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リリヰスの残兵3

漕いだ。めちゃ漕いだ。

そろそろ日本一周したぐらい漕いだかもしれん。


「琵琶湖一周ぐらいですよ。」


琵琶湖一周漕いだ。


「天使ちゃん。琵琶湖一周分ってどんくらい?」


「成人男性一日分くらいのカロリーはありますよ。」


「マジ?いけるじゃん。」


「いけます?本当に。」


「一日以内に話をつけて、そのあと死ぬまで働いてくれたらなんとかいけそうな気がする。」


「死ぬじゃないですか。」


「そうね。もうちょい漕いでおくか。」


その後、アメリカ大陸横断出来るぐらい自転車を漕いだ。

これにはさすがの天使ちゃんも驚く事だろうと思ったが、残念ながら嘘だ。

琵琶湖二周分ぐらいしたところでドクターストップである。ちなみにドクター役はオレだが。


「もう駄目。九雷子(クライシ)のためにこれ以上は頑張れそうもねえ。だってオレ、あいつには酷い目にしか遭わされてねえし。」


「結構頑張ったと思いますよ?普通、琵琶湖二周分も出来ませんよ無職の四「ァアー!!」性が。」


あかんて。


「ちょっと、どうしたんですか?褒めてるんですよ四十「ァアー!!」で今まで無……もう、何で声を被せてくるんですか!」


あかんのやて。


「何がですか。無職ってことがですか?それと「ァアー!!」歳……ああ、なるほど。」


天使ちゃんがニヤリと笑った。


違うて。マジであかんって。

年齢非公表の二十代なんやて。


「そんなの気にしなくて良いですよ。私だって130億歳を超えてるんですよ。」


そんな異次元のフォローされても。


「まあ、人間からすると時間というものがそれほど大切なのでしょうね。今も停止した宇宙を動かすために嫌いな者を復活させようと頑張ってますし。」


九雷子(クライシ)についてマジで打算以外の何ものでもないけど、ただまあ、時間は大事かもなぁ。アンタらみたいに長大な……つうか寿命あんの?」


「ないです。」


「あらそう。じゃあまあ、アンタみたいな不老不死の……つうか死ぬことあんの?」


「私の方は。主から抹消という意味では。」


「あらあらそうなの。じゃあまあ、アンタらみたいなほとんど不老不死みたいな存在からすると分からんかもしれんけど、人間にとっちゃ時間ってのは大事なのかもなあ。」


「私達からすると取るに足らない要素なのに、人間には重要なのも不思議なものですね。時間を作り出した主ですらそんな想いで作ってないと思いますよ。」


ჱ̒ ー̀֊ー́ )


「ほら。」


「マジかよ。まあ大事だったら軽々しく止めたりイジったりしねえか。」


なんなら虚像って言ってたからな。

虚像が動いたり止まったりできるのも意味わかんねえが。


「ええ、時間という概念については、宇宙を運営していく上での優先度としてはかなり低いです。」


「なるほど。納期って言葉がある世界に住んでた身としては全然わかんねえや。無職だけどな。なんか近い感覚のものがありゃちょっとは共感できんだけどマジで全然わかんねぇ。」


「近いものですか。」


天使ちゃんは少し考え込んだあと、手のひらに拳を落としてポンっとやった。


「ありましたよ、似たもの。」


そういって本棚から本を取り出す。

いや本棚なんか無かったが。


「なんでもアリだな本当に。……で、この本の何が似てるって?」


本をパラパラとめくってみる。

動物図鑑の類のようだ。


「図鑑みたいなもんってことか?お、さっきのページにマヌルネコ載ってた。天使ちゃんマヌルネコ知ってるか?」


ページを戻してマヌルネコを探す。

あった。うひょーモフモフやんけ。


「それに似ています。」


そういって天使ちゃんが指差す。


「マヌル……ネコ」


「違います。本です。」


「本。」


「私達にとっての時間は本に似ています。人が見たいページをめくるように、私達は見たい時間をめくったり、止めたり、閉じたり出来ます。」


「……そういうことか。」


「そういうことです。」


そうか。こりゃ確かに根本的に違うわ。

時間を何かに例えるって行為はいくつも見てきたが、本に例えられたのは初めてだ。

いや、例えじゃないか。本に似ている、だ。


「たしかにわざわざ動かそうとは思えないかもな。アンタらにとっちゃ、動いてても止まってても関係ないわけだからな。」


「人間は時間を外側から見ることが出来ないですからね。理解できないものを共感するのは難しいと思います。」


「そうだな。ただまあ、時間が大事って感覚もアンタらにはイマイチわかんねぇんだろ?ならおあいこだな。」


「確かに。」


改めて次元の違う存在ってことを実感したわ。

こういう話をして色々と突き詰めていけば、得るものもかなりあるだろう。

ただどうやっても次元の異なる存在過ぎて、時間の感覚の話みたいにどうやっても分かり合えないものもあるってことだ。

そしてそれはお互い様であるから、こいつらにはどうしても届かない人間の感覚ってやつが、他にも沢山あるんだろう。


「さて」


「休憩ですか?」


「自転車を漕ぐんだよ。早く宇宙を元に戻さねーと。時間は大事だからな。」


アメリカ大陸横断は無理でも、本州縦断ぐらいは目指してみるか。




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