エリヰトの繁栄5
せっかく落ち着きそうだった雰囲気が、シヴァ闘士のせいで逆戻りである。
拷問とか受けたりしないかしら。
リーダー格の九雷子が口を開く。
「たかが残兵がシヴァとどんな関係だ?」
帯電した空気が時折爆ぜる。
コピー機を動かした後みたいな匂いが立ち込めてきて、さあやるぞと言わんばかりの空気だ。
だが一言いいたい。
「たかが残兵は酷い」
ケント爆笑である。
意外と良いやつかもしれん。
「おもしれぇ。それでたかが残兵くんは、あのシヴァとどんな関係よ?」
「ただの同級生だよ。多分アイツとは一番仲が良かったけどな」
まあ友達がいないから一番しかいないが。
「同級生で、仲良し?シヴァ闘士と?」
ケントの表情にから狼狽の色が窺える。
よし、今度タカシにあったらコイツ殺してもらおう。
「その雰囲気からすると、アイツとは敵対とかではない感じか?」
九雷子が答える。
「敵対していたら、おそらくこの建物は瓦礫になっているはずだよ。仮にこちらが勝ったとしてもね」
ふーん、よくわからん。
じゃあマキシマとの関係性はどうだ。
「じゃあマキシマとはどうなんだ?」
おっとっと。3人とも分かりやすい表情の変化。
苦虫を噛み潰した表情選手権開幕か?
九雷子が応える。
「マキシマ。あれも君の知己か?」
「おう、同級生さ。」
「あれの名前を?」
「すまん、マキシマまでは覚えてんだけど、元々のアダ名しか覚えてないぜ。」
「あだ名?」
「あいつは大人しくて頭が固くて、そのうえ髪型がヘルメットみたいでな。ヘルメット博士って呼ばれてたんだ。」
「……………んハァ?」
九雷子がニヤけた。
なんだ、そんな面白いのかヘルメット博士ってキーワードが。
横でケントも吹き出した。
「アイツ、そんな奴だったのかよ。イメージチェンジしすぎだろ」
クミト君も言う。
「ヘルメットはそのままなんだな。アイデンティティか何か詰まってるのか、ヘルメットに」
九雷子は俯いて肩を震わせている。
「なあ、九雷子さん。アンタらはマキシマについて何か知ってるのか?オレはタカシ……いや、シヴァ闘士と一緒にいた時、アイツの姿を見てから記憶がねえんだ。」
九雷子が何かに気づいたように顔を上げた。
「なるほど、そういうことか」
こいつマジで有能だな。
2年前は知恵の神か何かだったんか?
「ザンペイ君。もしかしたら君の最後の記憶こそが、巻島無常とシバタタカシのによる大破壊の原因なのかもしれないな。」
「あっ!無常か、ヘルメット博士の名前!そういやそんな名前だったかな。顔もそんな感じだったわハハハ」
にしても大破壊ってなんた?
「君が目覚めた場所。あそこはいま、大破壊道路と呼ばれているんだ。」
「非常にダサいね」
「私もそう思うが、あそこで起きた事がそのまま地名になってしまったんだ。仕方がない。そしてあの大破壊道路はあの場所を起点に、駅と学校を分断するような角度で、少なくとも県境よりも向こう側まで続いている」
「けんざかい」
「少なくとも50km」
「ヒェ……」
「この戦闘が、我々の確認している最初の大戦闘だ。あの名前改変、いまわしき真名再臨からのね」
「真名再臨……!カッコいいじゃねえか」
「この名前も誰が言ったか、いつの間にか定着してしまった名称だ。新しく変換された真の名で以って、再度現世に臨む……といったところだろうか」
ん?詳しすぎるな。
ホントは考えたの九雷子じゃね?
「九雷子さん?アンタまさかこのネーミング、ひょっとして?」
「いつの間にか定着した」
え、どこ見てんのこの人。斜め上見てるけど。
「でも本当のところはアンタが根回しゅみゅぎゃぴ!」
高二の頃にスタンガンくらったの思い出したわ。
九雷子、口止めにしてもこれはやり過ぎだろ。実際、喋る事もできないけど。
「いつまでも正面玄関では話し辛いな。すまないが2人でザンペイ君を運んでもらえないか。彼はおそらく我々の脅威にはならないだろうし、同級生の話はもう少しゆっくりと聞きたい。」
目の前でもう一度閃光が弾けて完全に身動きがとれなくなったオレは、2人の肉体労働者に抱えられて校舎の階段を上がっていた。




