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第24話 民の笑顔


「おっ、このあいだの嬢ちゃんたちじゃねえか!」


「んふふ。あのね、美味しいのまた買いにきたよ。今日もシー、ね?」


 リュカと手を繋ぎながら駆け寄った先は、城下にあるクレプアンの屋台だ。

 さっそくルイーズたちに気がついた店主は、以前と変わらず気さくに「おう」と笑ってくれる。リュカは少しだけ申し訳なさそうに、ペコッと頭を下げた。


「くれ……くれぷあん、ください」


「ありがとな。今日もふたつでいいか?」


「ううん。むっつほしいの」


「六つ!?」


 驚く店主を前に、ルイーズは頷きながら振り返る。

 そこには控えている従者のほか、外套を纏い頭巾を被った大人がふたり。


「今日はね、ルゥたちのパパもいるんだ」


 認識阻害魔法をかけているため周囲には気づかれてはいないが、〝王〟と名のつく者たちだ。

 すでにリュカが〝王子〟だと知っている彼からすれば、わざわざグウェナエルたちが姿を明かさずとも察するには十分だろう。

 ぽかん、と大口を開けたあと、店主は慌ててクレプアンを焼き始めた。


「ほれ、嬢ちゃんたち。このまえみたく、花蜜たっぷりいれたからな」


 やがて焼きあがったクレプアンを持って、彼は屋台から顔を出す。


「やった。ありがと、おじちゃん」


「ありがとうございます……っ」


「おう。それから、ちょっといいか」


 店主はクレプアンをいれた袋を渡しながら、目の前にしゃがみこんだ。


「嬢ちゃんの正体は知らんが、坊ちゃんと一緒にいるってことはそれなりのモンなんだろう? 勝手にそう見込んで、伝言を頼みたい」


 ルイーズとリュカは、きょとんと顔を見合わせながら頷いてみせる。


「お水のこと?」


「ああ。見りゃあわかると思うが……ジルダ湖がきれいになったおかげで、街の水不足も解消された。滞っていた水晶花の流通も再開して、民の笑顔も戻った」


「うん。このまえより明るくなった気がした」


「それもこれも、兄ちゃんらのおかげだ。本当にありがとう、と伝えてくれ」


 彼はルイーズが解決したことを知っているわけではない。きっと今回の件は王であるエヴラールが解決したと思っているのだろう。

 だけれど、心の底から感謝するような笑顔を向けられ、ルイーズははにかんだ。


「わかった。伝えておくね?」


「ああ、頼んだぞ。そんでまたうちのクレプアンを買いに来てくれや」


「うん。じゃあ、ありがとおじちゃん。またくるね」


 ばいばい、と手を振って、ルイーズたちは大人たちのもとへと戻る。


「る、ルゥ……」


 事実を知っているリュカは、いいの?と言わんばかりだ。だけれど、ルイーズはふるふると首を横に振って、繋いだリュカの手をぎゅっと握る。


「いまので十分だよ」


 ルイーズが魔物を倒し、湖の水を丸ごと浄化したことで、水不足は解決した。

 たしかにそれは事実だが、あれはさまざまなきっかけと偶然が重なって、結果的にそうなっただけ。そこに至るまでに民のため奮闘していたのは、エヴラールやグウェナエル、そしてリュカなのだ。

 感謝をされるべきなのは、そうした道を作ってきた彼らだとルイーズは思う。


(それに、ルゥはこのクレプアンがまた食べられただけで満足だし)


 悪魔の力が暴走しだして、一時は本当にこのまま死んでしまうかと思ったのだ。

 ふたたび城下を回って、美味しいクレプアンにありつけて、そのうえ今回はグウェナエルとエヴラールも一緒。これ以上、ルイーズにとって喜ばしいことはない。


「おじちゃん、お水不足解決してくれてありがとうだって」


 忘れずに伝言を伝えると、大人たちはそろって苦笑いした。

 その意もちゃんと察しながら、ルイーズは微笑み、続けて言う。


「みんながにこにこでいられたら、それが一番だよね」



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