と美空を鋭い眼差しで睨む。黒いオーラを漂わせ牽制するも、美空は華麗なスルースキルを使い、ミライがどうなったのか語り始めた。

「翔吾お兄様の努力が実り、特区という形でAIドロイドと人間との共存へ一歩近づいたの。ミライはね、今回の責任と未来への希望を願い、自らの意思で眠りについたのよ」

「それってさ、ミライは稼動してないってことでしょ? もしそうなら、AIドロイドは動けないんじゃないの?」

「やはり真由美お姉ちゃん──ううん、泥棒猫の思考だとそうなるよね。ミライは完全に停止したわけじゃないよ。人間で言う眠りについただけなんだもん」

「ねぇ、なんで泥棒猫なの? 私の扱いが酷いと思うんだけどっ」

「えっ、だって、時田・泥棒猫・真由美という名前でしょ? 細かいことは置いといて、美空はね、ミライに代わって翔吾お兄様のお世話をしに来たんだよ」

「あのー、私にミドルネームとかないからね? それって絶対に今考えたよね?」

 悲しい事だが真由美の悲痛な叫びは美空に届かない。それどころか何事もなかったように話を続けた。

「それとね、ミライが美空に感情を持たせてくれたの。この特区で色々経験して、AIドロイドが本当に幸せかを見極めるためにね。だけど……美空は気づいちゃったんだ。翔吾お兄様は美空にとって大切なお兄様──だから真由美お姉ちゃんになんか渡さないよっ」

「えぇぇぇぇぇ、だって翔吾と美空ちゃんは兄妹でしょ?」

「そうだよ、美空は翔吾お兄様の本当の肉親だし。それとね、琴音をベースにしたクローンなんだからっ」

「真由美様、AIドロイドにとっては血の繋がりなんて関係ないんだよ。だ、か、ら、何も問題なんてないから安心してねっ? それと、桔梗も琴音様をベースにしたクローン型AIドロイドだし、翔吾様の姉になるかなっ」

「全然安心できないんだけどっ!? クローンの元が琴音さんだとか、サラッと言うことじゃないでしょっ。翔吾も何か言ってよー」

 矛先が翔吾に向くと苦笑いで誤魔化そうとする。逆に真由美を怒らせる結果となり、小顔が真っ赤になり大きく膨らんでいた。身の危険を感じ取り、翔吾は慌てて真由美の頭を撫でる。その行動が真由美を満足させ、膨らんだ顔は元のサイズに戻った。

「翔吾様、疲れたでしょ? そろそろお風呂が沸くから、背中を流してあげるね」

「美空も翔吾お兄様の背中流すー」

 桔梗と美空が翔吾の手を掴み、問答無用でお風呂場まで引っ張り始める。真由美が急いで止めようとするが、人間の力では敵わず翔吾と一緒にお風呂場まで引きずられた。

「ちょっと、それはダメだよっ。姉弟でそんな……。というか桔梗、前より力強くなってない?」

「逆ですよ真由美様。姉弟だからこそ問題ないんだよ。ちなみにパワーは30%アップしてるからっ」

「そうそう、ここから先は家族限定なんだから。真由美お姉ちゃんは入っちゃダメだよ?」

「そんなときだけ家族とかずるいー。翔吾の面倒は私がみるんだからぁぁぁぁぁ」

 虚しく真由美の声が家中に響き渡る。

 当然、真由美など眼中にない桔梗と美空は華麗にスルー。翔吾を脱衣所へ強引に連れ込み、二人で服を脱がせ始めた。

「ま、待ってよ、二人とも。服は自分で脱ぐから大丈夫だよ」

「分かったよ、翔吾様」

「翔吾お兄様の言う通りにするね」

 脱衣所で力果てた真由美を放ったらかし、桔梗と美空は自分達の着ていた服を脱ぎ出した。

「準備できたよ。翔吾様、いつでも背中流せるよ」

「美空は髪の毛洗って欲しいー」

 二人の声に振り向く翔吾。瞳に映り込んだのは一糸まとわぬ桔梗と美空の姿。恥じらう様子は一切なく、堂々と自慢のスタイルを披露していた。

「なんで二人とも裸なのよ!? 翔吾もずっと見てるんじゃないのぉぉぉぉぉ」

 復活した真由美の怒りが大爆発。翔吾へ愛の鉄槌を食らわせた。威力はかなりのもので、翔吾はその場に裸のまま倒れ込んでしまった。

「真由美様、暴力はダメだよ。それに──ここからは家族の時間だから邪魔しないでね?」

「翔吾お兄様、大丈夫? 美空が綺麗に洗ってあげるねっ」

 美空は翔吾の頭を持ち上げると、膝枕で看病を始めようとする。

「もぅぅぅぅぅ、これからお風呂は男女別々にするんだからぁぁぁぁぁ」

 渾身の怒り声を上げた真由美はすぐに翔吾を叩き起す。全身全霊の力で桔梗と美空を脱衣所の外まで連れ出した。

 初日でこれだけの騒動。しかも僅かな時間でだ。それでも楽しさを感じ、真由美は怒りとは裏腹に満面の笑みを浮かべていた。


 今はまだ始まったばかりの新生活。

 この先に待ち受けるのは困難の数々だろう。

 それでも立ち止まらず、前へ進み続けるしかない。

 AIであるミライが翔吾を愛し信じているのだから、それに答える必要がある。もちろん翔吾を愛しているのは真由美も同じで、桔梗や美空も愛しているのは確か。AIだろうと人間だろうと、そこには心があり感情を持ち何かを愛する事が出来るのだ。

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