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(ルビと漢字表記について)
主人公・ナナミは小学二年生という設定のため
1、小学三年生より上で教わる漢字には全てルビが振ってあります。
2、中学生より上で教わる漢字は平仮名表記をしてあります。
3、主人公のセリフは小学二年生までに教わる漢字のみ使用しています。
ナナミちゃんは、南の村に住む小学二年生の女の子です。
南の村と言ってもヤシの木が生えたり、カンガルーやコアラがいるところではありません。日本で一番大きな山のふもとにあるとてもとても寒い村です。
ナナミちゃんはすごくおこりんぼうな子です。クラスの子にちょっとからかわれただけでも、すぐ本気になっておこります。いつもおこってばかりいるナナミちゃんを見て、クラスの子たちは仲よくするのをやめたり、おこっている姿が見たくてよけいにからかってきたりしました。
(なんでよ! なんでナナミには友だちができないの!?)
いつしかナナミちゃんはみんなからきらわれ、クラスで一人ぼっちになっていました。でも一人ぼっちになった理由すらわからず、友だちができないことでさらにおこっていました。
※※※※※※※
今日はクリスマスイブです。ナナミちゃんは家でテレビを見ながらお父さんの帰りを待っていました。テレビでは、アイドルグループがステージで歌っておどっている音楽番組が放送されていました。
(この人たち……何がおもしろくてこんなことしてるんだろ?)
ナナミちゃんはアイドルがきらいです。きらいというよりは、街中では絶対に着られないようなキラキラな衣装を着て、たくさんの人の前で歌やダンスを見せていることが理解できなかったのです。
すると、北の村へ仕事に行っていたお父さんが帰ってきました。お父さんは北の村からおみやげを買ってきました……クリスマスプレゼントです。
「すごーい! 大きい!」
子ども部屋に置かれたクリスマスプレゼントを見て、ナナミちゃんはおどろきました。それもそのはず、お父さんからもらったプレゼントの箱は、ナナミちゃんの背たけより大きかったのです。
(なんだろう? おままごとができる大きなお家だったらいいな)
ナナミちゃんがワクワクしながら箱を開けると、中から出てきたのはとても大きなクマのぬいぐるみでした。
「大きいだろ? この子の名前は『モエたん』だよ。なかよくしてあげなさい」
お父さんはそう言うとナナミちゃんの頭をなでて部屋から出ていきました。部屋の中はナナミちゃんと、とても大きなクマのぬいぐるみ「モエたん」の二人っきりになりました。
(何これ……色もヘンだしかわいくない!)
ナナミちゃんはモエたんを気に入りませんでした。自分と同じくらいの背たけがあるモエたんは大きすぎて、だっこして持ち上げることもできません。
しかもクマなのに体の毛が青い色でおおわれていました。ナナミちゃんはこのかわいく感じられないモエたんが、自分の部屋でどっしりかまえている姿を見てだんだんいらだち、じゃまに思えてきました。
「何よあんた! ここはナナミのへやなのよ! じゃまだから出て行って!」
ナナミちゃんはモエたんに出ていくように言いましたが、モエたんはぬいぐるみなので、もちろん聞くわけがありません。だまってナナミちゃんの目をじっと見つめたままです。
「もう! なんでこっち見てるのよ? あっちに行けーっ!」
その日の夜……モエたんは、かべの方に顔を向けられ、ナナミちゃんのベッドから一番はなれた部屋のすみに追いやられてしまいました。
(こんなプレゼント……いらない!)
ナナミちゃんは、自分が思っていたのと全然ちがうプレゼントだったので、その日の夜はプンプンとおこりながら、サンタクロースに「ちがうプレゼントと交かんしてよ!」とお願いしました。
でも、ナナミちゃんはもともとサンタクロースを信じていませんでしたし、朝になってもモエたんはナナミちゃんの部屋にいました。
まだ続きます。