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 その日の夜、ナナミちゃんは不思議(ふしぎ)(ゆめ)を見ました。


 雪で白くなった山があります……見たこともない山です。その山のふもとにあるまっすぐな一本道を、ナナミちゃんは一人で歩いていました。


 すると道ばたから


「シクシク……シクシク」


 と、()き声が聞こえてきたのです。


「ないてるのは……だれ?」


 ナナミちゃんが声をかけると、一本の木がふり(かえ)りました。


(わたし)は……(さくら)の木です」


 答えたのは(さくら)の木でした。(さくら)の木なのですが花も()っぱも()ちていて、それが(さくら)の木だと言われてもナナミちゃんはピンときません。


「何でないてるの?」


 ナナミちゃんが(さくら)の木に聞くと、(さくら)の木は言いました。


「人間がひどいんです! (わたし)が春に花をさかせると人間が集まってきて、(わたし)の下で食べたり()んだり大さわぎをして、最後(さいご)はゴミを()てて帰ってしまうのです」

「えっ?」


 ナナミちゃんはドキッとしました。去年(きょねん)の春、家族(かぞく)でお花見をしたからです。


「だれも(わたし)の花をほめてくれません。たまにほめる人がいたと思ったら、(わたし)(えだ)()ってそのまま()ち帰ってしまうのです! とっても(いた)いんですよ」


 ナナミちゃんは(さくら)の木を見ることができませんでした。(じつ)はお花見のとき、(えだ)()って()ち帰っていたのです。


「それに……人間は花が散るとすぐに、見向(みむ)きもしなくなります! それどころか(わたし)()っぱに害虫(がいちゅう)()いたり、秋になって葉っぱが()ると人間は(わたし)をじゃま者あつかいするのです! 人間はひどいんです!」

「あっ、そう……それじゃあバイバイ」


 ナナミちゃんは、いても立ってもいられなくなってその場をはなれました。



 ※※※※※※※



「ザザーッ! うわーん……ザザーッ」


 ナナミちゃんが(ふたた)び一本道を歩いていると、今度(こんど)雑音(ざつおん)に交じった()き声が聞こえてきました。


「ないてるのは……だれ?」


 ナナミちゃんが声をかけると、道ばたから黒い(はこ)のようなものが出てきました。


「オレは……ザザーッ、ラジオ……ガガガッ……ピーッ……だよ!」


 答えたのはラジオの受信機(じゅしんき)でした。でも雑音(ざつおん)がひどくてよく聞き()れません。


「何でないてるの?」


 ナナミちゃんがラジオに聞くと、ラジオは言いました。


「ガガガッ……オレは、見ての通りこわれかけているんだ。ザザッ……こわれかけてるけど修理(しゅうり)すれば使(つか)えるんだよ。でもオレは()てられてしまった! 今はテレビやインターネットがあるから必要(ひつよう)ないって……ガガガッ……」

「あっ……そうなの?」


 ナナミちゃんは(こま)ってしまいました。なぜならナナミちゃんもテレビやインターネットばかりしていて、ラジオはほとんど聞いたことがなかったからです。


「ガガッ……それに、どうしてもラジオ聞きたいときはスマホやカーナビに()()()()いているから……ザザーッ、オレみたいなラジオ聞くためだけの機械(きかい)はじゃまだって……だから()てられたんだ。ホント、人間って勝手(かって)だよ……なぁ、教えてくれよ! 本当の(しあわ)せって何だ? ガガガッ……ピーッ!」

「そんなのわかんないよ! じゃあね」


 ナナミちゃんはその場からにげるように立ち()りました。



 ※※※※※※※



「えーん、えーん」


 ナナミちゃんが(ふたた)び歩きだすと、またまた()き声が聞こえてきました。


「もうっ、ないてるのはだれなの?」


 ナナミちゃんが声をかけると、今度(こんど)は紙が出てきました。


「ボッ、ボクは手紙だよ」


 答えたのは手紙でした。でもなぜかクシャクシャに丸められています。


「何でないてるの?」


 ナナミちゃんが手紙に聞くと、手紙は言いました。


「ボクの仲間(なかま)が読まれずに黒ヤギさんと白ヤギさんに食べられちゃったんだ……ひどいよ! でも人間はもっとひどい! (むかし)はみんな便(びん)せんに書いていたのに、今はメールで(おく)るから紙に書かなくなったんだ」

「あっ……そう」


 ナナミちゃんも手紙を書いたことがありません。年賀状(ねんがじょう)もSNSで(おく)りました。


「本当はメールという言葉(ことば)郵便物(ゆうびんぶつ)って意味(いみ)だからボクたちもメールなのに! でも手紙だと()()()()(むずか)しいからってあきらめて、ボクはゴミ(ばこ)()てられちゃったんだ……勝手(かって)だよ」


 手紙がそう言うと、いつの間にか(さくら)の木とラジオもやってきました。


「人間は勝手(かって)だわ!」

「モノを大切にしない人間はゆるさないぞ!」

「そうだ! 人間に『フクシュウ』してやろう!」


 (さくら)の木とラジオと手紙が人間に『フクシュウ』すると言い出したのです。


「まずはナナミをゴミ(ばこ)()てましょう! あなたは花見で(えだ)()ったわね?」

「お前はラジオなんか聞いたことがないだろ?」

「手紙だって……書いたことないよね?」


 ゴミ(ばこ)()てると言われてナナミちゃんはビックリしました。すると、(さくら)の木たちがナナミちゃんにおそいかかってきたのです。


「たっ……たすけてえーっ!」


 ナナミちゃんは全力(ぜんりょく)でにげました。


 しばらく走ると大きな森が見えてきました。ナナミちゃんが森へにげこむと(さくら)の木たちは()ってこなくなりました。


「ふぅ、たすかったぁー」


 ナナミちゃんはホッとして森の中を(すす)みました。すると目の前に、青い色をした大きなクマのぬいぐるみが(あらわ)れました。



 モエたんです。

すでにお気付きだと思われますが……この回は遊んでおります(笑)。


まだ続きます。

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