リリヰスの残兵10
「はい。というわけでタカシのじいちゃんのシヴァ闘神じいちゃんを迎えることに成功しましたー。」
「わー」
「おめでとーハザマザンペイおめでとー」
九雷子と富国強兵が微塵も魂のこもっていない表情で拍手している。
爆裂ウンコくらったもんね。
川の水を少々解凍して身体を清めた後、二人はタカジンじいちゃんの両脇に抱えられ、オレは背中にしがみついて爆速で大穴まで帰宅した。
その間に富国強兵や九雷子都市将からこれまでの話、そしてこれからの予定を聞き、タカジンじいちゃんもそれなりに納得したらしい。
大穴の中央あたりに浮いているイノウエの姿を見てシヴァ闘神が吐き捨てるように言う。
「このモガモガしたよう分からん奴がイノウエタカシっちゅうクソガキか。」
「うん、あのモガモガは闇の煙みたいなもんで顔とかよくわからんけどね。」
「アレをゴボゴボにしたったらええんじゃろ?」
「そうね。それが一番いいんだけど、タカシとタカオおじさんの二人がかりでも難しくて困ってんだよね。」
「あげなモンにか?黒い一旦木綿みとぉなナリしてけつかるねんぞ」
何弁だよ。やめてくれよ。
方言警察みたいなやつがそこら中でウヨウヨしてんだから。
オレがうんざりしていると横から九雷子が助け舟をだす。
「あの一旦木綿も宇宙の時間が止まった要因のひとつなんですよ。ご老人の腕が立つのは私にもわかりますが、ご子息たちも攻めきれない程の相手ですので何卒ご注意を。」
「わかっちょる。そんで次はどうすれば良いだん。」
次はシヴァ闘家の最後の一人、タカシの母を解凍するつもりだと伝える。
「嫁っこか。やめりんやめりん、アイツは争い事には向かんぜよ。こんな大喧嘩なんぞ見たら絶対止められるに決まっとるきに。」
「いやタカジンじいちゃん、そんなこと言ってもあのイノウエってやつを何とかしないと……」
「分かっとらんとね。お前らはあの嫁っ子の事をなーんも分かっとらんだに!」
まあ面識ないしね。分かるわけないっつの。
その様子を見て、九雷子が横からフォローを入れる。
「ご老人、ご家族の間における確執や事情、そういったものがあるのは重々承知しております。ですが今は危急の事態、全員で一丸となって協力しあわねば世界の未来が……」
「いーやだね。ヌシらは全然、これっぽっちも分かっとらんばい!あの嫁っこは筋金入りの博愛主義者じゃっどん絶対に止められるけんな!じゃったらワシは手伝わんずら。」
そういってドカッと腰を下ろす。震度2だ。
タカジンじいちゃんの頑なに拒否する様子を見て、富国強兵がオレに耳打ちする。
「狭間残兵、これはどうやっても説得が難しいぞ。」
「あー、そうだな。タカシの母ちゃん迎えに行こうもんなら、そのままどっかに行っちまう可能性もあるな。」
「……となれば、シヴァの化身はシヴァ闘士、シヴァ闘王、シヴァ闘神の三人で良しとするのはどうだ?」
「タカシの母ちゃんはいいのかよ?」
「考えてもみろ。人間ベースでは男の方がフィジカルは強い。それにシヴァ闘士の母は博愛主義だというのなら戦闘を嫌う。そうなるとシヴァ闘神の代わりにシヴァ闘士の母を加入させることにメリットはない。」
「まあそうかもな。シヴァ闘神なんて、名前からしても明らかに強キャラだし勿体ねえか。タカシの母ちゃんがそれより強いってことは無さそうな気がするわ。」
「そうだ。それに先程、シヴァ闘神は嫁っこと言っていたな。つまりはシヴァ闘神、シヴァ闘王には血縁にあるが、シヴァ闘士の母の場合は嫁入りしたため血縁はない。それが真名再臨において影響を及ぼすのかは分からんが、シヴァの系譜としてより濃い血統を持っているのは間違いなくシヴァ闘神の方だろう。」
「言われてみりゃそうかもな。可能性としちゃタカジンじいちゃんの方が戦力になる可能性が高い以上、タカシの母ちゃんを迎えにいくのはリスクになんのか。」
「そういうことだ。じゃあ後は頼むぞ。」
そこまで言うと富国強兵は一歩うしろへと下がった。
オレが話をしろってことかよ。
「タカジンじいちゃん、分かったよ。じゃあタカシとタカオおじさんの三人でやろう。それならいいだろ?」
「おー、ほんならやったるげん。嫁っこおらなんだら、いっくらでも暴れてやるわいね!」
だから適当な方言ばら撒くのやめろや。
まあいい。そんなこんなで約束も取り付けたので、次はいよいよ戦術を考える番だ。




