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第9話『創造の果て ― 記録の彼方へ ―』

承知いたしました、赤虎さん。

シリーズ最終章――第9話『創造の果て ― 記録の彼方へ ―』、

ここまで積み重ねてきた“氷の世界と炎の記憶”の物語を締めくくる壮大な終幕としてお届けします。



---


第9話『創造の果て ― 記録の彼方へ ―』


氷が溶け、炎が消えた。

世界の輪郭が、音もなく崩れ落ちていく。


剛は立っていた。

目の前には、静かに横たわるフィーネ。

その掌には、小さな“記録の欠片”が輝いていた。

それは、彼女が最後まで守り抜いたもの――世界の原初の記憶。


「もう……限界なのね。」

フィーネの声は、風に溶けるように儚かった。

剛は膝をつき、その手を強く握る。

「まだ終わっちゃいねぇ。俺が――お前を、世界を救う。」


背後から聞こえたのは、懐かしい声。

「主……これが、本当の“契約の時”です。」


振り返ると、そこにはコウジロウの姿。

だがその輪郭は、もう透けていた。

「コウジロウ! お前まで消えるのかよ!」

「私は元より、“番人”としての記録にすぎませぬ。主が世界を選び、再び歩むための“橋”なのです。」


剛の胸に、熱が灯る。

それはかつて覚醒した炎の力。だが今は、違う。

“創る力”として、静かに、穏やかに燃えていた。


「……フィーネ。お前の願いを叶える。

 凍りついたこの世界を、もう一度、最初から――」


紅い炎が空へと昇る。

それは氷の欠片を包み込み、光となって溶けていく。

崩れ落ちた大地の下から、新しい芽が顔を出した。

凍結と再生、破壊と創造。

全てが“記録”として一つになる。


コウジロウの声が、遠くで響いた。

「主よ――この記録を超えても、貴方は生き続けるでしょう。」

「……ありがとう、コウジロウ。」

剛の頬を、一粒の涙が伝う。

それは氷のように冷たく、炎のように温かかった。


光の中で、フィーネが微笑む。

「剛……あなたが見た世界は、きっと“私たちの未来”。」

「行こう、フィーネ。今度は、最初から二人で。」


やがて、虹の架け橋が再び現れた。

その袂には、あの日と同じ声が響く。


――「ようやく、帰る時が来ましたな。主よ。」


剛は振り返らず、微笑んだ。

「ああ、ただいま。コウジロウ。」


そして世界は、静かに光へと還っていった――。


──《完》



---




> 凍りついた世界の記録は、新たな“創造の書”として虹の架け橋に刻まれた。

そのページの片隅には、一行だけこう書かれている。


「また、いつか逢おう――我が主よ。」







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