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第12話「星空の下、広がる世界へ」

 食事を済ませ、夜になると2人は甲板に出ることにした。

 経矢はイリーナをエスコートするように彼女の手を引きながら階段を上がり、デッキに出た。

「うわぁー! すっごい綺麗!」

 夜になり視界も利くようになったので、遠くまでよく見えるのだろう。

 イリーナは感嘆の声を上げると、目を輝かせて夜の海を見つめる。

 そして経矢も、そのイリーナの隣で海を見つめる。

 2人の他にも海の夜景を楽しみに来ている観光客がたくさんいた。

 彼らはそれぞれの船から身を乗り出し、その夜景を楽しんでいる。


「この広い世界にはたくさんの人がいて、それぞれいろんな暮らしをしているんだよね。なんか、凄いなぁ……」

 イリーナは夜景を見つめながら感慨深げにそう呟く。彼女の言葉に経矢もうなずいた。

 時代は流れているのに、海も星も500年前と同じで美しい。

 そしてそこに住む人たちも同じだ。

 争いを続け、他者を踏みにじることをなんとも思わない者もいれば、イリーナやスミスのように平和を愛し、ささやかな生活を営む者もいる。


「そうだな……。イリーナ……あんなことがあったんだし、あっちに着いたら帰りの船に乗って戻ったっていいんだ……」

 経矢はイリーナを気遣いそう言った。

 彼女の今後のこと、そして今置かれている状況も考えると、そうするのが1番いいと思えたのだ。

 ただのアルセィーマ地方を目指す旅ならよかったが、死んだはずのルーベン・メンデンホールとその一派が現れ、自分を狙っているとなると話は変わってくる。


「ありがとう、キョウヤ。でもねあたしね、これからも2人で一緒に冒険を続けたいんだ」

 イリーナは経矢に微笑みながらそう言った。彼女は真っ直ぐな目で、彼の目を見てくる。

「……イリーナがそう言ってくれるなら俺は嬉しいけど……でもいいのか? 危ない目に遭うかもしれないし……」

「うん! もう決めたから! それにあたしがいなかったら今頃キョウヤは捕まってたかもよ?」

 たしかにそうだ。

 彼女がいなければあの時、ルーベンたちから逃げる前に捕まっていたか殺されていたかもしれないのだ。


 イリーナは守りたい仲間だけど、守られるだけじゃない。

 銃の腕前に関しては、自分以上だ。肩を並べて戦える。

 それに、"世界を見てみたい"という彼女の夢も叶えてあげたい。

 経矢はその思いを強くする。

 だから……。


「分かったよイリーナ。これからも一緒に旅をしよう。よろしくな!」

 そう言って経矢はイリーナの頭を撫でると、少し恥ずかしそうに彼女は笑って見せた。

「うん! よろしくね!」

 そしてあらためて握手を交わすと、2人で星空を見上げる。


 経矢は夜風を感じながら、イリーナの横顔をそっと盗み見た。

 月明かりに照らされたその笑顔は、波間の星よりも静かに輝いて見えた。

(この光を、今度こそ守り抜くんだ……絶対に)


 それから部屋へと戻った2人は、明日に備えて早めに休むことにした2人。

 順番にシャワーを浴びると、そのままそれぞれのベッドに入って挨拶をする。

「今日はいろいろあって疲れただろ? ゆっくり休めよ、イリーナ」

「うん! ありがとうキョウヤ。……おやすみ」

 笑顔でそう言うと、イリーナは布団に潜り込む。

 経矢も部屋の灯りを消すと、ベッドに横になるのだった。



 翌朝。

 2人は朝食を済ませると、デッキで海を眺めていた。

「イリーナ、やっぱり海は珍しいんだな」

「うん。こうやって海で浮かぶ船に乗るのだって初めてだもん!」

 経矢はそんなイリーナの楽しそうな声に、思わず微笑む。

「そっか、それはよかったよ。だけど潮風は髪を痛めるから、もう少ししたら戻ろうか? イリーナの綺麗な髪が傷んじゃうよ」

 イリーナは経矢のその一言に、ちょっと頬を赤くする。

「も、もう! キョウヤったらさらっとそういうこと言うんだから」

「あはは、ごめんごめん。でも本当のことだし」

 そんなやり取りをしながら海を眺めていると、船全体に聞こえるように船長からのアナウンスがあった。


 どうやらアルセィーマ地方へ向かう航路に、"大海獣"が出現したらしく、安全のためにユーレイドレシア地方へ経由してからアルセィーマ地方へと向かうとのこと。

「大海獣かぁ……。そんなに危険なのかなぁ?」

 イリーナが首を傾げていると、経矢が船が旋回した後に水平線を指差した。

「イリーナ、あっちの水平線の向こうに少し大きな山のようなものが見えるだろ?」

 経矢の指差した方向に視線を向け、イリーナはうなずく。

「う~ん、あ! あの丸いやつでしょ? ……って、なんかちょっと動いてるような……」

「あれが大海獣だ。この距離からあれだけの大きさで見えるってことは、どれくらい大きいか想像すると……船長が迂回するのも分かるだろ?」


 経矢に言われ、イリーナも納得する。

 あの大きさの生き物が相手なのだ。動くだけで発生する波だけで、その被害は甚大なものになるだろう。

 実際に海面の奥から、低いうねりのような音が伝わってきた。

 それはまるで海そのものが息をしているかのようで、イリーナは思わず息を呑んだ。


「うん、たしかに。世界にはまだまだあたしの知らない生き物がたくさんいるんだね」

「だな。まだまだ世界は広いんだ。せっかく旅をするんだし、一緒にいろいろ見ていこうぜ」

 経矢の言葉にイリーナはワクワクした様子でうなずくのだった。


 それから数日。

 経矢とイリーナは船で過ごしていた。2人は毎日のようにデッキに出て、夜の海を眺めていた。

「明日にはユーレイドレシア地方に着くだろうってさ。いくら海が綺麗でも、さすがに飽きてきたんじゃないか? イリーナ」

「ううん、そんなことないよ。キョウヤと2人で旅をするのはすごく楽しいし!」

 イリーナは笑顔で経矢にそう言った。

「俺もだよ、ありがとうな」

 2人はお互いに微笑みあうと、船室へと戻っていった。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いします!

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