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ざまぁ展開の御要望。

2話目です。

 

「となると、ご予算は金貨三枚程でどうでしょう」


「ぎりぎりだな。あいつらに有り金と装備を全部奪われたからな、隠れながら貯金していた分がそのくらいだ。もっと安くならないのか」


「キーラ様、だめですよ~。個人依頼は高くつく、これは冒険者の基本でしょう? それはギルド職員相手であっても同じ、俺達は対等な関係でこれから計画を進めていくんですから」


「そうか。まあいい、今度はあいつらの装備まで全部毟り取って換金してやるからな、きっと元は取れるはずだ、よし金貨三枚で依頼しよう」


「ありがとうございま~す」


 今回の依頼内容は、ド定番なざまぁ展開だ。あとはギルドの方を裏で操り、ケルビムという男の行動を制限してやれば、きっと望む展開は訪れる。


「じゃあ折角ですし、彼らにはAランク指定の魔物討伐依頼をふっかけてやりますか。今のキーラ様の恩恵が無ければ、太刀打ち出来るはずもございません」


「奴隷の件はどうする」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()。互いに賭け金をベットし、四対四の決闘を仕向けます。当然実力を見誤った彼らは勝負に敗北するでしょう」


「掛け金というが、俺は金を持ってないぞ」


「ですから、()()()()()()()()()()。負けたら奴隷落ちの決闘、話題性もあってきっと面白いと思いますよ、勝負に勝てば一躍有名人ですね!」


「奴らが勝負に乗ってくると思うか?」


「キーラ様をパーティーリーダーにして登録を行います。残り三人は先程の依頼金から差し引いてこちらで適当にスカウトしておきます」


「なるほど、俺がリーダーと見るや否や、負けるはずがないと高を括って勝負に応じると。悪くない考えだ、流石は代行屋だな」


 冒険者ギルド員の暦3年とはいえ、ざまぁ展開に関しちゃ人一倍知識が豊富だ。これまで何人と犠牲に会った人を見て来た。その度に一矢報いたいと願う者がいた。


 その期待に応えるのが俺の仕事だ。


「では早速手続きして参ります。キーラ様は所定の時間に現れ、指定された魔物を討伐するだけで構いません。細かい状況操作はこちらで行います」


「そうか……くく、見てろよケルビム」


 人間は醜い生き物だ。人からの圧力を受けた時、それを上回る圧力で人を制御した時、これまで抱えていたストレスは一気に焼失する。新たな一歩を踏み出せる。


 キーラはこれまでにない卑しい笑みで笑っている。

 見ろ、実に楽しそうな顔だ。


 俺は、この顔を見る為にギルド職員になったのかもしれない。


 □■□ 


 打ち合わせ後、【戦神の集い(アルトシュ)】を担当する受付嬢の傍に身を寄せた。彼女は親身になって彼らの次の《依頼》を決めている最中だった。


「最近の【戦神の集い(アルトシュ)】の活躍っぷり、凄いですね。俺達の部署にも噂が流れてきますよ」


「えへ、ありがとうございます。私が担当員だからではなく、彼ら一人一人は賢明に努力して必死に現実と向き合っているからこそ、ここまで成長できたのだと思います」


 その存在を今からどん底に叩き込むのが楽しみで仕方ない。

 この娘は、その時どんな顔をするだろう。


「次の《依頼》で悩んでるんですか? でしたら、これなんてどうでしょう。九連続Bランク《依頼》達成中の彼らならいけるんじゃないですか、《灼熱の猪(イグニスボア)》。少し手強いかもしれませんが、きっとやってくれるはずです」


 掲示板にあった一枚を剥がして見せる。


「《灼熱の猪(イグニスボア)》……Aランク指定の魔物ですね。でも、実はキーラさんというメンバーだった方から昨日パーティー脱退の申請を受けまして人数が一人減っているんですよ」


「ええ。それについてはウチの部署でも聞きました。どうやら、キーラさん。彼らに実力を認めてもらいたくて、新たにパーティーを作り直すそうですよ。それで勝負をしたいとか」


 四対四の決闘についての話を聞かせる。

 ライバル心と履き違えた彼女は、感心の声を上げる。


「という訳なので、同じ《依頼》を受けて八人同時討伐ならきっと安全だと思います。勿論取り合う形なので多少は危険を伴いますがね」


「いいですね、それでいきましょう! 決闘申請書類もこちらで取り寄せておきますね! ベリアルさん、相談に乗っていただきありがとうございました」


 馬鹿な女だ。

 全てが嵌められていると知らずに。


 □■□


「という訳で、よろしくお願いしますね」


 夜、ギルドが抱えているフリーの傭兵を何人か招集し、キーラのメンバーに加わるよう説得した。それ自体は納得しているようだったが、事細かな注文には疑問を呈していた。


「どういう依頼だ? 目的が読めねぇ」


「いいんですよ、貴方達は何も知らなくていい」


「お得意のやつですな」


 この傭兵達はただの傭兵ではない。ギルド職員としてではなく、俺個人が傭兵を雇っており、ざまぁ展開構築の為に一躍買ってもらっている俺専用の傭兵だ。


 彼らは金の為なら何でもやる。

 金貨をぶら下げれば、今回もすぐに食いついてきた。


 準備は整った。

 お膳立ては完璧。


 さてと、明日が楽しみだ。


case1は次でラストです。

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