第15話「イリーナの特訓!」
そしてその日の夕方。
「夕食までもう少し時間あるし、少し休んでもいいぞイリーナ」
宿に戻った経矢がイリーナにそう声をかける。
「ううん、あたしは大丈夫だよ! それよりもさ……キョウヤ……」
イリーナはそう言うと、上着を一枚脱いだ。
「あたしと一緒に運動してくれないかな? 体を動かしたい気分なんだ」
経矢は急にどうしたんだろうと思いながらも、「まぁ、ちょっとぐらいなら」と了承した。
「じゃあ行こっか」と、誘われたのは宿の裏にある広場だった。
経矢は準備運動をしているイリーナに、少し離れたところから声をかける。
「急に運動したいなんて、どうしたんだ?」
そう尋ねられたイリーナは勇ましくその瞳
を輝かせながら答える。
「あのね……。キョウヤと出会ってからあたしがした事って、銃で敵を倒したりしただけだと思うんだ」
イリーナの言葉に経矢は首を傾げる。
「うん……? それで?」
経矢が続きを促すと、イリーナは言葉を選ぶようにゆっくりと言葉を紡いでいく。
「……それでね……。キョウヤが戦ってる姿はすごいかっこいい……。でもね! あたしだって守られてばかりじゃないんだよって言いたくて!」
イリーナはそう言いながら両拳を握りしめていた。
そんな彼女の真剣な表情に、経矢は少し驚きながらも答えた。
「そっか。でも十分イリーナに守られてるよ?」
経矢の言葉にイリーナは首を振る。
「ううん! もっともっとキョウヤを守れるようになりたいの! だってあたしはキョウヤの……! ……あっ……えっと……」
途中で何かを思い出したように、慌てて口を閉じる。
だがすぐに再び力強く言った。
「あたしは銃は得意だけど近づかれると弱いから……。だから経矢に近接戦闘の特訓してほしいの!」
「なるほど。でも近接戦闘か……」
経矢は考え込む仕草をしながら、イリーナをじっと見る。
「よし! じゃあナイフと体術、それから縄としても使える鞭を使った近接戦闘なんかどう? イリーナは牧場育ちだから縄投げは得意だろ?」
経矢の提案にイリーナは大きく目を開いて嬉しそうな顔を見せた。
「うん! よろしくお願いします師匠!」
敬礼のポーズで喜ぶイリーナに、経矢は思わず吹き出した。
「ぷっ……! イリーナってほんと愛嬌あるよな」
経矢の笑顔を見てイリーナは頬を膨らませた。
「もう! 冗談なんかじゃないのに!」
そう言うと彼女は恥ずかしさをごまかすように咳払いをする。
経矢にからかわれたことよりも、愛嬌があると言われたことで頬を染めている自分に気づいたからだ。
(ど、どうしてこんなに恥ずかしくなるんだろ……)
その後、2人の修行が始まった。
まずはナイフの使い方や構え方の指導を行っていく。
イリーナは牧場育ちであるため筋力はそれなりにあるが、やはりナイフの扱いには苦戦していた。
次に経矢が教えたのは体術だ。これは元々武芸の才能があるのか教え方次第では素人でもすぐ覚えられるほど飲み込みが早い。
そして縄や鞭をうまく扱う特訓。
こちらに関してはさすが牧場育ちと言うべきかセンスがあるようで難なくマスターしていた。
「うーん、イリーナ結構最初なのにかなりいい感じだぞ」
経矢の言葉にイリーナは少し得意気な顔になった。
「ほんと? やったね! これでキョウヤを守れるようになれるね!」
イリーナは嬉しそうに笑顔を見せる。その笑顔に胸がキュッとなる経矢。
こんなにまっすぐ守りたいと言ってくれるのはイリーナだけだ。
経矢の中でも、絶対に彼女を守りたいという思いが強く芽生えていた。
(俺がイリーナを守ればいいって思ってたけど、俺が鍛えてイリーナ自身が強くなることでも、彼女を守ることができるんだ)
経矢にとって自分の思いに気付き、新たな目標が出来た瞬間だった。
「イリーナ、もう少し続けようか。鉄は熱いうちに打てっていうしな」
経矢はイリーナをさらに鍛えるために訓練を続けることにした。
イリーナは力強く返事をすると、経矢との特訓を再開するのだった。
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