エリヰトの繁栄3
目が覚めると道路の真ん中で寝転んでいた。
イビキをかいたせいか、喉が痛い。
周りは静かだが、いまが一体どんな状況だったか。
仮想通貨が暴落したり、女子供に酷い目に合わされたり、天使が出たり、シバタタカシがシヴァ闘士になったり……。
身体を起こすと、思わず二度寝したくなる風景が広がっていた。
おびただしい数の死体と、破壊された建物や道路。
魚市場の空気をとんでもなく濃縮させた上から膿のソースをトッピングしたような臭い。
蓄膿症。
違う、周りの死体の臭いだろ。
マジで意味がわからん。
マキシマか?
シヴァ闘士VSマキシマの戦いの痕跡か?
一体どんな名前をもったら、シヴァの化身……というかそのもののアイツと渡り合えるのかね。
渡り合ったのかは知らんが、とにかく両者とも姿形もない。
そもそも、ここまで崩壊した状況を作り出せる世界にいまオレがいる事がヤバくないですかね。
冷静に考えておかしいだろ。
冷静ついでに同級生が盗撮で逮捕のくだりでフューチャーっていったけどアレはフィーチャーだろ。
未来されるってなんだよ。
アサクラ?ああ、やっぱりやめようこの話は。
とりあえず、今この状況では何とエンカウントしても生き延びられない自信はあるが、幸いな事に辺りはシンと静まりかえっている。
学校も視界から見えている。
ほぼ瓦礫や倒壊寸前の建物よりはマシだろうし、学校に向かってみる。
道中、せっかくなので女の遺体でもないか探してみたが、どれを見ても性別の関係もないくらい損傷していた。
仕方ないので制服を着ている遺体の胸ポケットから生徒手帳を取りだしたところ、そこそこ美人だったので持っていくことにする。
財布もあったが247円しかなかったので、財布は捨ててポケットに詰め込んだ。
しかし……はあ。
美人な学生であっても、あんな感じになっちゃうんだなー。
生徒手帳見ながらだったら、もうちょっと触っておくのもアリだったかもしれない。
そうこうしているうちに学校の校門へと辿り着いた。
着いたけど、こんなに煤けてたっけか。
ガラスは割れてるところが多いし、建物も若干色褪せてるというかなんというか。
とはいえ結局どこにいても死ぬので、頑丈な屋根がある学校は無難な選択だろ。
静まり返った校庭を通り、正面玄関から校内へ入った。
「止まれ」
いきなりの命令口調。
ヒリヒリするね。
2階へ続く階段の踊り場から出てきたのは、残念ながらもちろん男だった。
「ここは立ち入り禁止なんだ。すまないが、そのまま帰ってもらえないだろうか」
なんだかスマートな男だな。
スラっとした体型に綺麗に整えられた黒い髪。眼鏡。生徒会長って感じだ。
「帰るとこないんでここに来たんですが」
「誰だってないさ。現状は分かってるだろ?世界が変わったんだから、誰にも居場所なんてのはない。みんな自分で作ったり、コミュニティを形成したりしてなんとか生きてる。君もそうだろ」
「いや、オレは別に……さっき気がついたらこんな感じだったからとりあえず学校に来たんだけど」
生徒会長の表情に僅かに反応があった。
「さっき?人類は全員一律、同じ日の同じ時間に世界転移に巻き込まれたのでは?」
「いや、なんていうか、多分気絶してたっぽくて。来たのはもう少し前だと思うんだけど」
「気絶って……そんな何年もできるものじゃないだろ。病院にでもいたのか?」
「いや、道路の真ん中で……ていうか何年て?」
「人類全員がこうなって2年ほど経ったろう。君、冗談を言ってるわけじゃないよな?道路ってどこだ?近くか?」
「すぐそこの道路だけど。そこの角曲がって直線のところ。今はボロボロだったけど」
「死体があっただろ」
「かなりね」
あれ?なんか不穏な空気?
「あの道路より向こう側、駅の辺りはキョウヘイ一派のエリアだが、間違いなくそっちから来たんだな?」
「いや違うって。オレは道路の真ん中で起きたんだって。確かに駅にはいたけど、それは名前が変わる前の話で」
「道路の真ん中?キョウヘイ一派へと繋がる道を警戒していないわけがないだろ。あそこには2年間何もいなかった。」
「んなこと言っても、そこから来たんだし。最初にアソコでマキシマってやつを見て」
瞬間、目の前で閃光が迸った。
近くに隠れていた屈強な男によって、地面に押さえつけられた。
「クライシさん、こいつおかしいっスよ」
屈強な男の意見に、クライシと呼ばれた委員長男が応える。
「君はマキシマと関係があるのか?」
「ないよ、多分あいつに気絶させられた……ってアカンちょっと外れる外れる、肩外れるって!昔これで外されたことあるんだから、絶対そろそろ外れるって!」
「緩めてやれ。ただし妙な動き、少しでも疑わしい動きでもしたら両肩から先を全部砕いてもいい。君もそれで良いか?」
「いや、さすがにそれなら肩外れた方がいいっすわ!そもそも疑わしい動きって……あいた!」
外れちゃった。




