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 あれから九年が()ちました。


 十七才になったナナミちゃんは、「忍野(オシノ) 萌海(モエミ)」という芸名(げいめい)でアイドルになっていました。モエミという名前は、モエたんから()ったものです。

 アイドルと言っても、全国的(ぜんこくてき)有名(ゆうめい)なアイドルではありません。かつてはご当地アイドルグループにいましたが、今は一人で地元を中心に活動(かつどう)しています。

 この日は四月に入って最初(さいしょ)のお仕事(しごと)……地元のラジオ番組にゲスト出演(しゅつえん)です。番組のスタッフが、モエミちゃんことナナミちゃんの楽屋(がくや)にやって来ました。


「モエミちゃーん、そろそろ出番なので気が()いたら来てくださーい!」

「はーい、じゃあ気分が()らないから行きませーん……っていいのかそれで!?」


 モエミちゃんことナナミちゃんは、アイドルになってもからかわれています。でもナナミちゃんはおこることなく、いつもユーモアで(かえ)していました。


「ところで……何でヘアメイクしてるんですか? ラジオなのに」

「おいおい、このスタジオはガラス()りだろ! ファンも来てるんだよ」


 楽屋(がくや)ではヘアメイクさんが、ナナミちゃんのかみの毛を(ととの)えていました。ラジオでは顔が見えませんが、スタジオは外から見えるようになっていて、番組を聞いている人やゲストのファンが見に来ます。


「えっ、外にはだれもいませんよ……ていうかファンいないでしょ」

「いるよ! さっき見たもん、いなかったらお前が外に行って手をふってろ!」

「えー! モエミちゃんが行けばいいじゃないですかぁ!」

「そっかあ! (わたし)が外から手をふれば……って、なんでやねん! だったらお前がスタジオゲストでしゃべるんかい!?」

「あっはは! じゃ、お(ねが)いしまーす!」

「はいよー!」


 スタッフは(わら)いながら楽屋(がくや)から出ていきました。


 楽屋(がくや)にはナナミちゃんと、ヘアメイクさんの二人きりです。でもなぜかヘアメイクさんはムスッとした顔をしていました。


「モエミちゃん、いつもイジられてる(からかわれてる)けど平気(へいき)なの?」


 ヘアメイクさんは、モエミちゃんことナナミちゃんが、いつもからかわれていることを心配(しんぱい)していました。


平気(へいき)ですよ」

「そぉ? 何かひどくない? (わたし)だったら頭きちゃうけど……」


 するとナナミちゃんはクスッと(わら)って


「イジられるのはいいんですよ……だって、本当にきらわれていたら相手(あいて)にすらされませんから。(わたし)が歌っておどって面白(おもしろ)いことを言って、それでみんなが楽しんでくれたら(わたし)(しあわ)せな気分になりますよ」


「……ふぅん、そうなの?」


 ヘアメイクさんは、まだ納得(なっとく)いかない様子(ようす)でした。


「ところでモエミちゃん、前から気になっていたんだけど……」

「何ですか?」

「モエミちゃんのリュック、ずいぶん大きいけど……何が入ってるの?」


 ヘアメイクさんは、楽屋(がくや)のすみに()かれたナナミちゃんのリュックがとても気になっていました。それはまるで、(むかし)のマンガに出てくるどろぼうや、サンタクロースが背負(せお)いそうなくらい大きなものです。


「ああ、これ? ごめんなさい! 中身(なかみ)はちょっと……秘密(ひみつ)です」

「いえ、こちらこそすみません、余計(よけい)なこと聞いちゃって。じゃあセット()わりましたから(わたし)はこれで失礼(しつれい)します」

「はい、ありがとうございました!」


 ヘアメイクさんが出ていくと、楽屋(がくや)にはナナミちゃん一人きりです。


「さて……と」


 するとナナミちゃんは、楽屋(がくや)()かれた大きなリュックに近づきました。そしてファスナーを()けると、リュックの中に()かって話しかけました。




「じゃあね、モエたん! 今日もがんばってくるからね」




 リュックの中に入っていたのは、右うでの()()がぬい直された、青い色をした大きなぬいぐるみ……モエたんです。アイドルになった今でもナナミちゃんは、モエたんと約束(やくそく)したことを(まも)っていたのです。


 そう……




 ナナミちゃんは今日も、モエたんといっしょに(わら)っています。




(ナナミとモエたん・おわり)


さいごまで読んでくれてありがとう!


またどこかで会いましょう(モエたんより)



※※※※※※※



今回は初めての「連載童話」です。今まで何も考えずに書いていた言葉や漢字が、子どもたちに理解できるかどうか考えながら書きあげました。いやぁ、童話って意外と難しいものですね!


今回の主人公・ナナミちゃんは前回「秋の歴史」で書いた「ポストさん」の中に登場する忍草七海と同一人物です。作中で巨大なリュックが登場しますが、中身は……そういうことです。


これで2022年度の公式企画は全て書きました。全ての作品にそれぞれのテーマ「桜の木」「ラジオ」「手紙」そして「ぬいぐるみ」という言葉を入れてあります。ただ今回が一番「雑」でしたね(笑)。


さて、今回で「童話」は完結しましたが、まだ完結処理を行っておりません。今回はもう1話、「オマケ」として童話ではない別の話を加えておきます。

これは、ナナミちゃんこと忍野萌海がゲスト出演したラジオ番組を再現したものです。この話で、今まで公式企画で書いた「宝探し(春の推理)」「FM青木ヶ原(夏のホラー)」「ポストさん(秋の歴史)」そして「ナナミとモエたん(冬童話)」が全てつながります!


よろしかったら最後の「オマケ」までお付き合いください。

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